I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

文字の大きさ
121 / 173
2nd season 第二章

118 暴露

しおりを挟む
オヤジ達に現状を伝え、心のつかえが一つとれた俺は、もうひとつ、つかえを取ってしまうべきか悩んでいた。
そう、大量破壊兵器の件だ。

「うーん、主様これでホントに完成なのかな?ぜんぜん使い方が想像できないかな?」
「ああ、完成だ・・・と、思う。試してみないことにはなんとも言えん」

こいつを使いこなすには相当な訓練が必要だ。
そして実際に運用するのはミランだ。

「エマ。これを使うのはミランなんだ。そして訓練しないと使えない。だからいっそ、もう、みんなに教えてもいいかなって思うんだけど、どう思う?」
「んー『大量破壊兵器の製造を手伝え』って言われた時はショックだったけど、完成しても兵器とは思えない形だから、変なプレッシャーは無いかな?それに今は一国の主。むしろ奥の手のひとつくらい無い方が不安かな?」
「うん、そうだよな。俺の考えすぎだったかもしんない。なんかこう、無駄に思いつめることが増えたな」
「200万の命っていうプレッシャーは、それを背負った主様にしかわからない。でも主様が重い荷物を背負ってるって事は、私達みんながわかってるかな」

うん、そうだな。
みんなに話そう。
あっちは絶対秘密だけど・・・。

「あー、うん。エマとコソコソやってたから、みんな薄々気づいてたと思うんだけど、俺達の切り札が完成した」
「ふむ、主殿、やっと話してくれる気になったか」
「そうね、アンタ、ちょっと背負い込みすぎだわっ!」

「うん、俺もそう思った。この切り札を使えば、この世界のどの国との戦争にも勝てるだろう。だが、欠陥がある」
「どのような?」
「標的を絞れないんだ。例えば、王都を丸ごと消し去ることは出来ても、王宮だけを消し去るような器用な事は出来ない。つまり、使うとなったら罪なき人々が大勢巻き添えになる。何万人っていう単位でだ。だから、教えたくなかった」

「・・・ちょっと想像つかないわね?」
「作った私も使い方が想像できなかったかな」

「うん、そして大事なこと。この兵器は絶対に知られてはならない。もしも敵対勢力に知られて、コイツを逆に使われたら、俺達にも防ぐ術が無いんだ。これから訓練していく事になるが、真夜中に人里離れた奥地でしかできない」
「随分と・・・慎重ね?」
「ああ。この世界の人間にはその知識が無いだけで、わかってしまえばどの国でも作れてしまう。だから、なるべく外に出したくない」

