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第四章
第53話
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「全団、撃ち方、やめぇぇえええええええ!!」
声を張りあげたのは、アーベルさんだった。
さほど声を張りあげずとも、使い魔を通して全団員に伝わるのだが、本人はいてもたってもいられなかったのだろう。
必死になって、団員に呼びかける。
たちまち魔術による攻撃は止んだ。
残ったのは、低い耳鳴りと、爆煙だけである。
砂埃と一緒に舞い上がった薄い煙の中、球根形の厄災竜の本体と一緒に現れたのは、私だった。
その姿にようやく気付いて、魔術師師団員たちは目を見張る。
本体の前で、私は家族を必死で守る父親のように手を広げ、魔術師たちの前に立ちはだかっていたからだ。
目の前には、友人がいる、先輩になる人がいる、上司になる人がいる、尊敬すべき人がいる。
なのに、私は反目した。
そして、明確な言葉を以て叫んだ。
厄災竜を傷付けては駄目だ、と……。
すべては目の前にいる人たちと、もっと一緒に笑って、泣いて、喜ぶ人生を謳歌するためだ。
一時の反抗。戸惑うのもわかる。
でも、今はそういうしかない。
厄災竜を倒せば、私はまたこの世からいなくなるのだから。
だったら、この厄災竜を生かせばいい。
ずっと世界を窮地にしておけばいいのだ。
だけど、このまま永劫にピンチというわけにはいかないから、大人しくしてもらう必要があるのだけど。
「ミレニア、何を言っている? 厄災竜に追いかけ回されて、頭がおかしくなったのか、お前!」
見なくても誰が言ったかわかった。
人のことを全く考えず、ぶっきらぼうな声を投げかけたのは、ゼクレア師団長だ。
さっきはあんな思わせぶりなことを言っていたのに、戻ってきたら戻ってきたでこの態度。おかげで、ゼクレア師団長の評価は、爆下がりだ。
思えば、出会ってからこの人の評価は上がったり下がったりだった。
もう少し安定してくれないかしら。人として。
けれど、ゼクレア師団長と同じくマレーラまで同じ意見らしい。
「どうしたんだ、ミレニア? そいつは危ない魔獣なんだろ? とっととやっつけてしまおうぜ!」
概ね友人たちも同意見らしい。
カーサも、契約したばかりのピクシーと一緒に心配そうに見つめている。
他の団員たちも戸惑っていた。
王宮から早く排除してしまいたいという気持ちの表れなのだろうだ。
逸る気持ちを押し出すように私を睨み付ける団員もいた。
だが、この中で一番私の行動に困惑していたのは、紛れもなく厄災竜だ。
未だにあの擬態は現れていないが、静かに佇んでいてもどこか落ち着かない空気を私は肌で感じていた。
「ミレニア、答えろ!!」
溜まり兼ねたゼクレア師団長がついに声を荒らげる。
しかし、私は怯むことはなく、瞼を大きく広げた。
「よく聞きなさい、皆の者」
なるべく声を張り、さらに厳格で頼もしさを感じるように私は語りかける。
なんということはない、それは私が前世で意識してきたことだ。
こうやって私は人々を導いてきた。
すると、皆がざわつく。
どうやら私が変えた空気に気付いたらしい。
ミレニア・ル・アスカルドであって、これはミレニア・ル・アスカルドではない雰囲気を私は無理やりに醸成していく。
「厄災竜を殺してはなりません」
「ミレニア、お前何を言っているんだ?」
ゼクレア師団長は三白眼を閃かせる。
側にいるアーベルさんも困惑していた。
そして私は満を持して、告白する。
「私は……私は、ミレニア・ル・アスカルドではありません」
『ええ??』
皆が声を上げる中、私はさらに告白した。
「私は1000年前、聖女と呼ばれていました」
「せ、1000年前??」
「聖女だと?」
「魔族がいた時代の話か」
「まさか伝説の……」
この時代にも、聖女の話はきちんと伝わっている。
ただし私が体験したものとは、まるで違うし、色々と端折られていた。
例えば、聖女が処刑されたことだ。
