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1章
3話 ※R18
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※事後描写
偶然だそうだ。
偶然、俺がピエロの姿で店の宣伝をしているのを見たらしい。俺の道化の姿をいたく気に入って、外に出るたび、人だかりを見るたび探したと。
そして偶然、化粧を落とした俺を知って、偶然、俺の通う大学を知って、偶然、俺の住む家を見つけたらしい。何を白々しい、と睨めばスノウは嬉しそうに頬を染める。気持ちが悪いったら、ない。
「君がさ、警察に突き出すとか、今後一切関わるなとか、冷たいことを言うから。こうするしか無いんだよね」
俺は今、裸だった。
裸で、両腕は頭上に上げる形で拘束されて、足は淫売の様に大きく開かされている。体のあちこちに噛み跡と鬱血痕が散らばって、股間は考えるのも悍ましいほどの液体で塗れていた。
ごぽ、と後孔から白濁が溢れる感触がする。気持ち悪い。気持ち悪いのに、その瞬間にシャッター音が切られる。
「綺麗、綺麗だよヴェローナ」
どこがだ。こんなぐちゃぐちゃで。そう言いたいのに、咥えさせられたタオルが邪魔をする。
「ふふ、こぼしちゃったね」
携帯を構えたスノウが片手で俺の後孔に触れる。周囲をなぞって、押し込んで、外に出たのを中に戻している感覚。気持ち悪い。いっそ嘔吐したかったが、口を塞がれている状態では窒息するのが関の山で、喉までせぐり上げていたものを必死に飲み込んだ。
顔を逸らす。切られるシャッターとフラッシュから逃げる様に。しかしすぐに顎を捉えられ、正面を向かされる。目の据わったスノウが、形だけ笑顔に歪めて、またフラッシュを焚く。
「カメラ目線もらっちゃった……ふふ」
顔から手が離れる。白濁が俺の頬とスノウの指の間にねとりと橋を作り、千切れていく。鳥肌が止まらない。
スノウがベッドから立ち上がる。その足でパソコンの置かれたデスクに向かって、携帯と接続した。きっと今からさっき撮った写真を現像するんだろう。周囲にこれでもかと貼られた自分の写真を見渡す。
眼鏡を取られたせいでそう広い範囲が見えるわけでは無いが、そのほとんどがカメラを向いていない。所謂隠し撮りの画角だ。当たり前だ。俺は写真が嫌いだった。撮られそうになるといつもローガンの影に隠れた。それがこんな悍ましい枚数に膨れ上がるほど、スノウに見られていたのだろう。
「見て、ヴェローナ」
目の前に一枚の写真が差し出される。どろどろの俺が大股開いて睨んでいる。その体があまりに嫌で、目を逸らした。
「髪、下ろしてる君も可愛いね。ピエロの時はいつも結んでるか被り物してるもんね」
スノウがベッドの縁に腰掛ける。シャツを脱いで、上体が顕になっている。猫背に丸まった背中に背骨の凹凸が突き出している。あまりに骨の気配が強いその姿は死神を彷彿とさせた。
白い顔がこちらを向く。長く白い前髪の隙間から、澱んだ灰色の目がこちらを見つめている。瞳孔という深穴に続く暗がりの様に、どこまでも続く深淵の様な目だ。
不意に白い指が俺の足にかかる。反射的に足が跳ねれば、「何もしないよ」とスノウが形だけ微笑んだ。
足を縛っていたロープが外されていく。順番に腕、猿轡が外され、体が自由になった。
「お疲れ様。もう帰っても良いよ。もちろん、他の誰かに言ったら……、まあ分かってるよね」
にこ、とスノウが微笑んだ。
「……なんで」
「うん?」
「なんで、俺なんだよ」
他にもピエロはいたはずだ。俺より芸が上手い奴も、下手な奴もいたはずだ。俺より美しい奴も、醜い奴もいる。その中からどうして、俺だけがこんな目にあってるんだろう。
「うーん、少し難しいけど……。君が、君が一番……、道化だったからかな」
「……なに?」
「プロ意識をさ、履き違えてるよね。あそこの奴らは。ピエロは普段からピエロだとダメなのに、どいつもこいつもプライベートでも歯見せて笑ってさ……」
スノウの指の中で俺の写真が踊ってる。くるくる、くるくる。踊らされている。
「ナードで、陰気で、卑屈で、愛されてるのに仲間はずれにされてる。そんな君が、一番ピエロとしてちゃんとしてる」
