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異能者
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〈あ~~あの女美味そ~~〉
そんな声が頭に響いてきて、朱生は周りを見た。
小さい時に車にぶつかられる事故に遭い、その時から何故か人の心の声が聞こえるようになってしまっていた。
小さい頃はうるさいほどの声が頭に響いてきて、外に出られなくなって登校拒否にもなったが、小学校高学年になる頃にはなんとかコントロールができるようになり、大学生の今では、全てスイッチオフにもできるし、自分が目にしている人物のみの声だけ聞くなんて言うことも出来るようになっていた。
『俺、いま誰か見てたっけ…』
課題が多い美大生の朱生は、この年末は明けた1月20日の展示会用の絵と、論文に追われて絶賛睡眠不足だったこともあり、このカフェへも眠気覚ましとうたた寝の両方の意味で滞在している。
なのになんとな~く見ていた店内で、無意識に見ていたらしい人からの妙な言葉にうんざりした。
『女美味そうって、露骨なやつだな…』
どいつだ…と思って視線を巡らせると、1番目につきやすい場所に窓へ向かって座っている1人の男が目に入る。
その男は男の自分から見ても綺麗な男で、染めているのか地毛なのか綺麗な栗色の髪をしており、少し長めな前髪は横で立ち上げてかき上げる仕草が似合いそうなかんじで顔を半分隠していた。
『あの栗色は目指したけど無理だったなぁ。地毛かなぁいいな…』
と軽く自分の栗色もどきの髪を混ぜ、まっすぐですっとんとんな髪質にも腹が立つ。
『しかしあいつ…女には不自由してなさそうなルックスだけどなぁ…』
そしてまた何の気なしのその人物を見てると、
〈右のはダメだな。筋張ってそうで俺の好みじゃない。大体歯に挟まりそうな肉質っぽくてなぁ〉
『ん?歯?』
〈やっぱり窓際の女がいいな。柔らかそうだし、噛み応えも良さそうだし〉
『なんだ?妙なプレイが好きな変態さんかな…』
なかなか面白いこと考えるやつだなと思いながらも、その思考の内容が少し気味が悪く、その男から目を逸らしそろそろ出ようかな、などと考えてるとその思考が無遠慮に頭へ流れ込んできて
〈あ…〉
という、短い音でその後に
〈可愛い…〉
『可愛い?』
は?と思って、関わりたくはなかったが、チラッとだけそいつを見て見ようと目だけをちょっと向けてみたら、目が合った。
『うっ、俺?俺みてる?』
目線を外して、もうやだ…とばかりにリュックを握って店を出ようと立ち上がった時、その男も立ち上がり、慌てて座り直すと男も座るという状況を目の当たりにし
『やっぱ俺なんか~い』
ヤケで男を睨んでやる。
男はニコニコして朱生を見つめ
〈これは食用じゃない。愛でるよう♪〉
なんてことを考えているのが聞こえてきた。
『食用じゃない…?って!さっきの女子たちはやっぱ食用だった⁉︎⁉︎⁉︎』
ゾッとする。食用ってなんだよ、こえええよ。
そのまま勢いでリュックを引っ掴み足早に店内を抜けると店を出た。
『何あいつ何あいつ、人喰い?怖い怖いなになに、人間?なに?』
なんでもいいからあいつのいる場所から離れたくて、半ば走るように街を抜け学校へむかうため駅へ向かう。
このまま家になんか帰れなかった。この話も誰かにしたいし、もしかしたらもっとたくさんあんなのがいるかもしれない。
情報を、情報を…とほんとうに足早に、なんなら走るように(2度目)歩いていた朱生の後ろから、めちゃくちゃ呑気な声で
「あのぉ~」
と話しかけてくる人がいた。
『は?なに?俺の状況見えてないすか?急いでるんすよ。話しかけないで、少しでも遠くへ行きたいんだからさ』
と思いながら、
「アンケートも勧誘も要らないです。急いでるので邪魔しないでください」
そう言って話しかけてきた人物を見て、朱生は
「うひゃあっ」
という、なんとも表現しにくい声を上げてしまう。
『なっなに…』
そこにいたのは先ほどの栗毛美青年(仮)
「え…あ…なんです…か」
立ち止まって、美青年に対峙する。顔はもちろん見られない。
こわい…俺は食っても美味くないよ、不味いよ
「あのさ、お茶でもしませんか?」
は?俺にお茶飲ませてなんか薬でも入れて食う気だろ!
