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第三章
第42話
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第一師団が王宮の方に向かって行くのを、私はカーサとともに見送る。
個性的な副長に、鍛え上げられた魔術師たち。
短い時間の中で、色々と起こりすぎて私はしばし呆然とする。
戦いの方は第一師団が最後に放った攻撃が効いているようだ。
ほぼほぼ戦闘は終結していた。
死霊使いも、最初のラディーヌ副長の一撃に巻き込まれて死んだようだ。
戦場に漂っていた禍々しい魔力は、もう消えていた。
「ぬぬ? お主、もしかしてミレニアであるか?」
いきなり名前を呼ばれて、振り返ると騎士が立っていた。
無警戒に私たちの方に近づいてくる。
敵ではないにしろ、いきなり自分の名前を呼ばれては、こっちとしては警戒するしかない。
なのに、向こうは久しぶりの旧友にでも出会ったかのように、気さくに手を広げて近寄ってきた。
私はカーサを背中にして守ると、キリッと目を吊り上げる。
「誰? あなた?」
「おいおい。我が輩の声も忘れたのか?」
あれ? なんかこの言い回し、どっかで聞いたことがあるんだけど。
フルフェイスの兜のバイザーを上げる。
すると、人懐っこそうな大きな瞳が現れた。
それを見て、私はふと郷愁に囚われる。
「も、もしかしてドレーズ兄さん??」
思わず素っ頓狂な声を上げる。
兄さんはわざわざ兜まで脱ぐと、ニッと白い歯を見せた。
つるりとした頭に玉葱の房のように残った髪と太い眉が現れる。
目だけ見ると、まるで少年みたいに思えるのだが、顔全体で捉えると厳ついおっさんだ。首から下の筋肉を見てしまうと、尚更その印象は深まるだろう。
騎士団に入って訓練に明け暮れているのは、真っ黒に焼いた肌からわかった。
「まさかこんなところで、ドレーズ兄さんに会えるなんて」
「それは我が輩の台詞なのである。魔術師第一師団に配属されたと聞いた時は驚いたが、よーもーやこんな所で再会するとはな」
アスカルド家の次男。そして私のお兄ちゃん。
ドレーズ・ル・アスカルドだった。
ちなみにこの妙なしゃべり方は、昔ご執心だった英雄譚に出てくる騎士の口調を真似たものだ。なまりもひどくて、私でも「はあ?」と首を傾げたくなるほど、変な言葉で喋ることもある。
「私もよ。……カーサ、大丈夫。私の兄よ」
「ミレニアの?」
カーサは私の肩越しに顔を出す。
大きなドレーズ兄さんを見ると、カーサは会釈した。
けれど、私の背中から離れない。
奥手のカーサらしい反応だ。
「それよりも第一師団がどこかへ行ってしまったが、何か聞いておる?」
「実は――――」
私はドレーズ兄さんに事情を説明する。
「にわかに信じがたい話だが、あのゼクレア師団長がお前の言葉を信じたということは、間違いなさそうだ」
「騎士団はどうするの?」
「今から団長に報告するが、騎士団も遅れて加勢に行くことになるであろうな」
「そう……」
正直、まだ胸騒ぎが収まらない。
何か起こるんじゃないかって予感がある。
杞憂だと良いんだけど。
「そんな顔をするな、ミレニア」
「え?」
「お主のことだ。何か理由があって精霊厩舎にやってきたのであろう?」
ドレーズ兄さんは、妹のことを慮る。
さすが兄妹と言ったところかしら。
「我が輩が団長に掛け合って、可愛い妹を守るためにここに残ろう」
「ホント? ありがとう、ドレーズ兄さん」
「うむ。しからば、我が輩は団長に報告してくる」
「私たちは先に厩舎の中に行ってるから。行きましょう、カーサ」
「うん」
久しぶりの兄妹の対面を数分で終えると、私はカーサと一緒に精霊厩舎の中へと入っていく。
さすがに戦場のど真ん中に立っていただけあって、タダでは済んでいなかった。
壁や天井に穴が空き、総じて精霊たちが興奮している。
カーサには喚き声にしか聞こえないけど、精霊の言葉を翻訳できる私には精霊たちの罵詈雑言が聞こえた。
中には夜の食事がまだ来ないと投げているものもいる。
案外、元気そうだ。
騒然とした中で、私はカーサとともに向かったのは、あの片羽根のピクシーの下だった。
精霊厩舎が襲われていると聞いた時には驚いたが、ピクシーにはかすり傷1つ付いていない。人間的には問題があっても、あの副長さんはちゃんと精霊厩舎を守ったのだ。
