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第三章
第35話
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ガサッ!!
側の茂みが動く。
その動きに反応したのは、カーサだった。
再び悲鳴を上げると、マレーラの腰に縋り付く。
すると、そのマレーラも大きな声を張りあげた。
「な、なんだー、あのはなのおばけはー!」
突如茂みから飛び出してきたものを指差した。
私たちの前に立ちはだかったのは、頭から花の蕾を垂らし、葉っぱの足で立った異形の姿だった。
『のーん』
という謎の声とともに、闇夜の中で目を光らせている。
星明かりを受けて、不気味な影の形を私たちの方に伸ばしていた。
「か……」
私が声を震わせると、マレーラは「にっ」と笑ったような気がした。
「かわいい!!」
私はギュッと目の前の異形を抱く。
最初に現れた岩精霊と違って、姿こそ歪でもお人形サイズ。
しかも、触り心地も悪くない。花の香りもして最高だった。
「やーん。こういう精霊ほしいかも。そうか。花精霊という……」
『のーーーーーーーーーん』
私の腕の中からスポンと抜けると、花精霊は一目散に逃げてしまった。
あれれ? また逃げられちゃった。
ちょっとショックだ。可愛かったのに。
「2人とも心配しなくてもいいよ。今のは花の――――」
振り返ると、何故かマレーラが地面に四つん這いになっていた。
よっぽど花精霊が怖かったのだろうか。もしかして腰でも抜けたのかもしれない。
その横でカーサが介抱していた。
「大丈夫、マレーラ。まさかそんなに驚くなんて。もしかして、お化けが怖いとか?」
「違うわよ!!」
マレーラは声を荒らげた。
「な、なんでだよ。なんでビビらないんだよ」
「ね、ねぇ……。マレーラ、もうやめよう。こんなこと……」
カーサがマレーラの肩を抱きながら諭す。
ん? やめよう?
ああ。そうか。マレーラがこんなに怖がってるんだもんね。
今すぐ引き返した方がいいかも。
「さっきからあんなに脅かしてるのに……。お前はなんでそんな平気な顔をしてるんだよ!」
またしてもマレーラは叫ぶ。
脅かしてる?
そう言えば、マレーラが声を上げると、精霊が出てくるっていうか。
もしかして合図でも送ってる? なんのために?
あ。そうか。
私はポンと手を打った。
「そうか。マレーラ、私を驚かせようと色々と仕掛けを作ってくれたのね。じゃあ、もしかしてさっきから感じる人の気配も、先に行ったお仲間さんとか?」
どうもおかしかったのよね。
聞いている肝試しのルートは、1本道。
その先にある大岩に名前を刻んで帰ってくるというのがルールだと聞いた。
なのに、私たちが最後にもかかわらず、誰1人帰ってこなかった。
ちょっとおかしいと思っていたのよね。
「なるほど。てめぇ、あたいの計画をそこまでお見通しだったわけだ。さすが首席様だね」
マレーラはゆらりと立ち上がる。
「マレーラ、やっぱりやめよう。こういうのは良くないよ」
「カーサは黙ってな。ここまで虚仮にされて黙ってられないわ」
「え? マレーラ、怒ってる。ご、ごめんね。上手に驚けなくて」
お化けなんかよりも怖い、死の体験をしてるからね、私は。
よくわからないものぐらいでは驚かない。
「舐めやがって。こうなったら実力行使だ! 来な、ボルゴン!!」
私の前に現れたのは、中型犬ぐらいの大きさの蜥蜴だった。
しかもただの大きな蜥蜴というわけじゃない。
四つん這いになって踏ん張り、尻尾を上げると、バリバリと音を立てながら雷の力を発揮した。
雷精霊だ。すごい。扱いが結構難しい精霊なのに。
「これってマレーラの精霊……? すごいわね」
「その余裕面が気にくわねぇ。あたいたち、学校組を見下してるような目がね」
「え? 私は素直にすごいって言ってるだけなんだけど」
学校組って、何のことだろうか?