〈可愛いなぁ。好みドストライクだ…これは食えないなぁ愛でたいなあ〉
『めでたいって なにがおめでたいんだよ!てか俺は食用じゃねえの?めでたい対象なのか?』
「たった今飲んでたのでいらないっす。俺急ぐのでそれでは」
〈あ、そういえばそうか。失敗失敗。それにしても愛でたい愛でたい。可愛い。ドストライクだ。なんならこのまま〉
『このままなんだー!』
「さっきからめでたいめでたいってなんなんすか!正月っすか?」
「え?俺めでたいなんて言いましたっけ…?」
『しまった!』
「あ…いや…あ~言ってましたよ。めでたいって」
〈え~心の声漏れちゃってたのかな。お正月?なにそれ、かわいい~~〉
「あ、そうだった?ごめんなさい。愛でたいっておめでたいじゃなくて、愛って漢字を使う方の愛でたいだよ」
「え?ああ~~そっちか…って!!どっちにしろなんなんですかね!俺急ぐんで」
『やべーやべー心の声が出ちゃったのはこっちだよ!上手く誤魔化せたかな、よかった。それにしたって関わっていたらやばいに代わり無いからな、ソッコーここから離脱しなきゃ』
「そうなんですか~?残念だな。僕は君が気に入っちゃって。どこに行ったら会えるかな」
〈こんな好みの人に会えるなんて中々無いからなぁ~手放さないぞ~〉
『手放してくれよ!大体あんた人間じゃねえじゃねえかよ』
「いや、初対面でそう言われても答える訳ないでしょ。やめてくださいこの場でさよなら、じゃ」
朱生は全力で走り出した。
駅まで行けば、なんとかなるだろう。
「ねえ~教えてよぉ~」
「はあ?」
男は朱生の全力疾走にも普通に歩く感じで追いついてきて並走してくる
「やっぱお前人間じゃないだろ!!!」
もうなんでもいいや、声に出ちゃったっていい、とにかく関わりたくない
「やだな、僕は人間だよ?本当に人間だってば。見ての通り」
朱生は足を止めて男を見た
「人間は全力疾走に、普通は歩いておいつけねえんだよ!俺にかまわないでくれ。好みのやつなんか他で探せ。俺以外のな!」
もう走っても何しても追い付かれるのなら、歩きでいいや疲れるし、とばかりにスタスタと歩きだす
〈君…もしかして心読める人?〉
不意な言葉に咄嗟に振り向いてしまった。
『あああ!しまった』
男は綺麗な顔を歪ませて、ひどく邪悪な顔で微笑んでいる。
〈じゃあ、僕がさっきのお店で考えてたことも知ってるんだね…美味しそうな女性がいたこととか…〉
朱生は体が動かなかった。本能的な恐怖。
この男の秘密を知った自分は、食われてしまうんだろうか…。
次の瞬間男の顔が元の美しい顔に戻り、ゆっくりと近づいてきた。
そして目の前に立って、ちい~さな声で
「君のことは食べないよ…本当に一目惚れなんだ…」
真摯な顔で告られた。
「…ぅえ?」
『変な声出たわ』
「僕とお付き合いしてください」
右手を出して少し頭を下げてくる男に、やっと一歩後ろに下がれた朱生はもうとっさに
「ごめんなさい」
と深く頭を下げて、今度こそ走って駅へ向かった。
『追ってくるなら何度でもごめんなさいしてやる。やるけど、告って断られたらな、身を引くのが男ってもんだぞ』
もう、何を考えてるのか自分でもわからない。が、今度は男は追いかけてこなかった。
「はあ…よかった。文系男子を走らすなよ…はぁ…」
息を切らせて歩き始め、いったいなんだったんだよ…と考えながら駅へと到着
『あんなのがもっといるんだろうか…俺は食わないらしいけど、それはあいつが俺を気に入ってくれたからであって、そうじゃないやつに会っちゃったら俺も…』
世の中にはゾッとするようなことがあるとは思っていたけど、まさか自分が体験するなんて思っていなかった。
まして人を食う化け物に出会うなんて…。この能力を持ち始めた頃のような…人混みにいるのが怖い感情が湧いてきた。
駅を見ると人が沢山いる。
『この中にもあんな化け物がいるのかも…』
「いるよぉ~~?もっと怖いのもいる」
後ろから言われて再び体が硬直してしまう。さっきの男の声だ。
「僕もね、人の心の声聞こえてきちゃうんだ。でもね、それはオフできるなら普段はやめといた方がいい。っていうか、使わない方が色々身のためってわかってるでしょ」
振り向くと、イケメンが優しく笑っている。
「僕は君に危害を加えないから、本当に安心して。だって君は…不味そうだからさあ」
と言われた途端、朱生の意識が遠のいた。
『あれ…何、急に眠…あれ…』
男は朱生を抱き止めて、お姫様抱っこをすると駅とは反対方向へと歩き出す。
「君はね。僕みたいなやつらに…目をつけられやすいんだよ。僕のそばにいるのが1番だから。愛してるよ」
「だからってぶっ飛びすぎだろ!!!」
目が覚めてからの自分のありように、朱生は起きて10秒で叫んでいた。
「どこだよここは!」
「僕ん家」
「なんでお前ん家に俺がいなきゃなんだよ!帰せ!」
目の前に裸でのしかかられている方が問題なんだろうけど、とにかくこの場から逃れたいのだろう。
「ここまで来てつれないこと言うなよ」
頬にチュっとされて、ーいいいいっーーという声が出てしまう
『食われる食われる食われる』
「だからぁ君は食べないってばぁ」
「おおお俺は食べなくても、ほほほ他の人はたたた食べたりするのか…⁉︎」
「ん~勝手に食べられないんだよね。命令がないと」
「命令?」
「それ以上は言えな~い」
言えな~いじゃねーんだよ!と言おうとして、自分も素っ裸であることに朱生はようやく気づいた。
「はああ?」
ベッドの上、素っ裸、2人して布団の中、のしかかられてる………
「何しようとしてる…?」
「エッチなこと」
イケメンが微笑むと壮絶だな…しかも言ってることが俗っぽすぎる
「俺は女の子が好きなんだ…けど…も?」
「またまた~嘘言っても僕にはわかるよ。君ゲイじゃん」
壮絶な笑みが輪をかけて壮絶になった、いっそ眩しい。って!化け物の口からゲイって!ゲイってあなたたちの世界にもいるの?
