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徳川
しおりを挟む約2時間の練習が終わり、山田総師範に挨拶して私は道場を後にした。
「おーい、西郷さーん!」
私の後をガッチリした男性が追いかけてくる。
照明のない薄明かりの駐車車場で、私は車の前で足を止めた。
「あぁ、間に合った。」
「徳川さんですよね。」
ついさっきまでは、黒帯の道着姿だった徳川は、パリッとした背広姿であった。
「あぁ、この格好ですか。私、今日仕事帰りで直接練習に来たので。あ、これ入会案内書です。念のため入会用紙も渡しておきます。それと、よかったらこれから飲みに行きませんか?練習後のビールが格別に美味いんです。それで私も5年続いているようなもんで。」
「あ、でも私クルマなんです。」
「一度、自宅に戻ってから合流しましょう。色々と日本拳法のこととか話したいんで。もちろん、下心などありませんから安心してください。澤山創始に誓って大丈夫です。たしかこの近くの駅前に鉄板焼きのお店がありましたよね。そこで落ち合いましょう。」
「はい、わかりました。でわ。」
「ありがとうございます。店に入るまで、水分は取らないでくださいね。ビール、ビール!」
徳川はそう言って、駅の方角へ歩いていった。
宏美は、クルマで5分も走れば自宅に着くのでクルマをおいて、自宅から駅へ向かうことにした。
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