「いいかい。さっきまでの精霊と一緒にするんじゃないよ」
「それって、もしかして私を見て逃げた精霊のこと? やっぱり、あれ誰かの精霊なんだ。ご、ごめんね。ご期待に添えないリアクションで」
あははは、と苦笑すると、マレーラはさらに目くじらを立てた。
そうか。肝試しって言っても、本物のお化けを用意するわけにはいかないからね。
精霊をお化けに見立てて、盛り上げようとしていたのか。
マレーラには悪いことをしたわ。
もっと空気を読むべきだったかもしれない。
「そのツラがムカつくって言ってんだよ!! ボルゴン!!」
マレーラはボルゴンと名付けた雷精霊に命令する。
ボルゴンは金色の瞳をさらに光らせると、体内の雷気を増幅させた。
やばっ! マレーラ、すっごく怒ってる。
どうしよう。こういう時って…………えっと、どうしたらいい?
友達が主催した誕生日に、空気が読めずに素っ気ない態度をしてたら、怒るのは理解できる。でも、えっと……。どうしたらいい? 謝るの、わたし??
いや、とりあえず謝っておこう。
「やれ、ボルゴン!」
「ごめんなさい、マレーラ」
私が頭を下げて謝ると、その上をボルゴンが放った雷の槍が通過していった。
あっぶなあ。当たってたら、意識を失ってかも、
マレーラ、それほど怒ってるのね。
「ボルゴンの槍を躱すなんて。さすが飛び級組だね」
「ち、違う。今のたまたま――――」
「今度は本気で!!」
「マレーラ、後ろ!!」
叫んだのは、私じゃなかった。
カーサだ。
そして、私もマレーラの後ろにいる異形の姿を確認していた。
最初に確認できたのは、巨大な獅子顔だ。
鏡の額縁みたいに広がった鬣に、獰猛な牙と鋭く吊り上がった目が光っている。
しかし、さらに私を驚かせたのは、通常4本の獅子の足が、さらに4本増えて、8本になっていたことだった。
「アームレオン!!」
それは7段階存在する魔物の等級の中で、上から2つ。
Aランクに相当する魔物の名前だった。
側の茂みが動く。
その動きに反応したのは、カーサだった。
再び悲鳴を上げると、マレーラの腰に縋り付く。
すると、そのマレーラも大きな声を張りあげた。
「な、なんだー、あのはなのおばけはー!」
突如茂みから飛び出してきたものを指差した。
私たちの前に立ちはだかったのは、頭から花の蕾を垂らし、葉っぱの足で立った異形の姿だった。
『のーん』
という謎の声とともに、闇夜の中で目を光らせている。
星明かりを受けて、不気味な影の形を私たちの方に伸ばしていた。
「か……」
私が声を震わせると、マレーラは「にっ」と笑ったような気がした。
「かわいい!!」
私はギュッと目の前の異形を抱く。
最初に現れた岩精霊と違って、姿こそ歪でもお人形サイズ。
しかも、触り心地も悪くない。花の香りもして最高だった。
「やーん。こういう精霊ほしいかも。そうか。花精霊という……」
『のーーーーーーーーーん』
私の腕の中からスポンと抜けると、花精霊は一目散に逃げてしまった。
あれれ? また逃げられちゃった。
ちょっとショックだ。可愛かったのに。
「2人とも心配しなくてもいいよ。今のは花の――――」
振り返ると、何故かマレーラが地面に四つん這いになっていた。
よっぽど花精霊が怖かったのだろうか。もしかして腰でも抜けたのかもしれない。
その横でカーサが介抱していた。
「大丈夫、マレーラ。まさかそんなに驚くなんて。もしかして、お化けが怖いとか?」
「違うわよ!!」
マレーラは声を荒らげた。
「な、なんでだよ。なんでビビらないんだよ」
「ね、ねぇ……。マレーラ、もうやめよう。こんなこと……」
カーサがマレーラの肩を抱きながら諭す。
ん? やめよう?