もうわけわかんない思考しかできなくなっている。
「僕はね、女の子相手だとぉ食べかねないって禁止されてるんだよね~酷いよね。でもゲイだったから大丈夫だった」
あは~って笑うけども…
「あは~じゃねーよ。いや、俺もそうだけど。当てられちゃったけれども。でも今日会って今日こう言うのは俺はどうかと思うんだよね」
ん~~と男は考えてる。
「あそうだ、僕は瑠衣と言います。よろしくね」
「あ、俺は朱生です。よろしく…しねーよ?なんで自己紹介?」
「だってお互い呼び合うのに不便でしょ?」
呼び合わないので不便じゃないです。と言おうとした口はキッスで塞がれてしまった。
「ん~ん~!!!」
「あ~食べないから、大丈夫、落ち着いて」
頭撫でられても、恐怖感は拭えない。
「僕筋張った男は食べないから。こんなスジスジしたのはさ、噛むのに大変なんだよ。運動しないで柔らかくなったらわかんないけど~」
『ジムに入会してやる!』
「ね…」
瑠衣が急に真顔になって、顔を詰めてきた。
「そろそろいいかな…?僕は君を食べない。約束する」
『イケメンの真顔も壮絶だ…』
「う…ぅん…」
「だからエッチしよ」
なんだか自分でスターター鳴らして始めるのは卑怯な気がするけど、瑠衣はそれを機に唇を合わせ舌を絡めてくる。
「んっ…ん…ちゅ」
朱生の顔の脇に肘をついて頭を抱え、何度も角度を変えてキスをした。
『何俺は受けてるんだよ。食べられない安心感で身を任せてるんじゃねえよ…にしても感じるキスするなぁ…』
もうなんでも良くなった。気持ちいいはどんな感情も押し流すんだと今知った。
「いい…?」
「好きにしろよ…」
掠れた声もいいなあ…とささやかれ、首筋から唇を這わせられその度にちゅっちゅっと音を立てるのに、少し感じる。
乳首を吸われて思わず漏れる声も、ー可愛い…ーと言ってくれる
『何こいつ…色々うますぎねえか…』
「あ…」
『あ…じゃねえよ俺もさ。でも。まじで…だめだ集中しよ』
瑠衣が朱生自身を咥え、唇で扱いた。
「じゅ…ジュル…んっ…意外とおおき…ん…」
わざと音を立てるように舐めあげながら、バックの方も指で解し始める。
「んっうっ…あっあっぁっ」
前を攻められ、バックを解されで、意識はもうすでに飛んでいた。
「はあ…あっあんぅ」
腰がくねってなんだかおねだりしているような素振りに、瑠衣が嬉しそうに笑って
「こんなに感じてくれるなんて思ってなかった…ほんと嬉しいよ。僕の目に狂いはなかったなぁ、もっと感じて」
再び咥えて、自ら喉の奥の方へ導き
「うっぅあ…それ…」
その深い感覚に朱生のものも大きく、そして固くなってゆく
「んぅっ…はぁ…中でおおきくされちゃったよ」
笑って瑠衣は先の方に舌を這わせ、溢れてくる液体をなめとっては味わい出した。
「美味しい…何よりも美味しい」
先を少しだけ咥えてちゅと軽く吸い上げたり、穴の部分に舌を這わせたりされて
「あっんぅっそれ…だ…m…あぁうぅ」
もう言葉にならない声をあげて、朱生は身を捩る
「僕、もう我慢できないからさ…いくね…」
朱生の両足を抱え込んで、膝を曲げて折るとその間に自らを差し込みゆっくりと中へと入ってゆく
「んふぅぅあぁぁ…」
ゆったりと朱生の声が漏れ、それに満足そうに瑠衣も奥まで納めた。
「気持ちいい…朱生の中…すごくいい…あぁ…いい」
静かに腰を揺らして中を堪能するように擦り始める
朱生もその感覚に声が漏れ、腰を振って答えると瑠衣の動きが速くなる。
音を立てて当てて、激しくなってゆく動きに朱生の声も高く上がり、それが嫌と言うよりは快感に溺れ、激しく体を揺すられる感覚に酔ってゆく。
「あっあああっ いいっきもちいいっはっあぁいいっいい」
枕に頭を押し付けて、左右に振りながら声を上げる朱生が瑠衣は愛しかった。
自分が言ったように本当に一目惚れだった。まさかこんなに速く展開しようとも実は考えていなかったが、悟り能力と知って、自分の気持ちの伝わりが早かったのもあり、強引に推し進めてしまった。
「いいね…僕も気持ちいいよ…朱生…ほんと好き、可愛い」
化け物だとしても、今そんなこと言われるとそれなりに嬉しい。こんなに愛されるのも初めてだ。
「る…い…」
「名前呼んでくれたの…?めっちゃ嬉しい」
愛おしそうに髪を撫でて、奥深くまで刺さったものを一旦止める。
「この奥…ついちゃってるね…その感じてる顔すごく可愛い。もう一回呼んで?」
「る…い…瑠衣」
「うん、瑠衣だよ」
「あぅあああっ」
即座に動きを速め、可愛い人もイけるように手を添えた。
「朱生…しゅ…ぅ、あっ気持ちいい、朱生の中気持ちいい」
「はっ…はぁ、はぁ…あぁ…おれ…もいっ…いぃあっあっ」
