聖女であることを隠しているのに、なぜ溺愛されてるの私?

延野 正行

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第五章

幕間2 とある賢者の受難

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お久しぶりです。
賢者との決着が着いてなかったので、書きました!


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


(幕間 とある賢者の受難の続きです)

 ミレニアの家庭教師を引き受けた謎の賢者「先生」。
 当主ヤーゴフ曰く、天才という娘の鼻柱を折って欲しいと言われるが、逆に折られる始末。のっけから醜態をさらした「先生」は果たしてミレニアの家庭教師を続けられるのでしょうか?



 なんと言うことだ……!

 よもやミレニアが、あれ程の才ある若者だったとは。

 子どもだと思って油断してしまった。

 だが、私も在野に下ったとはいえ、【賢者】と言われた魔術師。

 かつては1万人以上の門弟を教え、魔術の深淵を探求した者。

 【賢者】カンダレフと讃えられ、多くの王や大公たちから我が知恵を欲した者。

 いくら100年、いや1000年に1度の天才だとしても、元教育者として黙っているわけにはいかん。

 しかし、我の権威は失墜しかけている。

 特にご当主の評価は日増しに下がっていっている。それは差し入れられる菓子と飲み物のレベルでわかる。

 最初は、高級茶葉を使った紅茶だったのに、出涸らしになり、ついに今日は水だけだった。

 いかん。このままでは【賢者】の沽券に関わる。

 だが、私は焦っていない。

 何故なら、今日は実践訓練の日だからだ。

 いくら魔術文字が読めたところで、実践において使えなければ意味がない。

 魔術は高い集中力と、体内での魔力の練り上げが必要になる。

 確かにミレニアの魔力には目を見張るところがあるが、果たしてその魔力を効率良く使うことができるかな。

「ミレニア、今日は実践だ」

「はい。よろしくお願いします」

「よい。返事だ。それではまずはお前の力量を知りたい。早速だが、我と戦え」

「先生と戦うんですか?」

 ミレニアは目が泳ぐ。

 そうであろう。貴族の子女が戦うなんてことは、これまでしてこなかったはずだ。

 喧嘩すらまともにやったことがないだろう。

 だが、これはミレニアの高くなった鼻を折るために致し方ないこと。

 我はこの戦いに勝って、ミレニアとご当主を呼び正体を明かすつもりだ。

 【賢者】カンダレフといえば、ミレニアもご当主も目の色を変えるだろう。

 そして上には上がいることを諭し、我は高級紅茶を出してもらえるほどの信頼を勝ち取るのだ。

「怖じ気づいたか? それともこの老いぼれに魔術を向けるのは、気が引けるか? 舐めるなよ、ミレニア。すでに一線からは遠ざかっていても、我はかつて【賢者】呼ばれた魔術師……」

「え? 先生って、【賢者】って呼ばれていたんですか??」

「あ? いやいやいやいやいや……。いいいいい、い、今のはなし! じょ、冗談じゃよ」

 し、しまったぁぁぁぁああああ!!

 つい口が勝手に動いてしまった。

 ミレニアを負かした後で、格好良く名乗り出るところだったのにぃ!!

 不覚! なんたる不覚!!

 笑って誤魔化したが、多分バレたのではないか?

「あははは……。そうですよね。王国の生き字引といわれる稀代の魔術師にして【賢者】の称号を持つカンダレフ様のわけないですよね。あははははは!」

 ミレニアは朗らかに笑う。

 くぅ! 誤魔化し大成功だけど、なんか腑に落ちん!

 ま、まあ良い。実践訓練でミレニアを負かせば、万事問題ない。

 悪いがミレニア! 最初から全開でいかせてもらうぞ。

「常夜のすべて亘る者よ。牙を研ぎ、爪を光らせ、雷天に狂え。我はそなたに傅く者……。我はそなたの使命を代行する者なり。神すら呷る其は力。我が前に顕現し、ヤードラーの海を穿て!!」


 【虎神雷牙陣サンダー・ライガー】!!


 600年前、ナーガ記における魔術文字の中でも、もっとも上級の雷属性魔術――。

 魔王の腕すら穿つと言われた、雷属性魔法威力をとくと見るがいい!!

 カンッ!

「はあ?」

 我の渾身の魔術は、ミレニアが展開した防御魔術であっさり弾かれてしまった。

 我は顎が外れるぐらいショックを受ける。

 対するミレニアは、そんな我の顔を見て、苦笑を浮かべた。

「さすが、先生ですね。では、次は私の方から――――」

「炎冠に座す魔神よ――――」

 な、何じゃ。【魔炎灼弾ブラストフレア】ではないか。

 確かになかなかの魔術じゃが、この程度なら我でもなんとかなろう。

 どうやら実践を想定して、使いやすい魔術文字を選んだと見える。

 判断としては正しいが、その程度では我を防御魔法を抜くことは――――。

「――――って! ちょっと待て!!」

 ミレニアの手に握られていたのは、巨大な火塊。

 小さなアルカルド子爵家の屋敷ながら、すっぽりと覆うほどの大きさだった。

「なんじゃこれは! 嘘じゃろ! これが――――」

「悪鬼、人ならざるものを討ち払え……」


 【魔炎灼弾ブラストフレア】!!


 ジュドォォォォォォォオオオオオオンンンンンンン!!

 その後、命からがら生き延びた我は、名を名乗ることもなく、自ら家庭教師を辞退することを告げて、再び野に下った。

 我が1つミレニアに言うことがあるとすれば、そなたに教えられるものなどいないということだ。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

新作『王宮錬金術師の私は、隣国の王子に拾われる ~調理魔導具でもふもふおいしい時短レシピ~』を投稿しております。
元錬金術師の主人公が、おいしい時短調理器具を作って、隣国の王子にご飯を作ってもらうお話となります。
是非こちらもご賞味下さい。
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感想 35

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みんなの感想(35件)

2023.01.06 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

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まほ
2022.06.17 まほ

今日偶然見つけて読了致しました。
非常に私好みで(何様目線だよと思われるかもしれませんが…)読み進めるのが楽しかったです。

ただ一つ気になったのが、紹介文にある魔王(黒猫)と、隣国の王子(既に登場していて正体をまだ明かしてないのか、これから出てくるのか)の存在というところが本編で触れられていなかったと思われるので、本編完結ということでしたらその文章のみ削除された方がいいかもしれません。
今後続編の可能性があれば申し訳ありません。
余計なお世話かもしれませんが、一応報告させて頂きました。

何はともあれ、素敵な作品に出会えたこと嬉しく思います。更新お疲れ様でした!

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とらきち
2022.05.12 とらきち

いつも楽しく読ませていただいてます!
恋愛要素を期待して読んでいたので、恋愛よりもファンタジー要素満載で終わってしまって少し残念です。
ただ、作品としてはとても面白く、続きが読みたいので、しれっと更新されることを期待してお気に入り登録しながら待ってます( ≧∀≦)ノ
完結お疲れ様でした!

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