それでも、聖女が世界を救ったことは今の時代にも脈々と受け継がれている。
「ふざけるな、ミレニア! 子どもの遊びに付き合ってる暇は――――」
「ふざけてなどいません、ゼクレア・ル・ルヴァスキー。私は本物の聖女です。疑うのであれば、そこの勇者に聞いてみるといいでしょう」
私はアーベルさんに名指しする。
さらにムルンを通じて、私の考えをアーベルさんだけに送る。
それを聞いたアーベルさんは、薄く笑った。
「アーベル、お前何か知っているのか?」
「ああ。彼女が聖女であることは疑いない。僕にはわかる。1度僕は彼女に救われているからね」
「救われ……。まさかあの試験の時の騒動。お前から使い魔の思念を解き放ったのは」
「まあ、そういうことだよ、ゼクレア」
アーベルさんは未だに困惑の渦中にあるゼクレアを鎮めるように、いつも通りの笑顔を浮かべた。
「今はこのミレニア・ル・アスカルドを依り代としているだけ。決して彼女が聖女というわけではありません。いいですか。くれぐれもお間違えなく。彼女は聖女ではありません。単なる普通の魔術師ですからね」
私は念を押す。めちゃくちゃ大事なことだからね。
そう。簡単に言うと私は聖女であることを演じることにした。
いや、演じるというのはおかしいか。
元聖女であることに変わりないし、私が1000年前に世界を救った聖女であることは間違いない。
でも、ミレニア・ル・アスカルドが元聖女であることを隠すためにはそうするしかない。
そしてこの場ですべてをひっくり返すためには、今この場で上位の人間に頼るしかない。
だから、私は1000年前の聖女である私を選んだのだ。
「その上で、もう1度いいます。厄災竜を殺してはいけません」
「何故だ? そいつは危険な竜なんだろ?」
「それは否定しません。しかし、この危険な竜を倒すこと、それ自体が竜を解き放った存在の目的だとしたらどうでしょうか?」
「俺たちに竜を倒させることが、首謀者の目的……? それは――――」
「私には聞こえるのです」
私はそっと耳に手を置いた。
そう。これは本当のことだ。
私には聞こえていた。厄災竜の本体から聞こえる声が……。
助けを呼ぶ声が……。
声を張りあげたのは、アーベルさんだった。
さほど声を張りあげずとも、使い魔を通して全団員に伝わるのだが、本人はいてもたってもいられなかったのだろう。
必死になって、団員に呼びかける。
たちまち魔術による攻撃は止んだ。
残ったのは、低い耳鳴りと、爆煙だけである。
砂埃と一緒に舞い上がった薄い煙の中、球根形の厄災竜の本体と一緒に現れたのは、私だった。
その姿にようやく気付いて、魔術師師団員たちは目を見張る。
本体の前で、私は家族を必死で守る父親のように手を広げ、魔術師たちの前に立ちはだかっていたからだ。
目の前には、友人がいる、先輩になる人がいる、上司になる人がいる、尊敬すべき人がいる。
なのに、私は反目した。
そして、明確な言葉を以て叫んだ。
厄災竜を傷付けては駄目だ、と……。
すべては目の前にいる人たちと、もっと一緒に笑って、泣いて、喜ぶ人生を謳歌するためだ。
一時の反抗。戸惑うのもわかる。
でも、今はそういうしかない。
厄災竜を倒せば、私はまたこの世からいなくなるのだから。
だったら、この厄災竜を生かせばいい。
ずっと世界を窮地にしておけばいいのだ。
だけど、このまま永劫にピンチというわけにはいかないから、大人しくしてもらう必要があるのだけど。
「ミレニア、何を言っている? 厄災竜に追いかけ回されて、頭がおかしくなったのか、お前!」
見なくても誰が言ったかわかった。
人のことを全く考えず、ぶっきらぼうな声を投げかけたのは、ゼクレア師団長だ。
さっきはあんな思わせぶりなことを言っていたのに、戻ってきたら戻ってきたでこの態度。おかげで、ゼクレア師団長の評価は、爆下がりだ。
思えば、出会ってからこの人の評価は上がったり下がったりだった。
もう少し安定してくれないかしら。人として。
けれど、ゼクレア師団長と同じくマレーラまで同じ意見らしい。
「どうしたんだ、ミレニア? そいつは危ない魔獣なんだろ? とっととやっつけてしまおうぜ!」
