太郎と花子

澤村 通雄

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頼もうー。
頼もうー。

太郎は、新宿からほど近い尾津の邸の前で2度声を開けた。

さあ、どうぞ。
親父がお待ちです。

組の若い衆が太郎を迎えた。

太郎は、深呼吸をして門をくぐった。

尾津は、広間の一番奥の上座にデンと座っている。
床の間には本物であろう日本刀と壁には本物なのか葛飾北斎の日本海の額がある。


どうなったんや、例のハナシ。

尾津が先に口を開いた。

ハイ。
ニックザペッティとは話がつきました。
前金で7千500円入り用ですが。

オー、用意しちゃる?
まずは盃や。
腹くくったか。

それは飲めません。

なんでじゃ、アホゥ。

自分は、任侠の世界に生きる器ではございません。

ほな、なんや。
なんになるんや、半人前やろ。

ビジネスマンでございます。
自分は日本を動かすほどの、ビジネスマンを目指しています。
親分さんとはビジネスパートナーでありたいと思っちょります。

ワシを利用するんか。

いいえ、損はさせません。
お互いに最大限の利益があるようにべんを図ります。
あと、花子はんは頂きます。
自分が幸せにしちゃる覚悟はあります。
花子はやくざの嫁にはさせません。
親分さんとは、義理父の関係です。


ウーン。

よー言った。
わかった、お前の話のんだる。
花子のこと不幸にしたら、タダじゃおかんからな。
そこは覚悟しとけよ。

はい、分かりました。



親父、金はどうなさいます。

組の若い衆が言った。

好きに持たせちゃりぃ。
あとは、太郎次第じゃ。


ありがとうございます。
でわ、急ぎですので。

太郎は札束の詰まった風呂敷を抱えて、尾津の邸を足早に出た。
そして、真っ直ぐに花子とゲンの待っている闇市の飯屋に向かった。


花子やったで。
まだまだ始まったばかりや。
絶対に2人で幸せを掴むで。

太郎は心の中でそう呟き、頭の中でニックザペッティをどう利用してやろうか企むのであった。
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