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2nd season 第二章
122 初動
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「ホルジス様っ、いらっしゃいますかっ!?」
・・・
「はい、おりますよー。あれ?なんか有りました?」
「すみません。ちょっとピンチ・・・かもしれないんで助けてください」
「えーと・・・ふむふむ、つまりアレですね?偽勇者殺したらマズイかって事ですね?」
「やっぱ偽ですか」
正直、いまさらザックとかどうでも良かった。
雲の上のイケメンにユリアを寝取られたけど、俺はそのはるか上、成層圏でヤりまくってる。
だが、アイツが俺を飛び越えてS級に上がってるなら・・・たぶん煮えくり返る。
「勇者というのはギフトです。聖剣は・・・まぁ強力ではありますが、あくまでも物ですね。そして現在『勇者』は空席です。私の管轄ですから、間違いありません」
「安心しました・・・うん、これ以上は神様の管轄じゃ無くなりますね。自分でなんとかします」
「はい。でも、動揺して死んだりしないでくださいね?今カインさんに死なれると私もですね、結構困りますんで・・・」
「あははは、ホルジス様とお話できて随分落ち着いてきました。大丈夫、卑怯さには自信がありますっ!」
一番の心配事は消えた。
二番目は・・・
コンコン
「入れっ!」
「皆様をお連れしました」
ヤザンが皆を呼んできた。
「ヤザン、説明は?」
「はい、私の持っている情報は概ね」
「ん、追加情報だ。向こうの勇者は『偽』だ。俺が王都で売っぱらった『聖剣』をどっかで手に入れたものがでっち上げた。ホルジス様に確認した」
「猊下?今『聖剣』を売ったとおっしゃいましたか?」
「あー、ヤザンは知らなかったな?ホルジス様にもらったんだけど、ユリア買うのに金が足りなかったんだ。だから売った」
「・・・猊下・・・あなたと言う人は・・・」
「いや、ホルジス様もオッケーって言ってたし?むしろ良かったって言ってたし?」
「あんたッ!ふざけてる場合じゃないっしょ?」
「あー、そうだな・・・うん、ニェリーザさん、大事な質問がある。現在S級冒険者は存在するか?」
「冒険者のランクはA級まで・・・猊下はS級についてどこでお知りに?」
「そこはまたいずれ・・・S級が誰に与えられるもので、最後に与えられたものがどうなったかも知っています・・・今知りたいのは、ここ最近、S級が与えられるような事があったか否かです」
「ふむ・・・ホルジス様か・・・私が知る限り、その後は一人も居ないはずだ。与えるなら大々的に宣伝する。本部が隠しているとも思えん」
「ありがとうございます。これで問題は無くなりました・・・いや、あったか・・・ユリア」
「はいっ!」
「あ、その前に・・・すまないがヤザンとニェリーザさんは少し外して下さい。先に家族の話を済ませます。その、夜の生活が含まれる話題なので・・・軍事の話をする前に呼びますので、扉の外で待機してもらっていいですか?」
「はっ!」
「ふむ、そういう事であれば遠慮しよう・・・」
「ユリア、敵軍の大将はザックさんだ」
二人が退出するのを見届けて、ユリアにザックの私信を渡す。
「えっ・・・なんで・・・」
ユリアの表情が驚きと悲しみに染まる。
「もう一度皆に言っておく。っていうか言わせて?本当にもうザックとかどうでも良かったんだ。あの頃の俺は、俺もユリアも子供だった。むしろザックさんたちには命を助けられた恩がある。イケメンに対する嫉妬程度のものはあるけど、殺したい程なんかじゃない。だが、殺すことになる・・・その、ユリア寝取られて嫉妬で殺す風で、カッコ悪いじゃん?そういうの?だから言い訳しときたかった」
「えっ?偽勇者って例の?ユリアちゃんの?」
「ああ、そうだ・・・ユリア、大丈夫か?」
「・・・はいっ!助けもらったから・・・悲しいけれど・・・カインや皆と比べられるような人じゃ無いです・・・カインを狙うなら・・・私が殺します」
「うん、ありがとう。みんなもいいね?仕事だからやるんで、嫉妬じゃないからね?」
「アンタ・・・この一大事に変なとこ気にするわね?」
「うっさいっ!フツメンのコンプレックスは複雑なんだっ!あと、終わったらみんなでマイクロビキニお願いします・・・きっと結構落ち込んでると思います・・・」
「・・・主様・・・追い詰められてるのか余裕あるのかわかりにくい・・・」
うん、たぶん結構追い詰められてると思うよ?