だから好き。ぐ、といつのまにか手を握られている。指が絡まり合って、キツく、キツく握り込まれる。
「ああ、困ったな。なんでそんな可愛いこと聞いたの? そんなこと確かめなくても、僕は君しか見てないのに……」
白いスノウの頬にいっそグロテスクな赤色が滲んでいく。ああ良くない、墓穴を掘った。喉が震える。ベッドの上で思わず後ずさる。手はびくりとも動かない。
「か、帰って、いいって……!」
「ごめん、興奮してきちゃった。ね、もう一回」
「や、やだ、いやだ! 離せよ!」
「うん、うん……可愛いね」
白い影がまた覆い被さってくる。目の端で掠めた時計は午後十時を指していた。
ーーーーーー
結局、あの後俺が解放されたのは日付を回ってしばらく経ってからだった。
実家のベッドの中で丸まって、自分の体を抱きしめる。部屋には段ボールや、着替えに小物が散乱していた。引っ越し作業は依然と進まなかった。進むはずもなかった。スノウに脅されて家を出ると言っただけで、本当は誰も守ってくれない外になんか行きたくなかった。
「ヴェローナ、どうしたの?」
母の声だった。
布団から顔を出して、濁る視界で母を見つめる。眼鏡がなくても、今母がどんな顔をしているかよく分かった。
「学校で何か嫌なことでもあった?」
母がベッドの縁に腰掛けて、掛け布団越しに俺の肩に触れる。俺は小さく首を振った。
「そう、じゃあアルバイトでミスをした?」
首を振った。
「あら、うーんじゃあ……引越がナイーヴ?」
少し悩んで、また首を振った。
「じゃあ、恋のお悩み?」
ふ、と脳裏にスノウの影がよぎる。それを振り払う様に、一際強く首を振った。
「あらそう……、ね。教えてくれないの?」
少し考える。
今ここで、母に全て言ってしまおうか。実はレイプされて、写真も動画も撮られて、それで脅されてるんだって。本当は引っ越しもしたくないし、あの野郎を警察に突き出して二度と豚箱から出れない様にしたいんだって。
掛け布団の中に入っていた携帯が震える。嫌な予感がして、覗き見れば、光る画面に「聞いてるよ」の文字。
「……ごめん、ちょっと。疲れてるだけ。ありがとう、ママ」
母は、納得していない様な、心配そうな顔で曖昧に微笑んだ。
偶然だそうだ。
偶然、俺がピエロの姿で店の宣伝をしているのを見たらしい。俺の道化の姿をいたく気に入って、外に出るたび、人だかりを見るたび探したと。
そして偶然、化粧を落とした俺を知って、偶然、俺の通う大学を知って、偶然、俺の住む家を見つけたらしい。何を白々しい、と睨めばスノウは嬉しそうに頬を染める。気持ちが悪いったら、ない。
「君がさ、警察に突き出すとか、今後一切関わるなとか、冷たいことを言うから。こうするしか無いんだよね」
俺は今、裸だった。
裸で、両腕は頭上に上げる形で拘束されて、足は淫売の様に大きく開かされている。体のあちこちに噛み跡と鬱血痕が散らばって、股間は考えるのも悍ましいほどの液体で塗れていた。
ごぽ、と後孔から白濁が溢れる感触がする。気持ち悪い。気持ち悪いのに、その瞬間にシャッター音が切られる。
「綺麗、綺麗だよヴェローナ」
どこがだ。こんなぐちゃぐちゃで。そう言いたいのに、咥えさせられたタオルが邪魔をする。
「ふふ、こぼしちゃったね」
携帯を構えたスノウが片手で俺の後孔に触れる。周囲をなぞって、押し込んで、外に出たのを中に戻している感覚。気持ち悪い。いっそ嘔吐したかったが、口を塞がれている状態では窒息するのが関の山で、喉までせぐり上げていたものを必死に飲み込んだ。
顔を逸らす。切られるシャッターとフラッシュから逃げる様に。しかしすぐに顎を捉えられ、正面を向かされる。目の据わったスノウが、形だけ笑顔に歪めて、またフラッシュを焚く。
「カメラ目線もらっちゃった……ふふ」
顔から手が離れる。白濁が俺の頬とスノウの指の間にねとりと橋を作り、千切れていく。鳥肌が止まらない。
スノウがベッドから立ち上がる。その足でパソコンの置かれたデスクに向かって、携帯と接続した。きっと今からさっき撮った写真を現像するんだろう。周囲にこれでもかと貼られた自分の写真を見渡す。
