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1st season 第二章
024 荒野
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男が荒野を歩いている。
周囲には敵と思しき存在が見受けられないが、男は奇っ怪な弓を構え続けている。
そして数歩あるく毎に、その弓をワタワタと取り落としそうになっている。
まごうことなき不審者である。
(うーん、差し替えるだけなら問題無いんだけど、照準姿勢をそのまま引き継ぐのはかなり練習が必要そうだな~)
カインの脳内にはI.B.内の一覧が浮かんでいる。
カインお得意の妄想では無く、I.B.によって提供されるユーザーインタフェースだ。
零式複合弩(装填済) × 86
零式複合弩 × 13
アンチマテリアルライフル × 1
鋼鉄製のボルト × 2,341
・・・etc
このUIはなかなか秀逸で、リネームや階層化だけでなく、スマートフォルダまで実装されていた。
リネーム前の本来の名称は、意識を向けるとポップアップする注釈ウィンドウで簡単な説明とともに表示されるという親切ぶり。
背景には半透明の3Dイメージまで写っている。
尚、物騒なチート武器か一つ混じって居るが、コレはカインが勝手にリネームしただけで、中身はバイポットを装備した、零式よりも少し大きく、より精密な作りの複合弩となっている。
正面に構えた零式を収納し、瞬時に新しい零式を取り出す。
取り出した瞬間、手と弩が重なって融合してしまう・・・などというホラーは無かったが、アイアンサイトに捉えたターゲットを、入れ替えた零式でも捉えたままという状態にするのは、一朝一夕で身に付けられる技術ではない。
(いやぁ~それにしてもカッコいいよな~。あのとき町田さんに見せてもらったコンパウンドクロスボウ、よもや死後の世界で手に入れるとは・・・人生わかりませんのぅ~)
それなりの数のプログラマーがそうであるように、岸田も月に一度のサバゲーを楽しみにする男だった。
規制やらイジメやらで都内ではまともなフィールドが無い為、千葉や栃木の山林を利用したフィールドに出かける。
ひたすらデスクに縛り付けられ、ビルの谷間から見上げる空ですら数日に一度しか拝めない岸田はいつも「空がひれぇ~」と思ったものだ。
テレビや映画では向かい合ってパンパン銃を打ち合い、転げ回って回避したりしているが、おもちゃのエアガンで戦うサバゲですらそんな事態はありえない。
匍匐で位置を変え、遮蔽物からワンチャン半身を出して引き金を引く。
撃ったら即座に身を隠す。
一秒もその場に突っ立っていたら、相対距離20mでも間違いなく蜂の巣である。
そんなサバゲ仲間の町田氏に、一度だけ触らせてもらったアメリカ製のコンパウンドクロスボウが零式の原点だ。
偏心滑車を使うことで運動力学的なエネルギーが1.5~2倍になる。
つまり、同じ力で引けば弓の1.5倍の距離から射れ、同じ距離に射程を想定したものなら、少なく見積もっても3割は楽に引ける。
一般に弓の到達距離は200m、的当て競技なら90mで50cm収束、狩猟なら4~50mが殺傷威力圏内と言われている。
この世界の魔法は精々が20メートルしか飛ばないため、弓のほうが射程が長い。
カインの作った零式は滑車式であるため、数十メートルなら間違いなく板金鎧を貫く。
その形状は水平二連ショットガンの前部分に、M字型の弓を置いたような事になっており、全幅は僅かに48cmしかない。
Mの字の縦二本の棒がリムとなっており、その端にはカムが取り付けられている。
この世界では複合樹脂など入手できない為、リムにはビッグボアの牙を木でサンドイッチにしたものが使われている。
テコの原理と滑車の効果でようやっと曲げられるものであって、人の力ではとても曲げられない。
厨二魂がピストルグリップ化を主張したが、そこはさすがに命を預ける装備として、ライフルストックを採用した。
カイン独自の機構として、ボルトを乗せる木製レールの上にも、金属のレールが設置されている。
その上下のレールの間をボルトと弦が走る構造だ。
ボルトは振り回したくらいでは落ちないが、森のなかで木の枝にぶつかれば落ちてしまう。
そういった事故率を下げるために、カインなりに思案した結果だった。
(うーん、何か射ちたい。テンプレだとこう、荷馬車が襲われてて、颯爽とヒロイン助けちゃったりするんだけどなー)
カインが乗合馬車に乗らず、徒歩移動を選択したのは単に貧乏性だっただけでは無い。
完成した零式を『訓練』という名目で出し入れしてニヤニヤしたかったのだ。
乗合馬車でやったら事案である。
