I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第二章

123 前夜

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が落ちる前に民衆に発表出来た。
三万の兵に囲まれ、噂だけが先行して夜を迎えようものなら、一夜で聖都は瓦解する。
初動としては上出来だろう。

「会議室に戻る、もう一度状況を整理しよう・・・ヤザン、騎士達に一晩中巡回させる件、再度確認しておいてくれ」

会議室に戻ると、ニェリーザさんが戻っていた。
ヴァルダークさんとナルドさんにクルスタット卿と勢揃いだ。

「カイン猊下、何すりゃいんだ?」
「皆、ありがとう・・・これから整理するが、ヴァルダークさんには・・・ヴァルダークさんとニェリーザさんには、高レベル冒険者が混じってた場合の足留めを頼むことになると思う・・・で、状況整理の前にユリア、この文章、活版で組んでくれ」



##### 告 #####

王国歴335年11月22日、本日、我が聖教国はミズーラ王国より一方的に宣戦の布告を受けた。
秘密裏に聖都周辺に三万の兵を潜ませ、囲んだ上での布告である。
オークションで入手した聖剣を携え、ホルジス神の指名も無くかたり、神理教教皇の抹殺と、前教皇の復権、多額の金銭が要求された。

この侵略を受け、我が聖教国はミズーラを敵性国家と認定、以下の制裁を実行する。
1つ、ミズーラ国内の神殿はこれをすべて引き上げる。
1つ、ミズーラの王都は明後日、11月24日の日の出前に消滅させる。

王都消滅まで一日の猶予を与えるのは、自国の蛮行を知らぬミズーラの民へ、せめてもの慈悲である。
23日のうちに王都を離れぬものは、ミズーラにくみするものとして、王都とともに消滅するだろう。

我ら神殿は争いを好まぬ、支配も好まぬ。
ホルジス神より賜った転移門の恩恵を独占せず、広く世界にその福音を共有しているのが何よりの証拠。
だが、に仇なす者は討ち滅ぼす。
神殿にはそのすべが与えられていることを世界は知ることとなるだろう。

王国歴335年11月22日

神理教教皇 聖教国国主 カイン・ロックハウス

##############



「旦那様っ?これはっ!?」
「うん、アレを使う・・・よしっ、みんな聞いてくれ。今回の件、十中八九、裏には帝国が居る」

演説で一度興奮状態になったせいで、かえって冷静になれた。
これは不測の事態なんかじゃない、シナリオがちょっと違うだけの想定の事態だ。

「郵便事業を始める前に予告したろ?賢い国が攻めてくるって・・・その時同時に言ったな?大きな戦争はその一回で終わりにすると・・・今回がその一回だ。始まると同時に終わりにする・・・そうすればおそらく、次は無い・・・と、思いたい」

「あー、カイン猊下。つまりアレか?お前は一夜にしてミズーラの王都を消滅させる手段を、持ってるって事か?」
「はい、持ってます。どっちかって言うと、その前の明日の一戦の方が危ういですね」

「・・・さっき帝国が裏に居るって言ったな?なのにミズーラを焼くのか?」
そそのかされようとおどされようと、事実として剣を握ったのはミズーラ。これを見逃せば、第二第三のミズーラが出ます。そして帝国の暗躍が明るみになっていない今であれば、帝国も方針を変えやすいでしょう・・・帝国にもメンツがある、明るみになってからでは引けないでしょう」

「旦那様、出来ました」
「よし、この紙にどんどん刷ってくれ」

「して、私は何をすれば?」
「うん、クルスタット卿には使者を頼みたい。グラム王に火急の報せとして謁見、『明後日の夜明けに、ミズーラは消滅するが、聖教国はその領土を欲しない、周辺国で平和的に割譲してもらう事を望んでいる』と伝えて下さい。ペルシラ皇帝には・・・本来ヤザンを行かせたいところだが手一杯だ、ニェリーザさん、ホルジスの使徒として行ってもらえますか?」
「任されよう!」

「ヤザンはこっちだ。この刷り上がった告知を世界中の神殿に貼り出せ。ミズーラ行きの郵便は全て差し戻し、そしてミズーラ全土の職員を全て引き上げる・・・そうだな、二時間後に迎えに行くから準備させておいてくれ」
「はっ!」

転移門の使用許可を与えられた者は、許可された神殿間のみ転移が可能となるが、未登録の人間を転移させられるのは管理者権限を持つ俺だけだ。

「よしっ、あとは明朝の一戦、どう勝つか考えるだけだ、シミュレーションしてくから穴を指摘してくれ」
「「「「「はっ!」」」」」


~~~~~


「よしっ、これで全て撤収は完了と・・・じゃ、ビラ撒きに行きますか・・・ミラン、ユリア・・・と、シリアも行くか?」
「いくわっ!」

ミズーラ王都の北、20km地点の小さな祠に転移する。
こうも辺鄙なところだと、そうそう何度も使えるような神力は貯まっていないが、明日の分を心配するほどでも無い。
夜の闇の中を4kmほど南下。
周囲に生き物の気配は無い。

「よし、行くぞ、ミラン、頼んだ」
「はーい」

漆黒の布に漆黒のカゴ、地上から炎を見上げても、星の一つにしか見えないだろう。
俺達はゆるやかな北風に運ばれ、王都の明かりが眼下に広がる。

「・・・キレイ・・・」
「灯りが見えるとぜんぜん違うわっ!壮観ね・・・」
「あぁ、贔屓ひいきだが、シリアにも見せたかったんだ。明日にはこのあかりを俺の手で消すことになるから・・・」
「そう・・・いつか、絶対行きましょ?空の旅?・・・で、これをばら撒けばいいのね?」

7912枚・・・ミズーラの民衆が生き残るための蜘蛛の糸だ。
63人に一人の手に・・・いや、実際は200人に一人程度か・・・それでも、自分への言い訳には充分だ、やれるだけの事はやった。
侵略国への配慮としては充分・・・という事にしておく。


~~~~~


聖都に戻ると午前二時・・・夜明けまで4時間ほどだ、少しでも眠っておいたほうが良いだろう。
自室に向かう俺に、皆静かについてくる・・・そういえば、皇帝になった前の晩もこんな雰囲気だったな。
大きなベッドにぎゅうぎゅうになって横たわる。

いくら策があるとはいえ、弓兵だけで2千は居る。
その中の一本が死角から刺されば、それだけで俺は終わるだろう。
皆、口にはしないが、祈るように目を閉じ・・・・・「いやっ、ライザ?お前はこっち来ちゃダメだろ?」

「問題ないっ!エロいことはしないって約束してきたっ!」
「・・・フレッドも連れて来い・・・隣にベッド出しとくから」
「いいのかっ?」
「ああ、呼んでこい」

フレッドのギフト『気配遮断(極)』があれば、眠りについた俺達を、まったく気付かせること無く葬ることも出来るだろう。
明らかに判断ミスだ。
キングサイズをゆうに上回る巨大ベッド、その隣に普通のダブルを取り出す。

「呼んできたっ!」
「カイン、お邪魔するよ?」
「おぅ!少しでも寝ときたい。その騒がしいのを大人しくさせといてくれ」
「任されよう」

これだけ大変な一日だったんだ、受付さんのパンチラだって見逃した。
一つくらいミスがあっても、きっと多目に見てくれるさ。
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