I.B.(そこそこリアルな冒険者の性春事情!)

リカトラン

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2nd season 第三章

137 ファミリー

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「友よ、できればキミが回復するまで待ちたかったのだが、どうにも実家からの縁談話が煩いのだ、正式に、ライザを娶ろうと思う」
「そうか。良いと思うぞ・・・そうだな、どうせなら盛大にやろう!」
「ふむ・・・あまり実家の人間は呼びたくないのだが・・・」

「あー、そういう問題もあるか。だが考えても見ろ?むしろ全部呼んじまったほうが良いんじゃないか?」
「何故だ?」
「今やこの聖教国はそれなりのもんだ。その教皇が姓を与えた大事な家族を嫁入りさせるんだぞ?その様子を直接目にして尚、ガタガタ言えるやつがフレッドの親族に居ると思うか?」
「なるほど・・・友よ!さすがだ!」

結婚式という習慣はこの世界には無い。
新たに夫婦となる男女が神殿に赴き、神に誓いを捧げる。
だが、披露宴の習慣はある。
それえが貴族ともなれば、当人たちよりも家と家の結びつき、盛大に客を招き、両家の協力関係を世に知らしめる必要がある。

「あ!ライザって家族いんのか?」
「グラム王国に居るには居るらしいが、とっくに縁は切れているそうだ」
「うーん、じゃ、呼ぶかどうか本人に決めさせよう」


~~~~~


「あー、おれっちの親族は呼ばないほうがいいぞ?」

本人に尋ねてみたところ、この回答。
確かにライザの家族といえば、おそらくは酒乱、それもライザが遠慮するほどの大物・・・だが祝いの席だ。

「ライザ、お前の家族だ。行儀が悪いのは織り込み済み、似合わないから遠慮すんな」
「ちっげーよ!おれっちの実家はリッチモンド子爵の地方領地なんだ。今更関わり持つのは、どうせいいことねぇだろ?」

「・・・ライザが・・・頭を使った・・・」

「うっせぇ!おれっちだってたまには考えんだ!それに、家族なら全部ここに揃ってる。あっちのは別にいらねぇ!」
「まっ、ライザがこう言ってるんだからいいじゃないっ?あたしたちでしっかり送り出してあげましょ?」
「おうっ!奥様っ!いい酒いっぱい出してくれよなっ!」
「いや、お前は飲んじゃダメだろう・・・」

「なんでだっ!酔っ払ったぐらいで勃たねぇフニャチンやろうと一緒にすんなっ!飲めば飲むほどガンガンヤルのがおれっちだっ!」
「・・・だってよ?フレッド?」
「ふむ・・・ライザが楽しければそれで良いと思うのだが?」
「くっ!幸せが憎いっ!」


~~~~~


フレッドの親族を迎えに行ってやろうかと思ったが、グラハム家の中でライザが自由にやるにはの後ろ盾が必須、それがタクシー代わりじゃ舐められるのでやめた。

まだかまだかとやかましいライザを宥めすかし、グラム王国歴338年6月2日、ついに披露宴が開催された。
前日に到着したフレッドの親族はその足で謁見の間に連行、たっぷりと威圧してやったので、ライザがいじめられることは無いだろう・・・まっ、いじめられてもライザなら自分で解決するだろうが・・・物理オンリーで。

「ご来賓の皆様方!そして諸君っ!今日はこのアルフレッド・フォン・グラハムとライザ・カインズの結婚を祝うため、遠路はるばるの参集、心より感謝するっ!」

宴もたけなわ、フレッドが演壇に登り、口上を述べる。
うん、これでライザは正式にフレッドの妻。
カインズ六人衆もひとり減って五人になるわけだ。
嬉しいような、寂しいような・・・馬鹿な子ほどかわいいって言うよな。

「して皆に報告がある!今日このときより、我が名はアルフレッド・グラハム・カインズ!我が友でありあるじ!カイン・ロックハウス猊下の名を姓に頂き、生涯の忠誠の証としようっ!」
「へっ?」
「よいかな?友よ?」

これは予定に無かった・・・ヤバイ・・・嬉っ・・・グラッ

「猊下!?」

「あー、すまん、ちと酔ったようだ。我が友フレッドよ、勿論だ。そなたの忠誠に疑うところなど無いっ!カインズの姓、遠慮なく名乗るがよいっ!」
「はっ!」

フレッドの隣でニヤニヤしているライザは、たぶんこれの本当の意味をわかっていないだろう。
重鎮たちの前で、親族の前で、フレッドは、王国の身分も家も捨て、俺に生涯の忠誠を誓ったのだ。
愛情から姓を与えた彼女たちの時とは違う。
純粋に剣を捧げてくれたのだ。
心では感じられなくとも、思考がしっかりとその意味を反芻する。