眼鏡を取られたせいでそう広い範囲が見えるわけでは無いが、そのほとんどがカメラを向いていない。所謂隠し撮りの画角だ。当たり前だ。俺は写真が嫌いだった。撮られそうになるといつもローガンの影に隠れた。それがこんな悍ましい枚数に膨れ上がるほど、スノウに見られていたのだろう。
「見て、ヴェローナ」
目の前に一枚の写真が差し出される。どろどろの俺が大股開いて睨んでいる。その体があまりに嫌で、目を逸らした。
「髪、下ろしてる君も可愛いね。ピエロの時はいつも結んでるか被り物してるもんね」
スノウがベッドの縁に腰掛ける。シャツを脱いで、上体が顕になっている。猫背に丸まった背中に背骨の凹凸が突き出している。あまりに骨の気配が強いその姿は死神を彷彿とさせた。
白い顔がこちらを向く。長く白い前髪の隙間から、澱んだ灰色の目がこちらを見つめている。瞳孔という深穴に続く暗がりの様に、どこまでも続く深淵の様な目だ。
不意に白い指が俺の足にかかる。反射的に足が跳ねれば、「何もしないよ」とスノウが形だけ微笑んだ。
足を縛っていたロープが外されていく。順番に腕、猿轡が外され、体が自由になった。
「お疲れ様。もう帰っても良いよ。もちろん、他の誰かに言ったら……、まあ分かってるよね」
にこ、とスノウが微笑んだ。
「……なんで」
「うん?」
「なんで、俺なんだよ」
他にもピエロはいたはずだ。俺より芸が上手い奴も、下手な奴もいたはずだ。俺より美しい奴も、醜い奴もいる。その中からどうして、俺だけがこんな目にあってるんだろう。
「うーん、少し難しいけど……。君が、君が一番……、道化だったからかな」
「……なに?」
「プロ意識をさ、履き違えてるよね。あそこの奴らは。ピエロは普段からピエロだとダメなのに、どいつもこいつもプライベートでも歯見せて笑ってさ……」
スノウの指の中で俺の写真が踊ってる。くるくる、くるくる。踊らされている。
「ナードで、陰気で、卑屈で、愛されてるのに仲間はずれにされてる。そんな君が、一番ピエロとしてちゃんとしてる」
だから好き。ぐ、といつのまにか手を握られている。指が絡まり合って、キツく、キツく握り込まれる。
「ああ、困ったな。なんでそんな可愛いこと聞いたの? そんなこと確かめなくても、僕は君しか見てないのに……」
白いスノウの頬にいっそグロテスクな赤色が滲んでいく。ああ良くない、墓穴を掘った。喉が震える。ベッドの上で思わず後ずさる。手はびくりとも動かない。
「か、帰って、いいって……!」
「ごめん、興奮してきちゃった。ね、もう一回」
「や、やだ、いやだ! 離せよ!」
「うん、うん……可愛いね」
白い影がまた覆い被さってくる。目の端で掠めた時計は午後十時を指していた。
ーーーーーー
結局、あの後俺が解放されたのは日付を回ってしばらく経ってからだった。
実家のベッドの中で丸まって、自分の体を抱きしめる。部屋には段ボールや、着替えに小物が散乱していた。引っ越し作業は依然と進まなかった。進むはずもなかった。スノウに脅されて家を出ると言っただけで、本当は誰も守ってくれない外になんか行きたくなかった。
「ヴェローナ、どうしたの?」
母の声だった。
布団から顔を出して、濁る視界で母を見つめる。眼鏡がなくても、今母がどんな顔をしているかよく分かった。
「学校で何か嫌なことでもあった?」
母がベッドの縁に腰掛けて、掛け布団越しに俺の肩に触れる。俺は小さく首を振った。
「そう、じゃあアルバイトでミスをした?」
首を振った。
「あら、うーんじゃあ……引越がナイーヴ?」
少し悩んで、また首を振った。
「じゃあ、恋のお悩み?」
ふ、と脳裏にスノウの影がよぎる。それを振り払う様に、一際強く首を振った。
「あらそう……、ね。教えてくれないの?」
少し考える。
今ここで、母に全て言ってしまおうか。実はレイプされて、写真も動画も撮られて、それで脅されてるんだって。本当は引っ越しもしたくないし、あの野郎を警察に突き出して二度と豚箱から出れない様にしたいんだって。
掛け布団の中に入っていた携帯が震える。嫌な予感がして、覗き見れば、光る画面に「聞いてるよ」の文字。
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