「イこ…一緒にいけるかな…僕はも…ぉだめ…ああいく…あ」
腰の動きをより激しくして、瑠衣はお互いを導いてゆく。
「あっあぁっる…ぃあっああっいくっいっkっ…ん~~~」
朱生の体が止まり、持たれたものからほとばしった。それとほぼ同時に瑠衣も体を反らせて朱生の中へと放っていった。
ふと目を覚ますと、1人ふかふかなベッドに寝ていた。
夢でも見た…にしては自分のベッドはこんなふかふかじゃあないな、と思い直し起き上がってみる。
体は妙にさっぱりしていて、拭われていたようだ。
「それにしても…」
部屋を見回すと、明らかに寝室なんだろうが広い。思わず独り言が出てしまうほどには広かった。
「なんだここ…」
ベッドから降りて、この場所くらいはわかるかな…と窓に寄り外を見てみる。
もう夜ではあったが夜景が眩しいほどに輝いていて、しかも目の前に東京タワーが立っていた。
「え…超都心じゃん…なんっだここ!」
田舎から出てきて東京タワーの見学には来たことがあったし、遠くからでも見えるから誰でも知ってるもの、だがこの周りに住むなんて事は1mmも考えられることではなかった。
『ちょっ…あいつ何者…本当に人間なのか…だとしても、こんなところに住んでるやつってまともなはずが…(偏見)』
部屋を見渡すと当たり前だがドアがあって、一瞬逃げようとも思ったが今日1日のことを考えると無理だろうなと思い、多分あのドアの向こうにいるだろうからとドアへ向かった。
ドアの向こうも広いリビングダイニングとなっていて、そのリビングで瑠衣は豪奢なソファに座りお茶を飲んでいる。
「起きたんだね、良く寝てたよ。疲れてたのかな」
もう一つ用意してあったカップに紅茶を注いで、ここにおいでとソファを示した。
学校の展覧会と論文で眠れない日が続いていたのは事実だが、知らない人に抱かれてそのまま寝入るほど自分はうつけ者だったろうか…とちょっと嫌になる。
「おうちの方と一緒に住んでるなら連絡したほうがいいよ」
ソファに座った朱生にクッキーの乗った小皿を勧めて、ちょっと甘いものたべてて。と立ち上がってゆく。
幸か不幸か一人暮らしなのでその心配はないが…。
『人外の割に気を使うな…』
などと思いながら、確かに甘いもの一つくらいはいけそうだ。
しかしそう言われて時間が気になった。
スマホは見当たらない…部屋の時計は…と見回すと壁際に置かれたキャビネットの上にデジタルの時計が置かれていて時間が23時。
はぁ…本当良く寝ていたようだな…だってあのカフェにいたのはお昼ちょっとすぎくらいだったから…
「すごい部屋だけど…立地といい中身といい」
「ああ、ここ?まあ…それなりに稼ぎがあるし、場所柄便利なんだよ」
この人についてはあまり詳しいこと聞かないほうがいいと本能が言っていた。
「取り敢えずこれしかなかったから、重いかもだけど少しでも食べてね」
インスタントではあったがパスタを持ってきてくれて、そういえば空腹…と気づいた。
「いただきます」
手を合わせてパスタを口にする。
瑠衣はそれをニコニコと正面から見ている。
「あの…食べ終わったら帰る…から」
知らぬ間に連れてこられたのではあるが、まさか初めて来た家に泊まるわけにも行かないし、今後のお付き合いは見合わせたいので…の気持ちを込めて言ってみた。
「え~?泊まって行きなよぉ。もっと…しようよ」
まあそうなるよね…そんな熱い目で見ないで…
「いや、そう言う訳には…」
瑠衣は朱生の隣に移動してきて、朱生の後ろ側のソファに肩を組むように手をかけた。
「僕を人外って言うなら…サトリの君も…そうなるよね」
おいた手で髪を触ってくる。
え…っと一瞬固まった…そうなるのか?だからこいつの声が見ていなくても入ってくるのか…。自分の立場が揺らいだ。人外…
「僕はね異食者って言うんだって。異食症って言う病気?があるけど、あれって食べ物じゃない物を食べる障害。僕はね…」
「いいっ言わないでいいっ。聞かせないで」
皿を置いて耳を塞ぐ。
「詳しい事は聞きたくない。聞かせないでほしい。今までの生活がしたいんだ帰してくれ」
耳を塞いで目を瞑ってしまった朱生の肩を抱きしめて、
「解った、言わないよ。それに今までの生活にもちゃんと戻れるから安心してよ。そこに僕が加わるだけだから…」
「あんたも要らないんだよ…」
正直な気持ちを言うしかない現状で、朱生はちゃんと顔を見て伝えた。
その言葉に瑠衣は少し寂しそうな顔はしたが、朱生の肩を引っ張り自分も顔を寄せ、ケチャップで濡れた唇をペロリと舐めると
「無理…」
と笑った
「だって僕は君に恋しちゃったんだもん。しかも…身体も貰っちゃったし」
また壮絶な笑みをする。