命の恩人と30,000の人間を殺す方法考えるんだから・・・。
「よしっ!ヤザンッ!ニェリーザさんっ!入ってくれっ!」
「猊下・・・あまり時間がありません・・・どうか脱出の準備を」
「あー、ヤザン、ニェリーザさんも。ロックハウス家には秘密兵器が色々ある。それを使えばそうだな・・・帝国が相手でも勝てるくらいの危険な物もだ。だからとりあえず安心してほしい。うちの連中、焦ってないだろ?」
「・・・確かに・・・してそれは?」
「悪いな。それは秘密だ。この秘密は俺とベッドを伴にする女にしか教えない掟だ。嫌だろ?俺と寝るの?」
「それは遠慮したいですな」
「わっ、わたしは猊下がどうしてもというならその・・・」
うん、推定年齢200歳とかリアクション困るし。
「で、アンタ、どうすんの?」
「うーん、どっちにするか悩んでる。夜のうちに安全に全滅させるか、今後のために、各国の間者が見てる前で堂々と叩き潰すか。前者なら俺が一人で行くんだけど、後者だとみんなにも防衛頑張ってもらう事になる・・・ニェリーザさん、ニェリーザさんの知ってる魔法の中で、一番射程が長いのってどれくらいですか?」
「射程?変な事を聞くな?そこそこの腕でも30メートルがいいとこだろう、かつて50メートル近い広範囲殲滅魔法を一度見たが、昨今はそこまでの使い手は耳にしない」
「ふむ・・・今のニェリーザさんなら、カイナルドで何メートルまで仕留められますか?」
「1,200・・・と言いたいところだが、1,000だな。それを超えると自信が無い」
うーん、10mブロックじゃ魔法でも届くんだよな・・・魔物とはそこが違う。
「猊下、その秘密兵器を使えば本当に勝てるのですか?」
「あー、今回は使わないぞ?こんなに近くで使ったら聖都が消し飛ぶ」
「・・・にわかには・・・信じ難いですが・・・」
うーん、三万人が横一列に並んだら21km。
夜中に闇討ちしても結構打ち漏らしそうだな・・・大将逃したら長引きそうだし。
「よしっ、決めた。明日夜明けとともに打って出る」
「っしゃぁぁあ、盛り上がってきたーっ!」
「あっ、みんなは防衛だからな?出るのは俺だけだぞ?」
「えーっ!」
「猊下っ!それはいくらなんでも!」
「確かに三万人は骨が折れるけど、それで俺が死ぬと思う人、挙手っ!」
ヤザンとニェリーザさんだけがおずおずと手を挙げる。
「なっ?ウチの連中、だれも心配してないだろ?俺、卑怯さにかけては定評があるんだ」
「でも、魔物と違って飛び道具あんのよ?けっこうヤラれんじゃ無いの?」
「うん、9本あるAMRのうち、8本置いてくから、痛そうな奴から狙撃頼むよ。みんなははリロード係な?アリス、期待してるぞ?ユリアはいつも通りみんなの護衛。ニェリーザさんは・・・1km切ってくるのが居たらお願いします」
「ちょっと待て、シリア殿の狙撃距離は何メートルあるのだ?」
「ん?2kmくらいならいけるわね?」
「なっ!?」
コンコン
「報告がありますっ!」
「入れっ!」
苦虫君と暗部かな?が入ってきた。
「偵察隊が戻りましたっ!敵軍の数、1万2千。他に伏兵は発見できずとの事ですっ!」
「ご苦労・・・敵さん、随分と盛ったな?だが念の為、応援を呼んでおこう」
「応援?ですか?」
「ニェリーザさん、お使いお願いしていい?」
納得いかなげなニェリーザさんが退出し、部外者はヤザンだけになった。
「で、ヤザン、ここまでで質問は?」
「『で』って言われても・・・全然意味がわからないのですが・・・」
「よしっ、質問はなさそうだ。演説に行くぞ!みんな、民を安心させるんだ。堂々と胸を張れっ!」
「「「「「はっ!」」」」」
「猊下っ?」
~~~~~
いつものバルコニー。
全外門が封鎖されるという異例の事態に、見下ろす民の顔も不安そうだ。
ゆっくりと深呼吸。
うっし!
スタスタと魔道具の前に歩み出る。
「諸君っ!現在我が国は戦争状態にあるっ!」
なっ!
戦争!?
どういう事だ!?
