I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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1st season 第二章

039 D級の日常

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「うーし、じゃあ今日も反省会始めるぞ」
「うぃ」
「はじめじるぞー」

参加者はカインとシリア、オブザーバーとしてアリスである。

「ビッグボア×2、シルバーエイプ×6、オーク×4。エイプは売り物になったのが1体分だけで5体は魔石だけだ。さて、アリス、幾らの稼ぎになったでしょう?」
「えーとビッグボアが200レア40,000円、魔石が30レア6,000円だから、こうなってー、こうなってー460レア92,000円っ!」
「正解、エイプは?」
「えーと、毛皮が100レア20,000円、魔石が70レア14,000円だから520レア104,000円っ!」
「はい、またまた正解。最後のオークは?」
「オークさんはおいしいよねー。200レア40,000円と魔石が60レア12,000円だから、1,040レア208,000円っ!」
「全部合わせるとー?」
「460+520+1,040で・・・2,020レア404,000円っ!」

カインはアリスとシリアに算数を教えていた。

「おまえも計算あってるか?」
「だいたいね。だいたいあってる」
「んで実際は損傷が大きくて減額されてるのと、のオーク一体に解体手数料差し引いて1,538レア307,600円が本日の収入です」
「わー(パチパチパチパチ)」

オークは人や亜人の女を攫って苗床にするが、人や亜人はオークを狩って食卓に並べる。どちらも業が深い。

「ねぇ、アタシら結構稼げてるわよね?」
「あぁ。言われてみればな。一年前の10倍も稼げてる・・・これがD級か」
「・・・アンタまた、自分の10倍も稼いでた連中の方が良くて当たり前だとかネクラなこと考えてる?」
「オマエはエスパーか!」
って何よっ?」

「お兄ちゃん、ネクラって何?」
「・・・」
「アリスちゃん。っていうのは何でもイジイジ悪い方に考えちゃう人の事だわ。お兄ちゃんはネクラでちゅねー」
「でちゅねー」

カインとシリアは収入の三分の一をバディ資金、残りを折半にしていた。
バディ資金はカインが管理しているが、武器はカインが作り、防具は岩のみな為一向に減らない。

「二日で金貨一枚20万円ペースとか感覚狂うわー」
「アリスも毎日おいしいごはんがたべられるようになったよー」

宿の金を亭主に持ち逃げされ、仕入先にも泊り客にも、従業員にすら足元を見られ、当時の白兎亭しらうさぎていもどん底の状況だった。
大事な娘の命の対価としても、かき集めてたったの金貨一枚20万円しか用意できなかったラティアの苦労が伺える。

が、若年とはいえ戦闘力のあるが住み着くことで、寡婦かふだからと言ってラティアに舐めた態度を取るものは減っていった。
ラティア自身もおどおどとした態度が無くなり、やり手の美人女将としての立ち振舞が身についた事で、以前は逗留の旅商人だけだったのが、今では食堂のみでもやっていけるほどの繁盛ぶりである。

「反省会の続きすんぞ。戦闘面だ。」
「うぃ」
「すんぞー」

「ボアについてはまったく問題ない。オークもノロいから、最悪でもニート岩屋立て籠もりで安全に行ける。買取品質を上げるなら遠距離からの狙撃はやめて零式なんだが、安全を金で売るほど困ってないな」
「アタシも賛成よ」
「問題はエイプだ。群れで降ってこられると、正直、ソロのときより怖い」
「アタシがお荷物だかんねー。あいつらころころ変えて来るし」
「おねえちゃん、お荷物なの?」
「そうよー。お姫様は王子様に守ってもらうのが仕事なのねー」
「少しばかり防具強化したところで焼け石に水だし、張るにも降ってこられると間に合わない」
「・・・あ。やばい。アタシ天才かもっ!・・・うん、完璧よっ!」
「何が天才なんだよ」
「ふふふっ。ニート張る時ってブロック8個に屋根一枚、緊急でもブロック4個に屋根一枚使ってるじゃない?でも最初から作っとけば一瞬で出せるっしょ?」
「おまっ!マジ天才だわ!」
「四角いブロックの中くり抜いて、60cmくらいの穴を幾つかあけとけば、出してその穴に飛び込むだけで済むっしょ?」
「ああ、それならリロード再装填時間もあたふたしなくて済むな。そもそも中に予備の零式何本かとボルトも入れときゃ最高だ」
「ねぇ、どうせなら戦闘用だけじゃなく、野営用にあのデッカイやつもくり抜いて、中に部屋、作っちゃわない?」
「それ、めちゃめちゃ楽しそうだな。さっそくゴンザ捕まえて作ってもらおう。ようやっと資金の使いみちが出来た」