「えっあ…いや、あれは」
受けてしまった以上反論の余地がない。
「君の今までの生活に、僕を入れて…?恋人にしてほしいよ」
「さっきごめんなさいした…」
小さな反抗
「でも、受け入れてくれたよ?」
半ば無理やりじゃねえかよ…とは思ってみるが…
「じ…じゃあ…お友達から…」
そう言われて、瑠衣の顔が綻んだ。
「嬉しい…ありがとう!」
朱生をギュッと抱きしめて
「セフレからよろしく」
ああ~~そうなっちゃうか~~と後悔しても遅かった。
「ね、早く食べて。またしようよ~早く食べて~」
今の朱生には、わざとゆっくり食べるしか反抗のしようがなかった…
そんな声が頭に響いてきて、朱生は周りを見た。
小さい時に車にぶつかられる事故に遭い、その時から何故か人の心の声が聞こえるようになってしまっていた。
小さい頃はうるさいほどの声が頭に響いてきて、外に出られなくなって登校拒否にもなったが、小学校高学年になる頃にはなんとかコントロールができるようになり、大学生の今では、全てスイッチオフにもできるし、自分が目にしている人物のみの声だけ聞くなんて言うことも出来るようになっていた。
『俺、いま誰か見てたっけ…』
課題が多い美大生の朱生は、この年末は明けた1月20日の展示会用の絵と、論文に追われて絶賛睡眠不足だったこともあり、このカフェへも眠気覚ましとうたた寝の両方の意味で滞在している。
なのになんとな~く見ていた店内で、無意識に見ていたらしい人からの妙な言葉にうんざりした。
『女美味そうって、露骨なやつだな…』
どいつだ…と思って視線を巡らせると、1番目につきやすい場所に窓へ向かって座っている1人の男が目に入る。
その男は男の自分から見ても綺麗な男で、染めているのか地毛なのか綺麗な栗色の髪をしており、少し長めな前髪は横で立ち上げてかき上げる仕草が似合いそうなかんじで顔を半分隠していた。
『あの栗色は目指したけど無理だったなぁ。地毛かなぁいいな…』
と軽く自分の栗色もどきの髪を混ぜ、まっすぐですっとんとんな髪質にも腹が立つ。
『しかしあいつ…女には不自由してなさそうなルックスだけどなぁ…』
そしてまた何の気なしのその人物を見てると、
〈右のはダメだな。筋張ってそうで俺の好みじゃない。大体歯に挟まりそうな肉質っぽくてなぁ〉
『ん?歯?』
〈やっぱり窓際の女がいいな。柔らかそうだし、噛み応えも良さそうだし〉
『なんだ?妙なプレイが好きな変態さんかな…』
なかなか面白いこと考えるやつだなと思いながらも、その思考の内容が少し気味が悪く、その男から目を逸らしそろそろ出ようかな、などと考えてるとその思考が無遠慮に頭へ流れ込んできて
〈あ…〉
という、短い音でその後に
〈可愛い…〉
『可愛い?』
は?と思って、関わりたくはなかったが、チラッとだけそいつを見て見ようと目だけをちょっと向けてみたら、目が合った。
『うっ、俺?俺みてる?』
目線を外して、もうやだ…とばかりにリュックを握って店を出ようと立ち上がった時、その男も立ち上がり、慌てて座り直すと男も座るという状況を目の当たりにし
『やっぱ俺なんか~い』
ヤケで男を睨んでやる。
男はニコニコして朱生を見つめ
〈これは食用じゃない。愛でるよう♪〉
なんてことを考えているのが聞こえてきた。
『食用じゃない…?って!さっきの女子たちはやっぱ食用だった⁉︎⁉︎⁉︎』
ゾッとする。食用ってなんだよ、こえええよ。
そのまま勢いでリュックを引っ掴み足早に店内を抜けると店を出た。
『何あいつ何あいつ、人喰い?怖い怖いなになに、人間?なに?』
なんでもいいからあいつのいる場所から離れたくて、半ば走るように街を抜け学校へむかうため駅へ向かう。
このまま家になんか帰れなかった。この話も誰かにしたいし、もしかしたらもっとたくさんあんなのがいるかもしれない。
情報を、情報を…とほんとうに足早に、なんなら走るように(2度目)歩いていた朱生の後ろから、めちゃくちゃ呑気な声で
「あのぉ~」
と話しかけてくる人がいた。
『は?なに?俺の状況見えてないすか?急いでるんすよ。話しかけないで、少しでも遠くへ行きたいんだからさ』
と思いながら、
「アンケートも勧誘も要らないです。急いでるので邪魔しないでください」
そう言って話しかけてきた人物を見て、朱生は
「うひゃあっ」
という、なんとも表現しにくい声を上げてしまう。
『なっなに…』
そこにいたのは先ほどの栗毛美青年(仮)
「え…あ…なんです…か」
立ち止まって、美青年に対峙する。顔はもちろん見られない。
こわい…俺は食っても美味くないよ、不味いよ
「あのさ、お茶でもしませんか?」
は?俺にお茶飲ませてなんか薬でも入れて食う気だろ!