「驚くのも無理は無い。つい一時間ほど前、宣戦布告状が届けられ、敵軍三万が、聖都の西5kmに布陣しているっ!」
三万っ!?
「対して聖都の国軍は1300っ!そして敵軍の望みは『俺の首』だっ!」
ざわっ ざわざわっ
「聖都の民よ?どうする?俺の首を落として差し出すか?前教皇に戻せば攻め入らぬそうだぞ?」
ゴクリッ・・・広場に緊張が奔る。
「案ずるな、明日の朝、俺自身がこの足で、首を運んでいこう」
げっ、猊下っ?
教皇さまぁ~~~!
私達のために・・・
「勘違いするな?降伏などしないっ!する必要が無いからだっ!」
???
「敵軍の大将は『聖剣の勇者』だそうだ・・・だが、偽物だ!ホルジス様のおられる我が国にハッタリは通じんっ!」
偽?
勇者っ?
「諸君の中にも疑問に思うものが居るだろう!何故この若造が教皇に!何の取り柄も無い男が教皇にと」
しーん
「良い機会だ。明日はその理由を皆に見せよう。そして各国から偵察に来ている間者の諸君っ!しっかりと見て報告せよっ!聖教国に弓引いてはならぬと!あの男に弓引けば後悔する事すらできぬとなっ!」
ざわっ ざわざわっ
「シリアっ!我妻よっ!我が愛すべきロックハウスの女達よ!前に出よっ!」
バルコニーの端、都民たちからよく見える位置までみんなが移動する。
「どうだ民よっ!白の騎士に不安は見えるかっ!?我が妻たちは不安そうかっ!?」
おおおーっ!
騎士さまぁぁぁ!
聖女さまぁぁぁぁ!
「今夜は外に出られん、少々窮屈な思いをさせるが、早く寝ろっ!そして心臓に自信のあるもの、敵兵の蹴散らされる様が見たいものは明日の夜明け、外城壁に昇ることを許そうっ!そこでしかと眼に焼き付けよ!ホルジス様のおわすこの都に弓引くものが、どんな末路をたどるものかっ!諸君は明日っ、それを知るだろうっ!」
うぉぉぉぉぉぉ!
猊下ァァァァ!
聖女様ァァァァ!
はぁぁぁぁぁぁ、憂鬱だ。
負ければ死んじゃうし、勝てば魔王級の大量虐殺。
宣戦布告されるとと同時に、気球で帝都をどっかーんの予定だったのに・・・相手も状況もタインミングも、全部ハズレた・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁ。
・・・
「はい、おりますよー。あれ?なんか有りました?」
「すみません。ちょっとピンチ・・・かもしれないんで助けてください」
「えーと・・・ふむふむ、つまりアレですね?偽勇者殺したらマズイかって事ですね?」
「やっぱ偽ですか」
正直、いまさらザックとかどうでも良かった。
雲の上のイケメンにユリアを寝取られたけど、俺はそのはるか上、成層圏でヤりまくってる。
だが、アイツが俺を飛び越えてS級に上がってるなら・・・たぶん煮えくり返る。
「勇者というのはギフトです。聖剣は・・・まぁ強力ではありますが、あくまでも物ですね。そして現在『勇者』は空席です。私の管轄ですから、間違いありません」
「安心しました・・・うん、これ以上は神様の管轄じゃ無くなりますね。自分でなんとかします」
「はい。でも、動揺して死んだりしないでくださいね?今カインさんに死なれると私もですね、結構困りますんで・・・」
「あははは、ホルジス様とお話できて随分落ち着いてきました。大丈夫、卑怯さには自信がありますっ!」
一番の心配事は消えた。
二番目は・・・
コンコン
「入れっ!」
「皆様をお連れしました」
ヤザンが皆を呼んできた。
「ヤザン、説明は?」
「はい、私の持っている情報は概ね」
「ん、追加情報だ。向こうの勇者は『偽』だ。俺が王都で売っぱらった『聖剣』をどっかで手に入れたものがでっち上げた。ホルジス様に確認した」
「猊下?今『聖剣』を売ったとおっしゃいましたか?」
「あー、ヤザンは知らなかったな?ホルジス様にもらったんだけど、ユリア買うのに金が足りなかったんだ。だから売った」
「・・・猊下・・・あなたと言う人は・・・」
「いや、ホルジス様もオッケーって言ってたし?むしろ良かったって言ってたし?」
「あんたッ!ふざけてる場合じゃないっしょ?」
「あー、そうだな・・・うん、ニェリーザさん、大事な質問がある。現在S級冒険者は存在するか?」