まあ、ラディーヌ副長が守ったのは、精霊厩舎じゃなくて、きっとゼクレア師団長の命令なのだろうけど。
「良かった。無事だったんだ」
「カーサ!! ……君こそまた来てくれたんだね」
カーサはピクシーを見つめ、ピクシーはカーサを見つめる。
互いの目には涙を浮かべた。
人間と精霊。種族は全く違うけど、私には2人が恋人同士に見えた。
「ミレニア、こんな所にいたのであるか。団長の許可をもらって――」
「兄さん、こっちに? 2人にしてあげましょ」
「何? 2人……。うむ。まあ、兄妹水入らずというのもたまには良かろう」
ドスドスと音を立ててやって来た兄さんを、連れていく。
後は若い2人で頑張ってね。
◆◇◆◇◆
「あの……」
ミレニアが去った後、しばし無言だった2人は声を揃える。
妙なタイミングに、カーサとピクシーは頬を染めた。
カーサは胸に手を置く。
心臓が早鐘のように鳴っていた。
ピクシーも何かを言いかけていたようだった。
でも、カーサはミレニアと違って、精霊の声を聞くことができない。
ただ仕草と瞳の輝きだけで、コミュニケーションを取るしかなかった。
だから、カーサはじっと見つめる。
見れば見るほど綺麗なピクシーだった。
でも、それが自分とピクシーの間に線を引いてしまった。
こんなにも美しいピクシーを自分が使役してもいいのかと。
それにピクシーは精霊の中でも賢く、上位の存在である。
人に頼るしか能のない自分が、ピクシーを使役することはふさわしくない。
カーサはそうやって自ら線を引き、どんどんピクシーから離れて行った。
だから、悩みに悩んだ末、ピクシーを諦めた。
カーサの人生は妥協というか、遠慮の塊のような人生だ。
自分が欲しいものに対して、どこか1歩引いてしまう。
それは何故か生来持ってしまった自己評価のせいなのだが、それが呪いのようにカーサを苦しめてきた。
欲しいと思っても、人が勧めるものに手に入れたり、自分の分際を考えて、手放したりすることもあった。
そういう自分に気付いて、背中を押してくれる友達が付き合うようになって、その悪癖は徐々になくなっていったものの、結局大きくは変わらずじまいだった。
ピクシーも一緒だ。
自分はピクシーにふさわしいかどうか、いつも通り自分の天秤に乗せた時、カーサは手放すことに決めてしまった。
ミレニアが近づいてきた時、「自分なんかよりも、ミレニアのような才能ある人が使ってもらった方がいいじゃないか」と思ってしまったのだ。
でも、カーサは諦めなかった。
いや……。頭が諦めることができても、心は諦めていなかったのだ。
精霊厩舎を襲撃されていると聞いた時、いてもたってもいられず、気付いた時にはゼクレア師団長の使い魔に飛びついていた。
そして、やっとカーサは1歩前に出る覚悟を決める。
「ピクシーさん。私はね。ダメな魔術師なの。どんくさいし、補助魔術ぐらいしか得意技はないし、人の後ろについていないと戦えない。だから、いつも誰かを困らせてばかりいるの。中途半端なの」
そう。自分はずっと中途半端だった。
何かに固執するのに、最後まで抗えず、途中で投げ出してしまう。
だから、本当に自分が欲しているのかすらわからなかった。
すると、ピクシーは自分の背中を見せた。
痛々しい片羽根を広げる。
ピクシーも頬を赤らめ、照れている。
中途半端なのは自分も一緒だと言われているようだった。
ピクシーは手を差し出す。
追い払うわけでも、カーサを打とうとしているわけでもない。
何よりピクシーは目一杯自分に向かって笑いかけてくれていた。
何を言いたいのか、言葉を聞かなくたってわかる。
「私で本当にいいの?」
ピクシーが入った小さい籠を抱え上げ、ぼろぼろとカーサは泣き出す。
先ほど彼女に向かって差し出された手は、その涙を拭った。
顔を上げた時、ピクシーははっきりと頷く。
『君じゃなきゃダメなんだ』
耳で聞こえたわけじゃない。
でも、ピクシーとカーサの心の声が重なった。
そんな瞬間だった。
「はい。よろしくお願いします」
カーサは小さなピクシーの手を取るのだった。
◆◇◆◇◆
私は少し離れたところで、2人の様子を見ていた。
初めはピクシーの言葉を翻訳するつもりだったが、その必要はないようだ。
