立春

澤村 通雄

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立春

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立春
2月に入って間もないその時、まだ寒かった。

小説家として生計を立てている竹ノ内。
ある立春の頃、取材の為、とある雪模様の残る湖畔にいた。

時刻は午後5時を過ぎたところだったか。
外は寒かった。

今時、化石みたいなトレンチコートを着た竹ノ内だったが、周りには人っ子一人おらず。
その不自然さを、感じる者などいなかった。

そろそろ夕暮れ時。
竹ノ内は、宿泊しているロッジに戻ろうかと、足を反転しようとした瞬間。
何か違和感を感じた。



あれ?人じゃねえ?


夕暮れでキラキラした湖畔の水面とは、対照的に何か得体のしれない、浮遊物を目視した。
人の足だ。



竹ノ内は、咄嗟にトレンチコートのポッケからスマホを取り出し、それを写真に撮った。


とりあえず、警察かな。



スマホで、慣れない110番という番号をプッシュした。





はい、警察です。
事件ですか?
事故ですか?





あのぅ、湖畔に人の足らしきものが、浮いてるんですけど…




あなたのお名前と、今いる場所を教えてください。





竹ノ内タケシと申します。
青森県、十和田湖のホテルみずなみのすぐ近くにいます。





今から職員が向かいますから、そこにいてください。
近くに誰か、いますか?




いえ、一人です。





ホテルの方は?



まだなにも、言っていません。




わかりました。
できれば、その水面に浮かんだ足のようなものから、目を離さないでください。




しかし、もうすぐに日が落ちて、あたりは真っ暗になりますが。





わかりました、ホテルみずなみの方には、署から連絡します。
ホテルのかたに、すぐに照明になるようなものを、持ってきてもらうようにしますので。
あなたは、よく観察していてください。




はい、わかりました。




ガチァツ







竹ノ内は、急になんだか心細くなってきた。
なにか自分が事件に巻き込まれたような、気になった…






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