〈可愛いなぁ。好みドストライクだ…これは食えないなぁ愛でたいなあ〉
『めでたいって なにがおめでたいんだよ!てか俺は食用じゃねえの?めでたい対象なのか?』
「たった今飲んでたのでいらないっす。俺急ぐのでそれでは」
〈あ、そういえばそうか。失敗失敗。それにしても愛でたい愛でたい。可愛い。ドストライクだ。なんならこのまま〉
『このままなんだー!』
「さっきからめでたいめでたいってなんなんすか!正月っすか?」
「え?俺めでたいなんて言いましたっけ…?」
『しまった!』
「あ…いや…あ~言ってましたよ。めでたいって」
〈え~心の声漏れちゃってたのかな。お正月?なにそれ、かわいい~~〉
「あ、そうだった?ごめんなさい。愛でたいっておめでたいじゃなくて、愛って漢字を使う方の愛でたいだよ」
「え?ああ~~そっちか…って!!どっちにしろなんなんですかね!俺急ぐんで」
『やべーやべー心の声が出ちゃったのはこっちだよ!上手く誤魔化せたかな、よかった。それにしたって関わっていたらやばいに代わり無いからな、ソッコーここから離脱しなきゃ』
「そうなんですか~?残念だな。僕は君が気に入っちゃって。どこに行ったら会えるかな」
〈こんな好みの人に会えるなんて中々無いからなぁ~手放さないぞ~〉
『手放してくれよ!大体あんた人間じゃねえじゃねえかよ』
「いや、初対面でそう言われても答える訳ないでしょ。やめてくださいこの場でさよなら、じゃ」
朱生は全力で走り出した。
駅まで行けば、なんとかなるだろう。
「ねえ~教えてよぉ~」
「はあ?」
男は朱生の全力疾走にも普通に歩く感じで追いついてきて並走してくる
「やっぱお前人間じゃないだろ!!!」
もうなんでもいいや、声に出ちゃったっていい、とにかく関わりたくない
「やだな、僕は人間だよ?本当に人間だってば。見ての通り」
朱生は足を止めて男を見た
「人間は全力疾走に、普通は歩いておいつけねえんだよ!俺にかまわないでくれ。好みのやつなんか他で探せ。俺以外のな!」
もう走っても何しても追い付かれるのなら、歩きでいいや疲れるし、とばかりにスタスタと歩きだす
〈君…もしかして心読める人?〉
不意な言葉に咄嗟に振り向いてしまった。
『あああ!しまった』
男は綺麗な顔を歪ませて、ひどく邪悪な顔で微笑んでいる。
〈じゃあ、僕がさっきのお店で考えてたことも知ってるんだね…美味しそうな女性がいたこととか…〉
朱生は体が動かなかった。本能的な恐怖。
この男の秘密を知った自分は、食われてしまうんだろうか…。
次の瞬間男の顔が元の美しい顔に戻り、ゆっくりと近づいてきた。
そして目の前に立って、ちい~さな声で
「君のことは食べないよ…本当に一目惚れなんだ…」
真摯な顔で告られた。
「…ぅえ?」
『変な声出たわ』
「僕とお付き合いしてください」
右手を出して少し頭を下げてくる男に、やっと一歩後ろに下がれた朱生はもうとっさに
「ごめんなさい」
と深く頭を下げて、今度こそ走って駅へ向かった。
『追ってくるなら何度でもごめんなさいしてやる。やるけど、告って断られたらな、身を引くのが男ってもんだぞ』
もう、何を考えてるのか自分でもわからない。が、今度は男は追いかけてこなかった。
「はあ…よかった。文系男子を走らすなよ…はぁ…」
息を切らせて歩き始め、いったいなんだったんだよ…と考えながら駅へと到着
『あんなのがもっといるんだろうか…俺は食わないらしいけど、それはあいつが俺を気に入ってくれたからであって、そうじゃないやつに会っちゃったら俺も…』
世の中にはゾッとするようなことがあるとは思っていたけど、まさか自分が体験するなんて思っていなかった。
まして人を食う化け物に出会うなんて…。この能力を持ち始めた頃のような…人混みにいるのが怖い感情が湧いてきた。
駅を見ると人が沢山いる。
『この中にもあんな化け物がいるのかも…』
「いるよぉ~~?もっと怖いのもいる」
後ろから言われて再び体が硬直してしまう。さっきの男の声だ。
「僕もね、人の心の声聞こえてきちゃうんだ。でもね、それはオフできるなら普段はやめといた方がいい。っていうか、使わない方が色々身のためってわかってるでしょ」
振り向くと、イケメンが優しく笑っている。
「僕は君に危害を加えないから、本当に安心して。だって君は…不味そうだからさあ」
と言われた途端、朱生の意識が遠のいた。
『あれ…何、急に眠…あれ…』
男は朱生を抱き止めて、お姫様抱っこをすると駅とは反対方向へと歩き出す。
「君はね。僕みたいなやつらに…目をつけられやすいんだよ。僕のそばにいるのが1番だから。愛してるよ」
「だからってぶっ飛びすぎだろ!!!」
目が覚めてからの自分のありように、朱生は起きて10秒で叫んでいた。
「どこだよここは!」
「僕ん家」
「なんでお前ん家に俺がいなきゃなんだよ!帰せ!」
目の前に裸でのしかかられている方が問題なんだろうけど、とにかくこの場から逃れたいのだろう。
「ここまで来てつれないこと言うなよ」
頬にチュっとされて、ーいいいいっーーという声が出てしまう
『食われる食われる食われる』
「だからぁ君は食べないってばぁ」
「おおお俺は食べなくても、ほほほ他の人はたたた食べたりするのか…⁉︎」
「ん~勝手に食べられないんだよね。命令がないと」
「命令?」
「それ以上は言えな~い」
言えな~いじゃねーんだよ!と言おうとして、自分も素っ裸であることに朱生はようやく気づいた。
「はああ?」
ベッドの上、素っ裸、2人して布団の中、のしかかられてる………
「何しようとしてる…?」
「エッチなこと」
イケメンが微笑むと壮絶だな…しかも言ってることが俗っぽすぎる
「俺は女の子が好きなんだ…けど…も?」
「またまた~嘘言っても僕にはわかるよ。君ゲイじゃん」
壮絶な笑みが輪をかけて壮絶になった、いっそ眩しい。って!化け物の口からゲイって!ゲイってあなたたちの世界にもいるの?
