絶望

澤村 通雄

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追い剥ぎ

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ちょっと、外の様子を見てくる。

私は、妻にそう言って、家の中で1番頑丈な、安全靴を履き、玄関を飛び出した。

まだ、日が昇ったばかりの、街はうっすらと霧もやに包まれていた。

崩れかけた一軒家の瓦礫のうえで、人影が見えた。

私は、少しでも外の情報が、欲しかった為、そのくすんで見える、人影に近寄って声を上げた。

おーい。
誰か、いますかー。

その人影は、こちらに気がついたようだったが、なんの返答もない。

怪我でも、しているのか。

私は、恐る恐る瓦礫に登り、その人影に近づいた。

大丈夫ですか?

私は、その人影の顔を確認し、20代ぐらいであろう、男に声をかけた。



金、金だせ。

私は、びっくりした。
無論、大地震の直後で、財布など持ってくる考えは、眼中になかった。

え?強盗。


仕事の邪魔するな。

け、けいさつ呼びますよ。


何言ってんだ。お前。
こんな時に、けいさつなんてこねえよ。

ごちゃごちゃ、言うなら殺すぞ。

男は、ポケットからナイフを出し、私に飛びかかってきた。


日本拳法の有段者である私は、男の腕を取り、へし折ってやった。


ギ、ギエー。


腕を私に折られた、その男は、逃げるように、腕をおさえながら、瓦礫の向こうに、消えていった。


た、助けて。

瓦礫の下に、女の声がした。

私1人で、持ち上げられるコンクリートの破片をどかして、ようやく声のする女の顔が、半分見えた。

ハー、ハー。

顔色を見る限り、かなりの深手のようだ。

いま、助けを呼びますから。

私は、女にそう言いかけた途中で、女の息が絶えたのを、把握した。

こんな人が、うじゃうじゃいるな。

私は、深い絶望で、気が遠くなるのを感じた。

どこか、人のいる広い場所へ、移動しなければ。

家の中に、妻と愛犬を残したことに、我にかえり。

一度、妻のところへ戻らなきゃ、と反転した。


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