ボスは1人でいいと、魔王軍の裏ボスなのに暗黒大陸に追放されたので、適当に開拓してたら最強領地と嫁を手に入れた

延野 正行

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7章

第43.5話 せいじょは かなさいぼうを そうびした(後編)

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「武器がいっぱいですね」
「目移りします!」
「片っ端から試していけばいいみゃ」

 早速、ルナたちは店の中を見て回る。
 それを見て、チンさんは首を傾げた。

「ん? 武器が必要なのは大魔王様じゃないアルか?」
「いや、俺は――――」
「そうよ、チンさん。あの娘たち、ああ見えてオーガみたいに強いネ」
「聞こえているみゃ、メーリン」

 ミャアがピンと耳を立てる。
 そのミャアが足を止める。

「これいいみゃ!!」

 見つけたのは、指の第二関節から二の腕まで覆うナックルガードだった。
 鋼鉄製で保護はもちろん、衝撃にも強そうだ。
 これならミャアの拳も守れるはずである。

 ミャアは早速装備してみる。
 その様子を見ながら、チンさんは笑った。

「はっはっはっ……。お嬢ちゃんにはちょっと重いね。今、革製のナックルガード……」


 ヒュッ!!


 一陣の風が武器屋内を通りぬける。
 ふわりと揺らしたのは、チンさんの口ひげだ。
 鋭い空圧は、その髭を何本か切り飛ばす。

 ミャアは軽くステップを振りながら、シャドーを始めた。
 軽やかな足音が響く。
 その度に、空気が揺れた。

「すごいアル……」

 まるで洗練された舞踏でも見るかのように、チンさんは拍手を送った。

「ミャア、どんな感じ?」
「悪くないみゃ」
「よし。ミャア、それで決定だね。ステノはどうする?」
「私はブラムゴンの屋敷で接収したナイフが使い慣れているので、これでいいです。――あ、でも懐に隠しておけるような小さな武器があれば、教えて下さい」

 ステノの攻撃方法は、相手の急所を狙うところまで踏み込んでの一撃必殺。
 確かに懐に隠せる武器は有用だ。
 さすがよく考えている。
 思考が完全に暗殺者だけどね。

『キィ!!』

 と鳴いたのは、チッタだ。
 俺の周りをクルクルと回っている。
 どうやらチッタも武器をねだっているらしい。

「わかったよ。チッタでも装備できる武器か防具を探してあげる」
『キィ!!』

 嬉しそうに鳴く。
 さて次は――。

「ルナは、ど――――――」

 振り返った瞬間、俺は固まった。
 ルナがすでにあるヽヽ武器を持って立っていたからだ。
 成人男性の太股よりもさらに太い鉄の棍棒。
 そこに付いた無数の棘。
 所謂、金砕棒という武器だ。
 地獄の鬼が持っているアレである。

 中身が空洞でない限り、相当な重量だろう。
 なのに、ルナは軽々と片手で掲げている。
 俺の方を向くと、首を傾げた。

「どうしました、大魔王様?」
「いいいいいいや、何でもない。さすがだなって思っただけさ」
「???」

 言えない。
 金砕棒を持っているルナが、とても似合っていたなんて。
 何というか、もうこれは運命の出会いではないだろうか。

「ル、ルナ……。気に入ったのなら、それを買ってあげるよ」
「え? いいんですか?」
「もちろん」

 俺は笑顔で答えると、ルナは嬉しそうに金砕棒を抱きしめた。

「大事にしますね」

 金砕棒を抱きしめながら笑うルナの姿は、なかなかにシュールだ。

「早速試してみたいみゃ! なんか殴るものはないかみゃ? 例えば、大砲とか……」
「何言ってるアルか、ミャア。また大魔王様に払ってもらうアルか?」
「冗談みゃ。お前のところの大砲を全部潰しても、ミャアが強くなったとは言えないみゃ」
「アイヤー。獣人は相変わらず頭が悪いアルね。残念アルけど、うちに付ける薬はないアルよ」

 うぬぬぬぬぬぬ……。

 両者は顔を突き合わせ睨む。
 こらこら……。
 喧嘩はやめなさい。
 本当にミャアとメーリンは犬猿の仲だな。
 普通、ドワーフってエルフと敵対しているものだろうに。

「毎度ありネ。力比べしたいなら、良いところがあるよ」

 メーリンに立て替えてもらった金貨を数え終えると、チンさんはある場所に案内してくれた。



 チンさんが案内してくれた場所は、ちょうど城の真ん中に位置する場所だった。
 そこには大きな像が建っている。
 青銅でもなければ、金でも銀でもない。
 神秘的な光を放ち、それは宝石のようにも見えるけど、脆く儚いイメージはなく、鉄の塊のような重厚さを感じる。

 これが魔法鉱石ミスリルだ。
 魔族たちが武器として扱っているのを見たことはあるけど、巨大な像に使っているのは初めてみた。

「この像は?」
「ドワーフ族の初代族長アル。ドワーフ族が代々受け継いできたものアルよ」

 メーリンは教えてくれた。

「この像で試し切りするネ」
「え? 像を?」

 ちょっと待って。
 さっきドワーフが受け継いで来たって。
 一族を象徴する像じゃないのか?

「ビックリするのも無理ないネ。でも、昔からこの像で試し切りした武器は、とても強くなるという言い伝えネ」

 ホントだ。
 像のあちこちに、小さな傷が入っている。
 おそらく試し切りの跡なのだろう。

「じゃあ、遠慮なく打ち込んでいいみゃね」
「構わないアルね。精々怪我しないように気を付けるアルよ」
「ふんみゃ。メーリン、見とくといいみゃ! こんな像、ぶっ壊してやるみゃ」

 ミャアは渾身の力を叩き込む。


 ゴォォォォオォォオォオォォオオンンンン……。


 重々しい音を立てる。
 だが、像はビクともしない。
 逆にミャアは「くぅぅぅぅぅぅ!」と悲鳴を上げた。

「いっっっったああああああ!! この像、本当に硬いみゃ!」
「ほら、言わんことないアル。そう簡単にご先祖様の像が、壊せるわけないアルよ」


 ブオンッ!!


 風――いや、もはや暴風だ。
 強烈な風が巻き起こり、周囲のものをまき散らす。
 見ると、ルナが金砕棒を両手で握って、スイングしていた。

 堂に入ったスイングに、俺はおろか皆も絶句する。
 初めてとは思えないほど自然で、仮に日本のプロ野球ならホームラン王が狙えそうな綺麗なスイングだ。

 そのルナが像の前に立つ。

「いきます」

 声を掛け、金砕棒を振りかぶった。
 少し足を上げて、腰を上手く使って捻転する。
 引き絞られた弓のように金砕棒がしなると、次の瞬間――強烈な衝撃が巻き起こった。


 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンン!!!!


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

聖女おにに金棒ってね。
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