翌日、ギルドでゴンザを捕まえた二人は、金貨3枚600,000円で丸々七日軟禁した。
法外なギャラに大喜びだったゴンザだが、三日目にはマナポーションの空き瓶に埋もれ、ぐったりとしていた。

~~~~~

数日後、南の荒野。

「はぁ~、こんなにまったりと星を眺められるとはね~」
「まぁ、飛んでくる魔物が居たらアウトだから完全には気が抜けないけどな」
「このあたりに飛翔型なんていないわよ」
「おにいちゃん、アリスっ、こんな凄いのはじめてですっ!」
「カイン様、本当に素敵ですね」

地上10m、四人はその突如として荒野に出現した四角い大岩の上に居た。
一階部分は大きく削られて、うまやを兼ねた入り口、その入口をカインが岩で塞げば、階段の上は安全地帯だ。
誰に使わせるつもりだったのか、内部には幾つもの小部屋と壁をくり抜いた寝台、生活用水のタンクまで装備され、トイレはなんと手桶の水を流す水洗式だ。
カインとシリアがゴンザを酷使して作ったそれはもはや立派な住居、いや、砦だった。
戦闘時には屋上に登り、周囲に8つの10mブロックを並べて砦を封鎖、一方的に上から射下ろす事が出来る。

「完成した時はちょっとやりすぎたかと思ったけど、こうして実際に使ってみると、まだまだゴンザに頼む事があるな」
「あー、あいつ、話すとけっこういいやつよね」
「おにいちゃんっ!おにくやけたよ!」
「おー、アリスは料理上手だな」
「えへへへへ」

四人は馬車を借りて遠足に来ていた。
完成した岩石ハウスのお披露目である。
モンスターの存在によりレジャーという概念が無いこの世界、アリスだけで無く、ラティアとシリアにとっても初めての遠足である。

「でもカイン様、こんな立派な新居を構えてしまったら、シリアさんともってしまうのではないですか?」
「ばっ、アンタっ!そんなつもり無いからね?」
「ラティアさん、俺はどんな豪邸を手に入れたとしても、ラティアさんの宿に帰りますよ」
「ふふふ、冗談ですよ。シリアさんのおかげでカイン様は必ず生きて帰ってくださるでしょうから、安心して待っていられます。何日でもゆっくりお仕事していらして下さいね」
「そう?アタシが居ないほうがコイツは安全じゃない?」
「シリアさんが一緒なら絶対に無茶しないでしょう?カイン様が死んでしまったら、シリアさんも生きて戻れませんから」
「っていうか俺ら、どう考えても森より平原向きだよな?帰ったら狩場考え直すか」
「まぁそうよね。荒野の住人にはなりたくないけど、一考の余地はあるわ。この上から撃つならほぼ危険は無いわけだし」
「あらあら、そろそろアリスは眠そうね。カイン様、シリアさん、お先に失礼しますね」
「「おやすみ(なさい)」」

「なぁ、そろそろ俺ら、正式にパーティーにするか?」
「マジっ!?ついにアタシのこと信用しちゃったっ?しょうがないわね。正式に下僕にしてあげるわ」

川の字で星空を見上げていたシリアがごろりと転がり、カインの腹を枕にする。

「変なとこ触ったらコロスわよ」
「これからも宜しくな、相棒」
「まかせときなさい、相棒」
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