もうわけわかんない思考しかできなくなっている。
「僕はね、女の子相手だとぉ食べかねないって禁止されてるんだよね~酷いよね。でもゲイだったから大丈夫だった」
あは~って笑うけども…
「あは~じゃねーよ。いや、俺もそうだけど。当てられちゃったけれども。でも今日会って今日こう言うのは俺はどうかと思うんだよね」
ん~~と男は考えてる。
「あそうだ、僕は瑠衣と言います。よろしくね」
「あ、俺は朱生です。よろしく…しねーよ?なんで自己紹介?」
「だってお互い呼び合うのに不便でしょ?」
呼び合わないので不便じゃないです。と言おうとした口はキッスで塞がれてしまった。
「ん~ん~!!!」
「あ~食べないから、大丈夫、落ち着いて」
頭撫でられても、恐怖感は拭えない。
「僕筋張った男は食べないから。こんなスジスジしたのはさ、噛むのに大変なんだよ。運動しないで柔らかくなったらわかんないけど~」
『ジムに入会してやる!』
「ね…」
瑠衣が急に真顔になって、顔を詰めてきた。
「そろそろいいかな…?僕は君を食べない。約束する」
『イケメンの真顔も壮絶だ…』
「う…ぅん…」
「だからエッチしよ」
なんだか自分でスターター鳴らして始めるのは卑怯な気がするけど、瑠衣はそれを機に唇を合わせ舌を絡めてくる。
「んっ…ん…ちゅ」
朱生の顔の脇に肘をついて頭を抱え、何度も角度を変えてキスをした。
『何俺は受けてるんだよ。食べられない安心感で身を任せてるんじゃねえよ…にしても感じるキスするなぁ…』
もうなんでも良くなった。気持ちいいはどんな感情も押し流すんだと今知った。
「いい…?」
「好きにしろよ…」
掠れた声もいいなあ…とささやかれ、首筋から唇を這わせられその度にちゅっちゅっと音を立てるのに、少し感じる。
乳首を吸われて思わず漏れる声も、ー可愛い…ーと言ってくれる
『何こいつ…色々うますぎねえか…』
「あ…」
『あ…じゃねえよ俺もさ。でも。まじで…だめだ集中しよ』
瑠衣が朱生自身を咥え、唇で扱いた。
「じゅ…ジュル…んっ…意外とおおき…ん…」
わざと音を立てるように舐めあげながら、バックの方も指で解し始める。
「んっうっ…あっあっぁっ」
前を攻められ、バックを解されで、意識はもうすでに飛んでいた。
「はあ…あっあんぅ」
腰がくねってなんだかおねだりしているような素振りに、瑠衣が嬉しそうに笑って
「こんなに感じてくれるなんて思ってなかった…ほんと嬉しいよ。僕の目に狂いはなかったなぁ、もっと感じて」
再び咥えて、自ら喉の奥の方へ導き
「うっぅあ…それ…」
その深い感覚に朱生のものも大きく、そして固くなってゆく
「んぅっ…はぁ…中でおおきくされちゃったよ」
笑って瑠衣は先の方に舌を這わせ、溢れてくる液体をなめとっては味わい出した。
「美味しい…何よりも美味しい」
先を少しだけ咥えてちゅと軽く吸い上げたり、穴の部分に舌を這わせたりされて
「あっんぅっそれ…だ…m…あぁうぅ」
もう言葉にならない声をあげて、朱生は身を捩る
「僕、もう我慢できないからさ…いくね…」
朱生の両足を抱え込んで、膝を曲げて折るとその間に自らを差し込みゆっくりと中へと入ってゆく
「んふぅぅあぁぁ…」
ゆったりと朱生の声が漏れ、それに満足そうに瑠衣も奥まで納めた。
「気持ちいい…朱生の中…すごくいい…あぁ…いい」
静かに腰を揺らして中を堪能するように擦り始める
朱生もその感覚に声が漏れ、腰を振って答えると瑠衣の動きが速くなる。
音を立てて当てて、激しくなってゆく動きに朱生の声も高く上がり、それが嫌と言うよりは快感に溺れ、激しく体を揺すられる感覚に酔ってゆく。
「あっあああっ いいっきもちいいっはっあぁいいっいい」
枕に頭を押し付けて、左右に振りながら声を上げる朱生が瑠衣は愛しかった。
自分が言ったように本当に一目惚れだった。まさかこんなに速く展開しようとも実は考えていなかったが、悟り能力と知って、自分の気持ちの伝わりが早かったのもあり、強引に推し進めてしまった。
「いいね…僕も気持ちいいよ…朱生…ほんと好き、可愛い」
化け物だとしても、今そんなこと言われるとそれなりに嬉しい。こんなに愛されるのも初めてだ。
「る…い…」
「名前呼んでくれたの…?めっちゃ嬉しい」
愛おしそうに髪を撫でて、奥深くまで刺さったものを一旦止める。
「この奥…ついちゃってるね…その感じてる顔すごく可愛い。もう一回呼んで?」
「る…い…瑠衣」
「うん、瑠衣だよ」
「あぅあああっ」
即座に動きを速め、可愛い人もイけるように手を添えた。
「朱生…しゅ…ぅ、あっ気持ちいい、朱生の中気持ちいい」
「はっ…はぁ、はぁ…あぁ…おれ…もいっ…いぃあっあっ」
「イこ…一緒にいけるかな…僕はも…ぉだめ…ああいく…あ」
腰の動きをより激しくして、瑠衣はお互いを導いてゆく。
「あっあぁっる…ぃあっああっいくっいっkっ…ん~~~」
朱生の体が止まり、持たれたものからほとばしった。それとほぼ同時に瑠衣も体を反らせて朱生の中へと放っていった。
ふと目を覚ますと、1人ふかふかなベッドに寝ていた。