一人でやってても不審者である事には違いないが。
そうこうしながらテクテクと歩いていると、テンプレの神様に願いが届いたのか、少し先の林道から戦闘音が聞こえてきた。
周囲には敵と思しき存在が見受けられないが、男は奇っ怪な弓を構え続けている。
そして数歩あるく毎に、その弓をワタワタと取り落としそうになっている。
まごうことなき不審者である。
(うーん、差し替えるだけなら問題無いんだけど、照準姿勢をそのまま引き継ぐのはかなり練習が必要そうだな~)
カインの脳内にはI.B.内の一覧が浮かんでいる。
カインお得意の妄想では無く、I.B.によって提供されるユーザーインタフェースだ。
零式複合弩(装填済) × 86
零式複合弩 × 13
アンチマテリアルライフル × 1
鋼鉄製のボルト × 2,341
・・・etc
このUIはなかなか秀逸で、リネームや階層化だけでなく、スマートフォルダまで実装されていた。
リネーム前の本来の名称は、意識を向けるとポップアップする注釈ウィンドウで簡単な説明とともに表示されるという親切ぶり。
背景には半透明の3Dイメージまで写っている。
尚、物騒なチート武器か一つ混じって居るが、コレはカインが勝手にリネームしただけで、中身はバイポットを装備した、零式よりも少し大きく、より精密な作りの複合弩となっている。
正面に構えた零式を収納し、瞬時に新しい零式を取り出す。
取り出した瞬間、手と弩が重なって融合してしまう・・・などというホラーは無かったが、アイアンサイトに捉えたターゲットを、入れ替えた零式でも捉えたままという状態にするのは、一朝一夕で身に付けられる技術ではない。
(いやぁ~それにしてもカッコいいよな~。あのとき町田さんに見せてもらったコンパウンドクロスボウ、よもや死後の世界で手に入れるとは・・・人生わかりませんのぅ~)
それなりの数のプログラマーがそうであるように、岸田も月に一度のサバゲーを楽しみにする男だった。
規制やらイジメやらで都内ではまともなフィールドが無い為、千葉や栃木の山林を利用したフィールドに出かける。
ひたすらデスクに縛り付けられ、ビルの谷間から見上げる空ですら数日に一度しか拝めない岸田はいつも「空がひれぇ~」と思ったものだ。
テレビや映画では向かい合ってパンパン銃を打ち合い、転げ回って回避したりしているが、おもちゃのエアガンで戦うサバゲですらそんな事態はありえない。
匍匐で位置を変え、遮蔽物からワンチャン半身を出して引き金を引く。
撃ったら即座に身を隠す。
一秒もその場に突っ立っていたら、相対距離20mでも間違いなく蜂の巣である。
そんなサバゲ仲間の町田氏に、一度だけ触らせてもらったアメリカ製のコンパウンドクロスボウが零式の原点だ。
偏心滑車を使うことで運動力学的なエネルギーが1.5~2倍になる。
つまり、同じ力で引けば弓の1.5倍の距離から射れ、同じ距離に射程を想定したものなら、少なく見積もっても3割は楽に引ける。
一般に弓の到達距離は200m、的当て競技なら90mで50cm収束、狩猟なら4~50mが殺傷威力圏内と言われている。
この世界の魔法は精々が20メートルしか飛ばないため、弓のほうが射程が長い。
カインの作った零式は滑車式であるため、数十メートルなら間違いなく板金鎧を貫く。
その形状は水平二連ショットガンの前部分に、M字型の弓を置いたような事になっており、全幅は僅かに48cmしかない。
Mの字の縦二本の棒がリムとなっており、その端にはカムが取り付けられている。
この世界では複合樹脂など入手できない為、リムにはビッグボアの牙を木でサンドイッチにしたものが使われている。
テコの原理と滑車の効果でようやっと曲げられるものであって、人の力ではとても曲げられない。
厨二魂がピストルグリップ化を主張したが、そこはさすがに命を預ける装備として、ライフルストックを採用した。
カイン独自の機構として、ボルトを乗せる木製レールの上にも、金属のレールが設置されている。
その上下のレールの間をボルトと弦が走る構造だ。
ボルトは振り回したくらいでは落ちないが、森のなかで木の枝にぶつかれば落ちてしまう。
そういった事故率を下げるために、カインなりに思案した結果だった。
(うーん、何か射ちたい。テンプレだとこう、荷馬車が襲われてて、颯爽とヒロイン助けちゃったりするんだけどなー)
カインが乗合馬車に乗らず、徒歩移動を選択したのは単に貧乏性だっただけでは無い。
完成した零式を『訓練』という名目で出し入れしてニヤニヤしたかったのだ。
乗合馬車でやったら事案である。
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