「ふむ・・・だがその忠義、姓だけでは足りぬな・・・アルフレッド・グラハム・カインズよ!今この場にて、そなたを『黒の騎士』に定めるっ!その位階は『白の騎士』と並ぶものだ!白の騎士ライザとともに、神理の守護者としてこの国を守るがよいっ!」
「「はっ!身命にかけてっ!」」

~~~~~

「アンタ、良かったわね?」
「ああ・・・アタマがおかしくなって助かったのは初めてだな。マトモな状態だったら、来賓と部下の前でメソメソ大泣きするとこだ」
「って事は、結構きついの?」
「うん、今食ったら絶対吐くな」
「もう・・・」

「なぁ、いつか、おれがマトモになったら、みんなの事もちゃんと、第二第三婦人の宣言しようと思うんだ。いいか?」
「いいに決まってるでしょ?あんま待たせんじゃないわよっ?アベルさんとか、もう三十なんだし?」
「ああ・・・努力するよ」

「にしても、これからフレッドは大変になるわね?」
「ん?なんでだ?」
「縁談よ。アンタが無茶な基準作って門前払いしてた分、全部フレッドんとこ行くわよ?」
「あー、あれか?」

飛ぶ鳥を落とす勢いの教皇様。
それが先代までと違い、正妻を娶っているわけだから、第二第三婦人の座、家柄を理由にあわよくば正妻の座にと、以前は縁談の話が殺到し続けた。
あまりに鬱陶しかったので、縁談の持ち込みに明確な基準を設け、公開したのだ。

一つ、人種も家柄も問わない。
一つ、冒険者ランクがC以上であること。
一つ、神殿業務に三年以上携わっていること。
以上を満たしたものは、まず教務長との面談があり、その後、ロックハウス家婦人会との面談があり、これら全てをクリアして初めて、教皇に謁見の機会を賜る。

うむ、極めて開かれた窓口に思えるが、事実上の無理ゲーだ。
そもそも貴族王族の子女にCランクなど居るわけが無い。
たまに跳ねっ返りが居たとしても、それが神殿に所属している可能性は低すぎる。
極めつけ、この2つをクリアするものが奇跡的に居たとして、神殿で働いていれば、当然、シリアにユリア、ロックハウス婦人会の面々を目にしているわけで、その婦人会相手に「私の方がイイ女なんだから席をゆずれ」などと申し出られる猛者は皆無だろう。
っていうかそこまでの猛者なら、ある意味一度会っておきたいくらいだ。

「まっフレッドもアレじゃね?『正妻よりも弱い者とは会わぬ』くらいの事言っとけばいんじゃね?」
「そうね?それと婦人会の面談も付けときましょ」
「えっ?冗談じゃ無かったの?」
「当然よ?変なの貰っちゃって、ライザさんイジメられたらどうすんの?」
「あー、ライザをイジメるのは無理じゃ無いか?それが出来る奴なら、むしろ家臣に欲しいくらいだ」

アベルやライザに搦手からめては通じない。
アレだ、フェイントに反応出来ない人間には、フェイントが通用しない的な・・・。

多数派工作でネチネチイジメようにも、物理的に粉砕されてしまう。

っていうか考えてみると、政府としてはメチャクチャ強固だな、ウチ。
トップがヘタレな以外は切り崩しようが無いと思う。

「顔色、良くなったわね?」
「あー、ホントだ。仕事モードになると安定するんだよな・・・ほんと、大和魂引き継ぎすぎ・・・」
「ヤマトダマシイって何?」
「あー、アレだ、前世の俺の住んでた国?そこの民族的特徴だ。ひたすら働く習性がある。んで、働いてる間は重病人でも何故か元気になる」
「・・・変な種族ね?」
「俺もそう思う・・・」

どうせ引き継ぐなら、アジア民族の隠れた残虐性を引き継ぎたかった。
七三一部隊を産んだ残虐性があれば、こんな無様は晒さずに済んだだろう・・・まっ、そんなんだったら、そもそもこんな優しい女性ひと達に囲まれて無いか。

「どれ、そろそろ新婚さん達を解放してやるか、一応初夜だしな?」
「そうね・・・ねぇ?あたし、アンタと結婚して良かったわ?」
「おう・・・俺も、今は分かんなくなってるけど、全部ちゃんと覚えてる・・・苦労かけるな?」
「それは教務長に言ってあげなさい?いい加減ハゲるわよ?あのひと?」
「あー、ヤザンも絶対持ってるな、大和魂」

女性ばかりだった俺のファミリーに、初めて男が加わった。
ナルドさんも似たようなもんだが、あの辺は親戚のおっちゃん枠だからな、ちょっと違う。

友よ、頼りにさせて貰うぞ。





##### 作者からのご連絡 #####
デスマってます。
この章はまだ歯抜けが多いので、ここから一週間くらい、結構更新飛ぶかもしれません。
すみませんm(_ _)m
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感想 240

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