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5章

第30.5話 さくせん みんながんばれ(後編)

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「はああああああああああ!!」

 裂帛の気合いを吐き出し、ソンチョーが飛び出していく。
 迎え討つは、自分よりも遥かに大きな魔蛙族だ。
 その魔蛙族が襲いかかってきた老人を見て、目を丸くする。

「馬鹿め! じじぃ、死に急ぎたいのか?」

 魔蛙族は口を開ける
 高速で撃ち出されたのは舌だ。
 魔蛙族はその跳躍力や単純な膂力が注目されがちな種族である。
 一方で、舌に鉄の城門ぐらいなら軽々と突き破るほどの貫通力があることは、あまり知られていない。

 老人の身体を貫くなど造作もないことだった。


 ズザアアアアアアアアァァァァァァァァッッッッッッッ!!


 時に城門すら破壊する舌が、見事に2枚に下ろされる。
 だが、斬ったのは舌だけではなかった。

「な、なんだと……!」

 魔蛙族の血が溢れる。
 直後、その巨躯が斜めにずれると、魔蛙族は絶命していた。

「ふん。またつまらぬものを斬ってしまったわい」

 ソンチョーは魔族の血が付いた片刃の剣を払う。
 神妙な顔で、慎重に鞘を収めた。

 だが、すぐにその顔は崩れる。

「イタタタタタタタタタタ……」

 ソンチョーは鞘に収めた剣を杖代わりにして、腰を曲げる。

「ぬぬぬ……。どんなにレベルアップしても、年にはかなわんな……」
「そうか。なら、死ね……。爺ぃ!!」
「ぬっ!!」

 殺気と気付いた時には遅かった。
 先ほどよりも速く、舌がソンチョーに向かって伸びていく。
 慌てて剣を抜いたが遅い。

「ダメじゃ!!」

 思わず悲鳴を上げる。
 だが、その舌がソンチョーの身体を貫くことはなかった。
 途中で弾かれたのだ。

「何者だ!!」

 慌てて新手の魔蛙族は舌を引っ込める。
 その時、舌の先に矢が刺さっていることに気づいた。

 魔蛙族はスキル【遠見】を使う。
 森の奥に、矢を構える女の姿を見つけた。

「か、カーチャ!!」

 魔蛙族とともに、ソンチョーもまた驚く。

 そのカーチャはすでに2射目を用意し、魔蛙族に狙いを付けていた。
 ふん、と鼻息を荒くすると、カーチャは口を開く。

「爺ぃが無理をするんじゃないよ」
「何を言う! 今、無理せずして――――イタタタタタタタ……」
「言わんこっちゃない……。あんたは1度退きな」
「待て待て。この魔蛙族はどうする。結構、強いぞ、こやつ」
「心配しなくていい」


 そいつはあたしがやるよ。

~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

ダイチの代わりに突っ込むけど、
ソンチョー、その言葉はどこで覚えたんや。
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