I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第二章

121 青天の霹靂

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郵便事業の成長は凄まじいものがあった。
ここ聖都神殿の郵便にも、受付より大きなカフェが併設され、目当ての便が届くのを待つ商人達の一大社交場となっている。
僅か半年で商いの有りようは大きく変化した。

そしてもう一つの大きな変化、現在聖都ではミニスカートが大流行!
ミシンで効率化出来るのは縫製のみ。
短くして使う生地を減らせば、その分安く、誰もが新しい服を買えるようになるっ!
とか力説しまくって救護院の生産分は全部ミニにしたった!
そして神殿ブランドの服は劇的に安いっ!
その短さに普通は躊躇するところだが、売っているのは神聖なる神殿様。
口煩いおばさま達ですら注意する事が憚られる。
もはや流行らない理由が見当たらないっ!

神殿郵便の受付さん達の制服も漏れ無くタータンチェックのミニスカート、プリーツ仕様。
うん、プリーツスカートとか、ヒダヒダの分で普通の三倍くらい生地使っちゃうけどバレてない・・・と、思う。

そうなると男衆が余計にむさ苦しく感じるので、全員執事仕様にしてやった。
黒いスラックスにYシャツにベスト。
ジャケットは肩とか衿とか工数がかかるし、男の為に生地を買う金は勿体無いので上着は無い。
寒かったら走れっ!

で、神殿郵便が忙しいのこの時間に俺はカフェで何してるかって?
そりゃ勿論お仕事ですよ?
受付のお嬢さん方が指定の制服をちゃんと着用しているか、雇用主としてしっかり確認しなければならないわけです!
「服装の乱れは心の乱れ!」って、年中ジャージ姿で生徒指導のおっちゃん言ってたし。

「猊下っ!またこんな所で油を売っておいでですか・・・」

失敬な!
俺は重要な職務を遂行中なのだっ!のだっ!
ヤザンの部下の・・・名も無き部下さんが苦虫を噛み潰したような顔で邪魔しに来た。

これから今日の局留め便が続々入ってくる。
受け付けさんも忙しく、屈んだり伸び上がったり活発に動く。
今この持ち場を離れるワケにはいかないっ!
うん、追い返そう。そうしよう。

「教務長様がお呼びです」

うん、上司を呼び付ける部下。
っていうか俺ってばこの国の最高権力者なのに、ヤザンの俺に対する扱いが日に日に雑になってる。

「緊急の軍務案件なので、来なかったらシリア様に言いつけるよう申しつかっております」

くっ!ヤザンめ!
人の弱味につけ込むとは卑怯な!

「あー、軍務であれば仕方あるまい。行こう」

コンコン

「教皇猊下がお見えですっ!」
「お入り頂けっ!」

会議室へ入ると、苦虫をすり潰しただけでは飽き足らず、コトコト煎じて濃縮したのを口に含んだような顔のヤザン。
傍らには将軍が真っ青な顔で呆然としている。
あれ?結構おおごと?

「猊下、お呼びだてして申し訳ありません」
「よい。火急の用向きであろう?」

鷹揚に答えながら俺の椅子に座る。

「まず現状から・・・猊下、我々は現在、戦争状態にある・・・ようです」
「へっ?・・・ヤザン、どっかと揉めてたの?」
「いえ、存じません。猊下も心当たりが無いのですね?」
「ないな?・・・すると、ペルシラか?」



ペルシラはこの世界で唯一、を名乗る国家。
この歪な領土の形からも、大陸統一を目指す侵略国家であることが見て取れる。
ゆえに、郵便事業の有用性が明白になれば、いずれ事を構えざるをと思っていたが・・・早いっ!