ああ。そうか。マレーラがこんなに怖がってるんだもんね。
今すぐ引き返した方がいいかも。
「さっきからあんなに脅かしてるのに……。お前はなんでそんな平気な顔をしてるんだよ!」
またしてもマレーラは叫ぶ。
脅かしてる?
そう言えば、マレーラが声を上げると、精霊が出てくるっていうか。
もしかして合図でも送ってる? なんのために?
あ。そうか。
私はポンと手を打った。
「そうか。マレーラ、私を驚かせようと色々と仕掛けを作ってくれたのね。じゃあ、もしかしてさっきから感じる人の気配も、先に行ったお仲間さんとか?」
どうもおかしかったのよね。
聞いている肝試しのルートは、1本道。
その先にある大岩に名前を刻んで帰ってくるというのがルールだと聞いた。
なのに、私たちが最後にもかかわらず、誰1人帰ってこなかった。
ちょっとおかしいと思っていたのよね。
「なるほど。てめぇ、あたいの計画をそこまでお見通しだったわけだ。さすが首席様だね」
マレーラはゆらりと立ち上がる。
「マレーラ、やっぱりやめよう。こういうのは良くないよ」
「カーサは黙ってな。ここまで虚仮にされて黙ってられないわ」
「え? マレーラ、怒ってる。ご、ごめんね。上手に驚けなくて」
お化けなんかよりも怖い、死の体験をしてるからね、私は。
よくわからないものぐらいでは驚かない。
「舐めやがって。こうなったら実力行使だ! 来な、ボルゴン!!」
私の前に現れたのは、中型犬ぐらいの大きさの蜥蜴だった。
しかもただの大きな蜥蜴というわけじゃない。
四つん這いになって踏ん張り、尻尾を上げると、バリバリと音を立てながら雷の力を発揮した。
雷精霊だ。すごい。扱いが結構難しい精霊なのに。
「これってマレーラの精霊……? すごいわね」
「その余裕面が気にくわねぇ。あたいたち、学校組を見下してるような目がね」
「え? 私は素直にすごいって言ってるだけなんだけど」
学校組って、何のことだろうか?
「いいかい。さっきまでの精霊と一緒にするんじゃないよ」
「それって、もしかして私を見て逃げた精霊のこと? やっぱり、あれ誰かの精霊なんだ。ご、ごめんね。ご期待に添えないリアクションで」
あははは、と苦笑すると、マレーラはさらに目くじらを立てた。
そうか。肝試しって言っても、本物のお化けを用意するわけにはいかないからね。
精霊をお化けに見立てて、盛り上げようとしていたのか。
マレーラには悪いことをしたわ。
もっと空気を読むべきだったかもしれない。
「そのツラがムカつくって言ってんだよ!! ボルゴン!!」
マレーラはボルゴンと名付けた雷精霊に命令する。
ボルゴンは金色の瞳をさらに光らせると、体内の雷気を増幅させた。
やばっ! マレーラ、すっごく怒ってる。
どうしよう。こういう時って…………えっと、どうしたらいい?
友達が主催した誕生日に、空気が読めずに素っ気ない態度をしてたら、怒るのは理解できる。でも、えっと……。どうしたらいい? 謝るの、わたし??
いや、とりあえず謝っておこう。
「やれ、ボルゴン!」
「ごめんなさい、マレーラ」
私が頭を下げて謝ると、その上をボルゴンが放った雷の槍が通過していった。
あっぶなあ。当たってたら、意識を失ってかも、
マレーラ、それほど怒ってるのね。
「ボルゴンの槍を躱すなんて。さすが飛び級組だね」
「ち、違う。今のたまたま――――」
「今度は本気で!!」
「マレーラ、後ろ!!」
叫んだのは、私じゃなかった。
カーサだ。
そして、私もマレーラの後ろにいる異形の姿を確認していた。
最初に確認できたのは、巨大な獅子顔だ。
鏡の額縁みたいに広がった鬣に、獰猛な牙と鋭く吊り上がった目が光っている。
しかし、さらに私を驚かせたのは、通常4本の獅子の足が、さらに4本増えて、8本になっていたことだった。
「アームレオン!!」
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