「ふーん、まっ、いいわ。いつからやるの?」
「・・・今夜、とりあえず試してみようと思う」


~~~~~


聖教国の西の外れにある、人口200人に満たない農村。
辛うじて転移門が開くギリギリの神殿。
神殿というよりは、ほこらと言ったほうが合っているだろう。

「静かにな。村人にも気づかれたくない」

村から更に西へ20kmほど走る。
アリスとラティアは置いてきた。

「よし、この辺でいいだろう」

暗闇の中、ソレを取り出す。
シリア達の制服と同じ、錬金術によって生み出された漆黒の合皮。
耐刃性に優れ、そして燃えない。
10mブロックをゆうに覆えるほどの漆黒の袋が、漆黒のかごに納められている。

「これ?なのよね?」
「この籠に入った布が兵器なのですか?」
「あー、本来はだ。空を飛ぶ、という乗り物だ」

「えっ?」
「空を・・・飛ぶ?」
「まずは本当に飛べるか、テストしてみよう」

10mブロックを一つ出し、100mのロープを括り付ける。
そしてロープの反対側は籠に括り付ける。
命綱だ。

「じゃ、ミランとユリア、一緒に籠に乗って。みんなは少し離れて見ててくれ」

ミランに命じ、ファイヤーを発動させる。
そう、この為に、細く長く、ガスバーナー代わりが出来るよう、鍛錬をさせてきた。
風呂沸かしで鍛えられた技術、すぐにバルーンが立ち上がり始める。

「おおおおっ?」
「袋が立ったわ?」
「ミラン、そのまま続けて」

バルーンが風に煽られ、ズリズリと籠が動く。

「よし、浮くぞっ!掴まれっ!」

王国歴335年7月11日。
この世界でも、人類はついに空を飛んだ。

「ミラン、ユリア、おめでとう。人類ではじめて、空を飛んだのがお前たちだ」
「うううっ、真っ暗で怖いですー」
「主様?まだ燃やすの?」
「ああ、そのままロープの限界まで上昇しよう」

ゆるやかに上昇し、やがてロープがピンと張る。
刹那っ!
ゴーーーーッ!

風に煽られて気球が振り回される。

「キャーっ!」
「落ち着け!ユリア、袋の中の空気をゆっくりとんだ。いいか?ゆっくりだぞ?」
「えっと、えっと・・・フリーズ氷結!!!」

ゆっくりと下降しはじめる気球。
着地の際にクッションが無いのが難点だな。

「と、いうわけで、無事空を飛べることが確認できたな?」
「「「「「・・・」」」」」
「ねぇ、コレ、とんでもないことじゃないの?」

「ああ、だから隠してた。戦いを考えなくて済むなら、こんな真っ暗な夜じゃなく、明るい昼間にみんなで空の旅を楽しんでみたいけど、そういうわけにはいかないからな」

「そうね・・・で、肝心の兵器ってとこは?これじゃ飛べるだけよね?」

「うん、この気球は成層圏・・・んーとだ、空に向かって10kmくらいは上昇出来るんだ、そこから俺が’10mブロックをバラ撒くと、たぶん、国が無くなる」

そう、俺が気づいた大量破壊兵器とは、熱気球を用いたメテオ・ストライクの物理版だ。
直径200mの隕石が大西洋に落ちれば、ニューヨークからフロリダまで、高さ200mというシャレにならない津波が襲う。
直径1kmになると、人類滅亡だそうだ。
もちろんそこ迄の高度に上がる気は無いが、王都をクレーターに変えるくらいの惨事にはなる。

「暗くて殆ど見えないけど、みんなも乗ってみるか?」
「乗るわっ!」

魔法の無い世界であれば、気球はそこまで危険な乗り物では無い。
だが科学と魔法が結びつくと、その危険性は計り知れない。
10mブロックひとつで2,500t、そしてIB内にある最大質量は100m × 100m × 10mの都合6万2千5百トンというとんでもない岩盤。
ハイオーガを押し潰す為に、リシェルに頼んで10mブロックを繋ぎあわせて作った。

乗務員が三席埋めているので、気球体験は一人ずつ。
嫌がるスージーをライザが無理やり籠に押し込む頃には、だいぶスムースに上昇下降が出来るようになっていた。

「よし、今日はここまでにしよう。帰るぞ」

膨らんだままの気球をIBに収納。
道すがら、今後の課題について説明する。

「今日はお試しだから、ロープを張って上昇と下降を繰り返しただけだけど、明日から少しずつ高度を上げて、本格的な訓練に入るぞ」
「えっ?ロープ無し?」
「風が吹いたら飛んでちゃうじゃないっ!」

「あー、そっか。あのな?気球は別に浮き上がる為だけのもんじゃないぞ?練習すればちゃんと、行きたい方向に進めるんだ」
「船みたいにオールを使うの?」
「んとな?地上に居ると、風は一方から吹いてくるけど、空の上は違うんだ。目には見えないけど、縦横無尽に色んな風が吹いてる。だから、自分が行きたい方角の風が吹いてくる高さに昇れば、ちゃんと目的地に向かえるんだ。緊急事態用にユリアも乗ってるけど、本当はミランだけで自由に空を飛び回れる」

「なんか、やる気出てきたかも!ついに私の時代がやってきた!」
「うん、ほんとそうだぞ?ミランとリシェル、二人だけでこの世界なら蹂躙出来ちゃう」
「この世界ならって事は、主様の居た世界じゃ無理ってこと?」
「ああ、あの世界には、そうだな、機械仕掛けのドラゴンがあるんだ。だから、気球くらいで調子に乗ってたら、あっという間に落とされる」
「そっかー、気をつけよう」

翌日から、30分ほど夜空をフラついては、篝火を目標に帰投する訓練を開始した。
まっ、当然ながらそうそううまくは行かない。
っていうか、夜間飛行とか、たぶん相当難易度高いんだと思う。
東の空が白む頃になって、待ちくたびれたみんなのもとにたどり着いた・・・勿論徒歩で。

「あー、明日からはあれだな。全員じゃなくていいな。とりあえず、ミランとユリアの三人でやるか」
「そうね。でも、あたしはもっと乗りたいわ!」
「んー、じゃ、交替で希望者一名追加で、コツコツやってこう」

何万人もの命を一瞬で奪う。
その為の訓練なはずなんだが、完全にになっていた。
うーん、これ、昼間飛びたいな・・・でもマズイよな・・・。

「なぁ、いつになるかわかんないけど、もっとでっかいの作って、みんなでずっと遠くまで旅に出よう」
「いいわねっ?ぜったいよ?ぜったい行くわよ?」

そう、今はまだ何も浮かばないけど、対空防衛システムが考案できれば、空の旅が解禁できる。
国のトップなんか引き受けなければ、今すぐ飛んでいけるのになー。
まっ、仕方がない。
マイクロビキニの対価だ、しっかり働こう。
しおりを挟む
感想 240

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...