夢でも見た…にしては自分のベッドはこんなふかふかじゃあないな、と思い直し起き上がってみる。
体は妙にさっぱりしていて、拭われていたようだ。
「それにしても…」
部屋を見回すと、明らかに寝室なんだろうが広い。思わず独り言が出てしまうほどには広かった。
「なんだここ…」
ベッドから降りて、この場所くらいはわかるかな…と窓に寄り外を見てみる。
もう夜ではあったが夜景が眩しいほどに輝いていて、しかも目の前に東京タワーが立っていた。
「え…超都心じゃん…なんっだここ!」
田舎から出てきて東京タワーの見学には来たことがあったし、遠くからでも見えるから誰でも知ってるもの、だがこの周りに住むなんて事は1mmも考えられることではなかった。
『ちょっ…あいつ何者…本当に人間なのか…だとしても、こんなところに住んでるやつってまともなはずが…(偏見)』
部屋を見渡すと当たり前だがドアがあって、一瞬逃げようとも思ったが今日1日のことを考えると無理だろうなと思い、多分あのドアの向こうにいるだろうからとドアへ向かった。
ドアの向こうも広いリビングダイニングとなっていて、そのリビングで瑠衣は豪奢なソファに座りお茶を飲んでいる。
「起きたんだね、良く寝てたよ。疲れてたのかな」
もう一つ用意してあったカップに紅茶を注いで、ここにおいでとソファを示した。
学校の展覧会と論文で眠れない日が続いていたのは事実だが、知らない人に抱かれてそのまま寝入るほど自分はうつけ者だったろうか…とちょっと嫌になる。
「おうちの方と一緒に住んでるなら連絡したほうがいいよ」
ソファに座った朱生にクッキーの乗った小皿を勧めて、ちょっと甘いものたべてて。と立ち上がってゆく。
幸か不幸か一人暮らしなのでその心配はないが…。
『人外の割に気を使うな…』
などと思いながら、確かに甘いもの一つくらいはいけそうだ。
しかしそう言われて時間が気になった。
スマホは見当たらない…部屋の時計は…と見回すと壁際に置かれたキャビネットの上にデジタルの時計が置かれていて時間が23時。
はぁ…本当良く寝ていたようだな…だってあのカフェにいたのはお昼ちょっとすぎくらいだったから…
「すごい部屋だけど…立地といい中身といい」
「ああ、ここ?まあ…それなりに稼ぎがあるし、場所柄便利なんだよ」
この人についてはあまり詳しいこと聞かないほうがいいと本能が言っていた。
「取り敢えずこれしかなかったから、重いかもだけど少しでも食べてね」
インスタントではあったがパスタを持ってきてくれて、そういえば空腹…と気づいた。
「いただきます」
手を合わせてパスタを口にする。
瑠衣はそれをニコニコと正面から見ている。
「あの…食べ終わったら帰る…から」
知らぬ間に連れてこられたのではあるが、まさか初めて来た家に泊まるわけにも行かないし、今後のお付き合いは見合わせたいので…の気持ちを込めて言ってみた。
「え~?泊まって行きなよぉ。もっと…しようよ」
まあそうなるよね…そんな熱い目で見ないで…
「いや、そう言う訳には…」
瑠衣は朱生の隣に移動してきて、朱生の後ろ側のソファに肩を組むように手をかけた。
「僕を人外って言うなら…サトリの君も…そうなるよね」
おいた手で髪を触ってくる。
え…っと一瞬固まった…そうなるのか?だからこいつの声が見ていなくても入ってくるのか…。自分の立場が揺らいだ。人外…
「僕はね異食者って言うんだって。異食症って言う病気?があるけど、あれって食べ物じゃない物を食べる障害。僕はね…」
「いいっ言わないでいいっ。聞かせないで」
皿を置いて耳を塞ぐ。
「詳しい事は聞きたくない。聞かせないでほしい。今までの生活がしたいんだ帰してくれ」
耳を塞いで目を瞑ってしまった朱生の肩を抱きしめて、
「解った、言わないよ。それに今までの生活にもちゃんと戻れるから安心してよ。そこに僕が加わるだけだから…」
「あんたも要らないんだよ…」
正直な気持ちを言うしかない現状で、朱生はちゃんと顔を見て伝えた。
その言葉に瑠衣は少し寂しそうな顔はしたが、朱生の肩を引っ張り自分も顔を寄せ、ケチャップで濡れた唇をペロリと舐めると
「無理…」
と笑った
「だって僕は君に恋しちゃったんだもん。しかも…身体も貰っちゃったし」
また壮絶な笑みをする。
「えっあ…いや、あれは」
受けてしまった以上反論の余地がない。
「君の今までの生活に、僕を入れて…?恋人にしてほしいよ」
「さっきごめんなさいした…」
小さな反抗
「でも、受け入れてくれたよ?」
半ば無理やりじゃねえかよ…とは思ってみるが…
「じ…じゃあ…お友達から…」
そう言われて、瑠衣の顔が綻んだ。
「嬉しい…ありがとう!」
朱生をギュッと抱きしめて
「セフレからよろしく」
ああ~~そうなっちゃうか~~と後悔しても遅かった。
「ね、早く食べて。またしようよ~早く食べて~」
今の朱生には、わざとゆっくり食べるしか反抗のしようがなかった…
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