「ふふ……。相思相愛の2人に、恋のキューピットはいらなかったみたいね」
ちょっと羨ましい。
お幸せに、2人とも。
個性的な副長に、鍛え上げられた魔術師たち。
短い時間の中で、色々と起こりすぎて私はしばし呆然とする。
戦いの方は第一師団が最後に放った攻撃が効いているようだ。
ほぼほぼ戦闘は終結していた。
死霊使いも、最初のラディーヌ副長の一撃に巻き込まれて死んだようだ。
戦場に漂っていた禍々しい魔力は、もう消えていた。
「ぬぬ? お主、もしかしてミレニアであるか?」
いきなり名前を呼ばれて、振り返ると騎士が立っていた。
無警戒に私たちの方に近づいてくる。
敵ではないにしろ、いきなり自分の名前を呼ばれては、こっちとしては警戒するしかない。
なのに、向こうは久しぶりの旧友にでも出会ったかのように、気さくに手を広げて近寄ってきた。
私はカーサを背中にして守ると、キリッと目を吊り上げる。
「誰? あなた?」
「おいおい。我が輩の声も忘れたのか?」
あれ? なんかこの言い回し、どっかで聞いたことがあるんだけど。
フルフェイスの兜のバイザーを上げる。
すると、人懐っこそうな大きな瞳が現れた。
それを見て、私はふと郷愁に囚われる。
「も、もしかしてドレーズ兄さん??」
思わず素っ頓狂な声を上げる。
兄さんはわざわざ兜まで脱ぐと、ニッと白い歯を見せた。
つるりとした頭に玉葱の房のように残った髪と太い眉が現れる。
目だけ見ると、まるで少年みたいに思えるのだが、顔全体で捉えると厳ついおっさんだ。首から下の筋肉を見てしまうと、尚更その印象は深まるだろう。
騎士団に入って訓練に明け暮れているのは、真っ黒に焼いた肌からわかった。
「まさかこんなところで、ドレーズ兄さんに会えるなんて」
「それは我が輩の台詞なのである。魔術師第一師団に配属されたと聞いた時は驚いたが、よーもーやこんな所で再会するとはな」
アスカルド家の次男。そして私のお兄ちゃん。
ドレーズ・ル・アスカルドだった。
ちなみにこの妙なしゃべり方は、昔ご執心だった英雄譚に出てくる騎士の口調を真似たものだ。なまりもひどくて、私でも「はあ?」と首を傾げたくなるほど、変な言葉で喋ることもある。
「私もよ。……カーサ、大丈夫。私の兄よ」
「ミレニアの?」
カーサは私の肩越しに顔を出す。
大きなドレーズ兄さんを見ると、カーサは会釈した。
けれど、私の背中から離れない。
奥手のカーサらしい反応だ。
「それよりも第一師団がどこかへ行ってしまったが、何か聞いておる?」
「実は――――」
私はドレーズ兄さんに事情を説明する。
「にわかに信じがたい話だが、あのゼクレア師団長がお前の言葉を信じたということは、間違いなさそうだ」
「騎士団はどうするの?」
「今から団長に報告するが、騎士団も遅れて加勢に行くことになるであろうな」
「そう……」
正直、まだ胸騒ぎが収まらない。
何か起こるんじゃないかって予感がある。
杞憂だと良いんだけど。
「そんな顔をするな、ミレニア」
「え?」
「お主のことだ。何か理由があって精霊厩舎にやってきたのであろう?」
ドレーズ兄さんは、妹のことを慮る。
さすが兄妹と言ったところかしら。
「我が輩が団長に掛け合って、可愛い妹を守るためにここに残ろう」
「ホント? ありがとう、ドレーズ兄さん」
「うむ。しからば、我が輩は団長に報告してくる」
「私たちは先に厩舎の中に行ってるから。行きましょう、カーサ」
「うん」
久しぶりの兄妹の対面を数分で終えると、私はカーサと一緒に精霊厩舎の中へと入っていく。
さすがに戦場のど真ん中に立っていただけあって、タダでは済んでいなかった。
壁や天井に穴が空き、総じて精霊たちが興奮している。
カーサには喚き声にしか聞こえないけど、精霊の言葉を翻訳できる私には精霊たちの罵詈雑言が聞こえた。
中には夜の食事がまだ来ないと投げているものもいる。
案外、元気そうだ。
騒然とした中で、私はカーサとともに向かったのは、あの片羽根のピクシーの下だった。
精霊厩舎が襲われていると聞いた時には驚いたが、ピクシーにはかすり傷1つ付いていない。人間的には問題があっても、あの副長さんはちゃんと精霊厩舎を守ったのだ。
まあ、ラディーヌ副長が守ったのは、精霊厩舎じゃなくて、きっとゼクレア師団長の命令なのだろうけど。
「良かった。無事だったんだ」