「いえ、ミズーラです」
「へっ?・・・ミズーラ王国?」

ミズーラは聖教国の北西に位置する交易大国。
大陸のほぼ中央に位置し、高い山々に囲われた立地を活かし、鉱物資源を原資に、関税で食ってる賢い国だ。
グラム王国やペルシラ帝国をはじめ、様々な国々の物資がこの国を経由して売買されている。
確かに郵便事業で大打撃を受ける事になるが、帝国と王国に挟まれて身動きが取れない・・・はずだった。

「こちらが先程届いた宣戦布告状、こちらが降伏勧告状、そしてこれが猊下あてに、勇者殿からの私信との事です」
「宣戦布告と同時に降伏勧告?それに勇者って・・・今は居ないはずだろ?」
「はっ、ですが宣戦布告には『聖剣の勇者』が猊下を断罪すると・・・」



##### 告 #####

聖教国に告ぐ。
人類の指導者たる教皇猊下を謀略により廃すばかりか、人類共有の財産である神器・転移門を独占し、世界を混乱におとしいれ、神の名を語る簒奪者に膝を折る貴国に、もはや正しき信仰は無い。
天啓により我がミズーラに聖剣の勇者が現れた事が何よりの証拠。
よって我が国は天意に従い、聖剣の勇者の名の下に簒奪者たる現教皇を断罪すべく、貴国に宣戦を布告するものである。

###############


##### 告 #####

聖教国に告ぐ。
既に聖都は包囲されている。
聖剣の勇者が率いる我が軍は3万の精鋭成り。
貴国に勝利の術は無い。

されど、かつて我らは友好関係にあり、神の都たる聖都を灰燼に帰すは忍びなし。
以下の条件をすみやかに受け入れるのであれば、我ら神軍も鉾を収めるものなり。

1つ、簒奪者、カイン・ロックハートの首を差し出されよ
1つ、人類の指導者たるユザール猊下を再び教皇とし、人類繁栄のために尽力せよ
1つ、この度の聖戦の費用として、聖教国は白金貨1,000枚をミズーラ王国に返納せよ

この降伏勧告の期限は明日11月23日、午前6時とする。
期限までに条件が受け入れられない場合、三万の神軍が聖都を蹂躙す。

###############


###############

カイン君へ

正直なところ今回のやり方は僕も乗り気じゃ無い。
そして個人的にも、カイン君には負い目を感じている。
だが、既に事は個人の意志ではどうしようもない。
素直に罪を認め、神の断罪をその身に受けるなら、せめてもの友情として、ユリアちゃん達に罪が及ばないよう、僕が話をつけてもいい。

今の僕は聖剣に選ばれし勇者、この世界にただ一人のS級冒険者だから、それくらいの発言力はあるつもりだ。
彼女達の為にも、冷静に答えを出して貰いたい。

最後に、こんな事になってしまって、本当に残念だ。

聖剣の勇者 ザック

###############



バクンッ!
全身の血液が沸騰し、視界が真っ白になる。

なんだこれ?
なんでアイツが出てくんの?
いつSになった?


・・・猊下 猊下っ!」
「ん?あー、すまん。ちょっと待て、整理する」
「お逃げくださいっ!猊下さえご無事なら、神理教は再建できます」

全然ダメだ。なんにも考えらんねー!

「・・・よし。将軍っ!聖都に兵は何人居る?」
「・・・」
「将軍っ!しっかりしろっ!」

「はっ、1200・・・いえ、1300くらいは居るかと・・・」
「全員招集!すべての外門で守りを固めよっ!いいか?決して打って出させるなよ?」
「で、ですが敵兵は三万・・・」
「だから打って出るなって言ってんだよっ!いいかっ!守るだけだ!秘策があるっ!とっとと言って門を閉じろっ!」
「はっ!」

ヨロヨロと将軍が部屋を出る。

「猊下?秘策とは?」
「あ?・・・いや、デマカセだ。これから考える。とりあえず、うちの連中全員と・・・ギルマス呼んできて。あと、騎士は全員都内の警戒っ!そして都民を出来るだけ広場に集めさせろ。どのみち演説する。誰かにやらせてここに戻れっ!」
「はっ!」

そろそろ三時・・・日暮れまで二時間とちょっとか・・・どうする?
いや、まずは大前提。
確認からだ。

「ホルジス様っ、いらっしゃいますかっ!?」
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