「冒険者のランクはA級まで・・・猊下はS級についてどこでお知りに?」
「そこはまたいずれ・・・S級が誰に与えられるもので、最後に与えられたものがどうなったかも知っています・・・今知りたいのは、ここ最近、S級が与えられるような事があったか否かです」
「ふむ・・・ホルジス様か・・・私が知る限り、その後は一人も居ないはずだ。与えるなら大々的に宣伝する。本部が隠しているとも思えん」
「ありがとうございます。これで問題は無くなりました・・・いや、あったか・・・ユリア」
「はいっ!」
「あ、その前に・・・すまないがヤザンとニェリーザさんは少し外して下さい。先に家族の話を済ませます。その、夜の生活が含まれる話題なので・・・軍事の話をする前に呼びますので、扉の外で待機してもらっていいですか?」
「はっ!」
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「ユリア、敵軍の大将はザックさんだ」
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「えっ・・・なんで・・・」
ユリアの表情が驚きと悲しみに染まる。
「もう一度皆に言っておく。っていうか言わせて?本当にもうザックとかどうでも良かったんだ。あの頃の俺は、俺もユリアも子供だった。むしろザックさんたちには命を助けられた恩がある。イケメンに対する嫉妬程度のものはあるけど、殺したい程なんかじゃない。だが、殺すことになる・・・その、ユリア寝取られて嫉妬で殺す風で、カッコ悪いじゃん?そういうの?だから言い訳しときたかった」
「えっ?偽勇者って例の?ユリアちゃんの?」
「ああ、そうだ・・・ユリア、大丈夫か?」
「・・・はいっ!助けもらったから・・・悲しいけれど・・・カインや皆と比べられるような人じゃ無いです・・・カインを狙うなら・・・私が殺します」
「うん、ありがとう。みんなもいいね?仕事だからやるんで、嫉妬じゃないからね?」
「アンタ・・・この一大事に変なとこ気にするわね?」
「うっさいっ!フツメンのコンプレックスは複雑なんだっ!あと、終わったらみんなでマイクロビキニお願いします・・・きっと結構落ち込んでると思います・・・」
「・・・主様・・・追い詰められてるのか余裕あるのかわかりにくい・・・」
うん、たぶん結構追い詰められてると思うよ?
命の恩人と30,000の人間を殺す方法考えるんだから・・・。
「よしっ!ヤザンッ!ニェリーザさんっ!入ってくれっ!」
「猊下・・・あまり時間がありません・・・どうか脱出の準備を」
「あー、ヤザン、ニェリーザさんも。ロックハウス家には秘密兵器が色々ある。それを使えばそうだな・・・帝国が相手でも勝てるくらいの危険な物もだ。だからとりあえず安心してほしい。うちの連中、焦ってないだろ?」
「・・・確かに・・・してそれは?」
「悪いな。それは秘密だ。この秘密は俺とベッドを伴にする女にしか教えない掟だ。嫌だろ?俺と寝るの?」
「それは遠慮したいですな」
「わっ、わたしは猊下がどうしてもというならその・・・」
うん、推定年齢200歳とかリアクション困るし。
「で、アンタ、どうすんの?」
「うーん、どっちにするか悩んでる。夜のうちに安全に全滅させるか、今後のために、各国の間者が見てる前で堂々と叩き潰すか。前者なら俺が一人で行くんだけど、後者だとみんなにも防衛頑張ってもらう事になる・・・ニェリーザさん、ニェリーザさんの知ってる魔法の中で、一番射程が長いのってどれくらいですか?」
「射程?変な事を聞くな?そこそこの腕でも30メートルがいいとこだろう、かつて50メートル近い広範囲殲滅魔法を一度見たが、昨今はそこまでの使い手は耳にしない」
「ふむ・・・今のニェリーザさんなら、カイナルドで何メートルまで仕留められますか?」
「1,200・・・と言いたいところだが、1,000だな。それを超えると自信が無い」
うーん、10mブロックじゃ魔法でも届くんだよな・・・魔物とはそこが違う。
「猊下、その秘密兵器を使えば本当に勝てるのですか?」
「あー、今回は使わないぞ?こんなに近くで使ったら聖都が消し飛ぶ」
「・・・にわかには・・・信じ難いですが・・・」