「カーサ!! ……君こそまた来てくれたんだね」
カーサはピクシーを見つめ、ピクシーはカーサを見つめる。
互いの目には涙を浮かべた。
人間と精霊。種族は全く違うけど、私には2人が恋人同士に見えた。
「ミレニア、こんな所にいたのであるか。団長の許可をもらって――」
「兄さん、こっちに? 2人にしてあげましょ」
「何? 2人……。うむ。まあ、兄妹水入らずというのもたまには良かろう」
ドスドスと音を立ててやって来た兄さんを、連れていく。
後は若い2人で頑張ってね。
◆◇◆◇◆
「あの……」
ミレニアが去った後、しばし無言だった2人は声を揃える。
妙なタイミングに、カーサとピクシーは頬を染めた。
カーサは胸に手を置く。
心臓が早鐘のように鳴っていた。
ピクシーも何かを言いかけていたようだった。
でも、カーサはミレニアと違って、精霊の声を聞くことができない。
ただ仕草と瞳の輝きだけで、コミュニケーションを取るしかなかった。
だから、カーサはじっと見つめる。
見れば見るほど綺麗なピクシーだった。
でも、それが自分とピクシーの間に線を引いてしまった。
こんなにも美しいピクシーを自分が使役してもいいのかと。
それにピクシーは精霊の中でも賢く、上位の存在である。
人に頼るしか能のない自分が、ピクシーを使役することはふさわしくない。
カーサはそうやって自ら線を引き、どんどんピクシーから離れて行った。
だから、悩みに悩んだ末、ピクシーを諦めた。
カーサの人生は妥協というか、遠慮の塊のような人生だ。
自分が欲しいものに対して、どこか1歩引いてしまう。
それは何故か生来持ってしまった自己評価のせいなのだが、それが呪いのようにカーサを苦しめてきた。
欲しいと思っても、人が勧めるものに手に入れたり、自分の分際を考えて、手放したりすることもあった。
そういう自分に気付いて、背中を押してくれる友達が付き合うようになって、その悪癖は徐々になくなっていったものの、結局大きくは変わらずじまいだった。
ピクシーも一緒だ。
自分はピクシーにふさわしいかどうか、いつも通り自分の天秤に乗せた時、カーサは手放すことに決めてしまった。
ミレニアが近づいてきた時、「自分なんかよりも、ミレニアのような才能ある人が使ってもらった方がいいじゃないか」と思ってしまったのだ。
でも、カーサは諦めなかった。
いや……。頭が諦めることができても、心は諦めていなかったのだ。
精霊厩舎を襲撃されていると聞いた時、いてもたってもいられず、気付いた時にはゼクレア師団長の使い魔に飛びついていた。
そして、やっとカーサは1歩前に出る覚悟を決める。
「ピクシーさん。私はね。ダメな魔術師なの。どんくさいし、補助魔術ぐらいしか得意技はないし、人の後ろについていないと戦えない。だから、いつも誰かを困らせてばかりいるの。中途半端なの」
そう。自分はずっと中途半端だった。
何かに固執するのに、最後まで抗えず、途中で投げ出してしまう。
だから、本当に自分が欲しているのかすらわからなかった。
すると、ピクシーは自分の背中を見せた。
痛々しい片羽根を広げる。
ピクシーも頬を赤らめ、照れている。
中途半端なのは自分も一緒だと言われているようだった。
ピクシーは手を差し出す。
追い払うわけでも、カーサを打とうとしているわけでもない。
何よりピクシーは目一杯自分に向かって笑いかけてくれていた。
何を言いたいのか、言葉を聞かなくたってわかる。
「私で本当にいいの?」
ピクシーが入った小さい籠を抱え上げ、ぼろぼろとカーサは泣き出す。
先ほど彼女に向かって差し出された手は、その涙を拭った。
顔を上げた時、ピクシーははっきりと頷く。
『君じゃなきゃダメなんだ』
耳で聞こえたわけじゃない。
でも、ピクシーとカーサの心の声が重なった。
そんな瞬間だった。
「はい。よろしくお願いします」
カーサは小さなピクシーの手を取るのだった。
◆◇◆◇◆
私は少し離れたところで、2人の様子を見ていた。
初めはピクシーの言葉を翻訳するつもりだったが、その必要はないようだ。
「ふふ……。相思相愛の2人に、恋のキューピットはいらなかったみたいね」
ちょっと羨ましい。
お幸せに、2人とも。
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