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5章
第31話 ゆみへい かーちゃ(前編)
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新手の魔蛙族をカーチャに任せ、ソンチョーは離脱する。
正確には近くにいたサポート系の村人も退いていった。
周囲から味方の気配がないのを確認した後、カーチャは弦を引いたまま口を開いた。
「魔族の割りには、なかなか紳士じゃないか。爺ぃが逃げるまで待ってくれるなんてね」
「紳士かどうかなど知らん。貴様の言葉がただ気になっただけだ」
「何がだい?」
「私を倒すといった。本気か?」
「本気さ。じゃなかったら、こんな英雄みたいなことはしないよ」
「見たところ貴様――弓兵だろ?」
「弓兵ってわけでもないけどね。あたしゃ単なる村のおばさんだ」
「ふざけやがって……」
「事実を言っただけさ」
魔蛙族が目尻を尖らせれば、カーチャは肩を竦める。
すると、魔蛙族は跳躍する。
すかさずカーチャは矢を放ったが、魔蛙族は事如く舌で弾いた。
地上に落下すると、ついにカーチャとの距離を詰めることに成功する。
「私の名前はウッドロー……」
「へぇ。名乗るのかい。やっぱり紳士じゃないか。あたしも名乗った方がいいかね?」
「必要ない。お前はすぐ死ぬからな!!」
ウッドローは口を開ける。
その瞬間、暗い口内から舌が射出された。
対するカーチャは冷静だ。
弓を放つと、その舌を的確に迎撃する。
再びウッドローの攻撃は無効化された。
「なかなか優秀のようだ」
「どうも……」
敵の賛辞を受けながらも、カーチャは動きを止めない。
すでに射撃体勢に入っていた。
矢尻の先で、ウッドローが笑っている。
「私のスキル【速射】に対応するとはな」
「今のスキルだったのかい。なるほど。速いわけだよ」
「だが、次はどうかな?」
ウッドローは再び口を開いた。
すかさずカーチャは撃ち出された舌を迎撃する。
だが、ウッドローの攻撃は終わらない。
いやほぼ同時に繰り出されていたのだ。
(舌が3つ……?)
カーチャの眉間に皺が刻まれる。
対するウッドローの瞳は、愉悦に歪んだ。
「かかった! 喰らえ――――」
【三弾撃ち】!!
射出系の武器や魔法系スキルを、一気に同時に3つ撃ち出すスキルだ。
レアスキルの1つでもある。
パンッ!!
何かが破裂したような音が響く。
瞳を大きく開いたのは、ウッドローの方だ。
ほぼ同時という【三弾撃ち】が、すべて撃墜されたのである。
「な……んだ、と……」
声を震わせる。
見開いた目の先にいたのは、家で鍋でも洗っていそうな村の女だ。
なのに、ウッドローの【三弾撃ち】を見事破ってみせたのである。
「馬鹿な! 私の【三弾撃ち】をどうやって……」
「どうやってって言われても困るね。こういう能力だとしか、あたしも説明できないよ」
スキル【矢払い】
それがカーチャが繰り出したスキルだ。
矢を使った攻撃無効化のスキル。
レベル4まで高まっており、同時攻撃スキルにも対処可能になっていた。
「あたしはほとんど狙ってないんだ。このスキルのおかげで、矢を放てば、たいていの攻撃を無効化できるんだよ」
「な、なんというふざけたスキル……」
「ふざけてなんかいないさ。一応、このスキルを取るのに、苦労したんだからね。変な魔草の相手をさせられてさ」
カーチャは矢を放つ。
突如、反撃したのだ。
こちらが攻撃側だと思っていたウッドローは対応が遅れる。
かわそうと意識した時には、その眉間に矢が刺さっていた。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
後編に続きます!
正確には近くにいたサポート系の村人も退いていった。
周囲から味方の気配がないのを確認した後、カーチャは弦を引いたまま口を開いた。
「魔族の割りには、なかなか紳士じゃないか。爺ぃが逃げるまで待ってくれるなんてね」
「紳士かどうかなど知らん。貴様の言葉がただ気になっただけだ」
「何がだい?」
「私を倒すといった。本気か?」
「本気さ。じゃなかったら、こんな英雄みたいなことはしないよ」
「見たところ貴様――弓兵だろ?」
「弓兵ってわけでもないけどね。あたしゃ単なる村のおばさんだ」
「ふざけやがって……」
「事実を言っただけさ」
魔蛙族が目尻を尖らせれば、カーチャは肩を竦める。
すると、魔蛙族は跳躍する。
すかさずカーチャは矢を放ったが、魔蛙族は事如く舌で弾いた。
地上に落下すると、ついにカーチャとの距離を詰めることに成功する。
「私の名前はウッドロー……」
「へぇ。名乗るのかい。やっぱり紳士じゃないか。あたしも名乗った方がいいかね?」
「必要ない。お前はすぐ死ぬからな!!」
ウッドローは口を開ける。
その瞬間、暗い口内から舌が射出された。
対するカーチャは冷静だ。
弓を放つと、その舌を的確に迎撃する。
再びウッドローの攻撃は無効化された。
「なかなか優秀のようだ」
「どうも……」
敵の賛辞を受けながらも、カーチャは動きを止めない。
すでに射撃体勢に入っていた。
矢尻の先で、ウッドローが笑っている。
「私のスキル【速射】に対応するとはな」
「今のスキルだったのかい。なるほど。速いわけだよ」
「だが、次はどうかな?」
ウッドローは再び口を開いた。
すかさずカーチャは撃ち出された舌を迎撃する。
だが、ウッドローの攻撃は終わらない。
いやほぼ同時に繰り出されていたのだ。
(舌が3つ……?)
カーチャの眉間に皺が刻まれる。
対するウッドローの瞳は、愉悦に歪んだ。
「かかった! 喰らえ――――」
【三弾撃ち】!!
射出系の武器や魔法系スキルを、一気に同時に3つ撃ち出すスキルだ。
レアスキルの1つでもある。
パンッ!!
何かが破裂したような音が響く。
瞳を大きく開いたのは、ウッドローの方だ。
ほぼ同時という【三弾撃ち】が、すべて撃墜されたのである。
「な……んだ、と……」
声を震わせる。
見開いた目の先にいたのは、家で鍋でも洗っていそうな村の女だ。
なのに、ウッドローの【三弾撃ち】を見事破ってみせたのである。
「馬鹿な! 私の【三弾撃ち】をどうやって……」
「どうやってって言われても困るね。こういう能力だとしか、あたしも説明できないよ」
スキル【矢払い】
それがカーチャが繰り出したスキルだ。
矢を使った攻撃無効化のスキル。
レベル4まで高まっており、同時攻撃スキルにも対処可能になっていた。
「あたしはほとんど狙ってないんだ。このスキルのおかげで、矢を放てば、たいていの攻撃を無効化できるんだよ」
「な、なんというふざけたスキル……」
「ふざけてなんかいないさ。一応、このスキルを取るのに、苦労したんだからね。変な魔草の相手をさせられてさ」
カーチャは矢を放つ。
突如、反撃したのだ。
こちらが攻撃側だと思っていたウッドローは対応が遅れる。
かわそうと意識した時には、その眉間に矢が刺さっていた。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
後編に続きます!
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