概ね友人たちも同意見らしい。
カーサも、契約したばかりのピクシーと一緒に心配そうに見つめている。
他の団員たちも戸惑っていた。
王宮から早く排除してしまいたいという気持ちの表れなのだろうだ。
逸る気持ちを押し出すように私を睨み付ける団員もいた。
だが、この中で一番私の行動に困惑していたのは、紛れもなく厄災竜だ。
未だにあの擬態は現れていないが、静かに佇んでいてもどこか落ち着かない空気を私は肌で感じていた。
「ミレニア、答えろ!!」
溜まり兼ねたゼクレア師団長がついに声を荒らげる。
しかし、私は怯むことはなく、瞼を大きく広げた。
「よく聞きなさい、皆の者」
なるべく声を張り、さらに厳格で頼もしさを感じるように私は語りかける。
なんということはない、それは私が前世で意識してきたことだ。
こうやって私は人々を導いてきた。
すると、皆がざわつく。
どうやら私が変えた空気に気付いたらしい。
ミレニア・ル・アスカルドであって、これはミレニア・ル・アスカルドではない雰囲気を私は無理やりに醸成していく。
「厄災竜を殺してはなりません」
「ミレニア、お前何を言っているんだ?」
ゼクレア師団長は三白眼を閃かせる。
側にいるアーベルさんも困惑していた。
そして私は満を持して、告白する。
「私は……私は、ミレニア・ル・アスカルドではありません」
『ええ??』
皆が声を上げる中、私はさらに告白した。
「私は1000年前、聖女と呼ばれていました」
「せ、1000年前??」
「聖女だと?」
「魔族がいた時代の話か」
「まさか伝説の……」
この時代にも、聖女の話はきちんと伝わっている。
ただし私が体験したものとは、まるで違うし、色々と端折られていた。
例えば、聖女が処刑されたことだ。
それでも、聖女が世界を救ったことは今の時代にも脈々と受け継がれている。
「ふざけるな、ミレニア! 子どもの遊びに付き合ってる暇は――――」
「ふざけてなどいません、ゼクレア・ル・ルヴァスキー。私は本物の聖女です。疑うのであれば、そこの勇者に聞いてみるといいでしょう」
私はアーベルさんに名指しする。
さらにムルンを通じて、私の考えをアーベルさんだけに送る。
それを聞いたアーベルさんは、薄く笑った。
「アーベル、お前何か知っているのか?」
「ああ。彼女が聖女であることは疑いない。僕にはわかる。1度僕は彼女に救われているからね」
「救われ……。まさかあの試験の時の騒動。お前から使い魔の思念を解き放ったのは」
「まあ、そういうことだよ、ゼクレア」
アーベルさんは未だに困惑の渦中にあるゼクレアを鎮めるように、いつも通りの笑顔を浮かべた。
「今はこのミレニア・ル・アスカルドを依り代としているだけ。決して彼女が聖女というわけではありません。いいですか。くれぐれもお間違えなく。彼女は聖女ではありません。単なる普通の魔術師ですからね」
私は念を押す。めちゃくちゃ大事なことだからね。
そう。簡単に言うと私は聖女であることを演じることにした。
いや、演じるというのはおかしいか。
元聖女であることに変わりないし、私が1000年前に世界を救った聖女であることは間違いない。
でも、ミレニア・ル・アスカルドが元聖女であることを隠すためにはそうするしかない。
そしてこの場ですべてをひっくり返すためには、今この場で上位の人間に頼るしかない。
だから、私は1000年前の聖女である私を選んだのだ。
「その上で、もう1度いいます。厄災竜を殺してはいけません」
「何故だ? そいつは危険な竜なんだろ?」
「それは否定しません。しかし、この危険な竜を倒すこと、それ自体が竜を解き放った存在の目的だとしたらどうでしょうか?」
「俺たちに竜を倒させることが、首謀者の目的……? それは――――」
「私には聞こえるのです」
私はそっと耳に手を置いた。
そう。これは本当のことだ。
私には聞こえていた。厄災竜の本体から聞こえる声が……。
助けを呼ぶ声が……。
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