うーん、三万人が横一列に並んだら21km。
夜中に闇討ちしても結構打ち漏らしそうだな・・・大将逃したら長引きそうだし。
「よしっ、決めた。明日夜明けとともに打って出る」
「っしゃぁぁあ、盛り上がってきたーっ!」
「あっ、みんなは防衛だからな?出るのは俺だけだぞ?」
「えーっ!」
「猊下っ!それはいくらなんでも!」
「確かに三万人は骨が折れるけど、それで俺が死ぬと思う人、挙手っ!」
ヤザンとニェリーザさんだけがおずおずと手を挙げる。
「なっ?ウチの連中、だれも心配してないだろ?俺、卑怯さにかけては定評があるんだ」
「でも、魔物と違って飛び道具あんのよ?けっこうヤラれんじゃ無いの?」
「うん、9本あるAMRのうち、8本置いてくから、痛そうな奴から狙撃頼むよ。みんなははリロード係な?アリス、期待してるぞ?ユリアはいつも通りみんなの護衛。ニェリーザさんは・・・1km切ってくるのが居たらお願いします」
「ちょっと待て、シリア殿の狙撃距離は何メートルあるのだ?」
「ん?2kmくらいならいけるわね?」
「なっ!?」
コンコン
「報告がありますっ!」
「入れっ!」
苦虫君と暗部かな?が入ってきた。
「偵察隊が戻りましたっ!敵軍の数、1万2千。他に伏兵は発見できずとの事ですっ!」
「ご苦労・・・敵さん、随分と盛ったな?だが念の為、応援を呼んでおこう」
「応援?ですか?」
「ニェリーザさん、お使いお願いしていい?」
納得いかなげなニェリーザさんが退出し、部外者はヤザンだけになった。
「で、ヤザン、ここまでで質問は?」
「『で』って言われても・・・全然意味がわからないのですが・・・」
「よしっ、質問はなさそうだ。演説に行くぞ!みんな、民を安心させるんだ。堂々と胸を張れっ!」
「「「「「はっ!」」」」」
「猊下っ?」
~~~~~
いつものバルコニー。
全外門が封鎖されるという異例の事態に、見下ろす民の顔も不安そうだ。
ゆっくりと深呼吸。
うっし!
スタスタと魔道具の前に歩み出る。
「諸君っ!現在我が国は戦争状態にあるっ!」
なっ!
戦争!?
どういう事だ!?
「驚くのも無理は無い。つい一時間ほど前、宣戦布告状が届けられ、敵軍三万が、聖都の西5kmに布陣しているっ!」
三万っ!?
「対して聖都の国軍は1300っ!そして敵軍の望みは『俺の首』だっ!」
ざわっ ざわざわっ
「聖都の民よ?どうする?俺の首を落として差し出すか?前教皇に戻せば攻め入らぬそうだぞ?」
ゴクリッ・・・広場に緊張が奔る。
「案ずるな、明日の朝、俺自身がこの足で、首を運んでいこう」
げっ、猊下っ?
教皇さまぁ~~~!
私達のために・・・
「勘違いするな?降伏などしないっ!する必要が無いからだっ!」
???
「敵軍の大将は『聖剣の勇者』だそうだ・・・だが、偽物だ!ホルジス様のおられる我が国にハッタリは通じんっ!」
偽?
勇者っ?
「諸君の中にも疑問に思うものが居るだろう!何故この若造が教皇に!何の取り柄も無い男が教皇にと」
しーん
「良い機会だ。明日はその理由を皆に見せよう。そして各国から偵察に来ている間者の諸君っ!しっかりと見て報告せよっ!聖教国に弓引いてはならぬと!あの男に弓引けば後悔する事すらできぬとなっ!」
ざわっ ざわざわっ
「シリアっ!我妻よっ!我が愛すべきロックハウスの女達よ!前に出よっ!」
バルコニーの端、都民たちからよく見える位置までみんなが移動する。
「どうだ民よっ!白の騎士に不安は見えるかっ!?我が妻たちは不安そうかっ!?」
おおおーっ!
騎士さまぁぁぁ!
聖女さまぁぁぁぁ!
「今夜は外に出られん、少々窮屈な思いをさせるが、早く寝ろっ!そして心臓に自信のあるもの、敵兵の蹴散らされる様が見たいものは明日の夜明け、外城壁に昇ることを許そうっ!そこでしかと眼に焼き付けよ!ホルジス様のおわすこの都に弓引くものが、どんな末路をたどるものかっ!諸君は明日っ、それを知るだろうっ!」
うぉぉぉぉぉぉ!
猊下ァァァァ!
聖女様ァァァァ!
はぁぁぁぁぁぁ、憂鬱だ。
負ければ死んじゃうし、勝てば魔王級の大量虐殺。
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