昭和アウトローガールズ☆

くとぉ

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4章 ご褒美とお野菜 

①篠田ファーム

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ショッキングな屋上でのお披露目おひろめから約一ヶ月が経過した。

その後はあそこまで衝撃的しょうげきてきな事は無かった。

が…下校中に唯がちょっとした失敗をして礼子に頬をぶたれたりであるとか…

皆で公園に寄って椅子にされたり…

他の四人にそれぞれ力関係を教え込んた事も…

最初はは加代子の失言が切っ掛けだった。

ちょっとした唯への気遣い…と云うかあわあわれみの表明ひょうめい…少し口をすべらせた。

「可哀想?…ふぅ~ん…じゃあ貴女がハムちゃんの代わりでもする?」

と礼子の冗談を真に受けて泣き出したり…

などと言った比較的ひかくてき些細ささいな事件はあったが概ねおおむね平和ではあった。

変わった事と言えば、加代子、ゆかり、瑞稀はロンスカからミニスカを履く様になり…

香はメイクや制服を通常のものに戻したが、今の所はイジメ等の対象にもならずに済んでいる。

ゆかりも杞憂きゆうだった、心配しすぎだったと反省した事や、唯が何も知らない一年の男子数人からラブレターを貰ったり、これは本人が一番驚いてもいた。

何故か瑞稀がヤンキー風のメイクから、やや可愛い系を意識したごく薄いものに変わった事も…

微妙な変化に気づいた加代子が突然どうしたのかと何気なく聞いたが、本人は…

「なんとなく…別に良いじゃん…気分だよ」

と……実にそっけない返事であった。




 ◆ ◆ ◆




世間はゴールデンウィークではあったが、この地方の農家はこぞって田植えの時期になる。

礼子の実家は旧豪農きゅうごうのうで明治期の法令により土地は大部分小作人や小規模農家に譲ってゆずってしまったとはいえ…

それでも残った私有地しゆうちは山林を含めればかなり広く田畑たはたも飛び飛びに広範囲に散っており。

最近ではは跡継ぎがおらず、農家を辞める家や都市部に住む子供や孫の世話になる年寄りも増えた事から、資産家の篠田家に農地を買い取って貰い、都市部へ移住した家も何軒かあった。

そんなワケで篠田家の農地は毎年少しづつ増えていた。

田植え、稲刈り、春野菜、夏野菜、冬野菜の収穫や牧場程では無いがニワトリと最近増やし始めた数頭の乳牛の世話、と…来ては家族だけでは手が足りない。

そんなわけで、それぞれの収穫しゅうかくの時期だけ礼子の長兄の後輩でもある、農業大学の学生や近隣の手が空いた農家にアルバイトや手伝いを頼んでいたのだが…

今回は予定した学生の数人が来られなくなってしまった。

そこで篠田ファームを現在実質的に運営している長男の篠田耕作しのだこうさく弟妹ていまいに応援を頼んだ。

「礼子…ゴールデンウィークのバイトなんだが、お前の友達に宛はないかなぁ?一人二人でも良いんだが、女の子でも、出来る仕事はいくらでも有る」

長兄から相談を受けた礼子は快く応じた。

宛は有る…

(あの娘達で良いか…お金も出るんだし、一人くらいは来るでしょ)

「うん、良いよ聞いてみる」



 ◆ ◆ ◆




とはいえ村落出身の者達も、この時期は田植えを手伝わねばならない。

加代子の家は父親は営林署に勤めてはいるが、家業で山に棚田たなだを作り、炭焼き小屋で炭を作り祖父はその傍らマタギをやって居るとか?

ゆかりの家も兼業とはいえ、一応は蔵が有る程度の米農家では有るらしく来られない。

公務員家庭の香もゆかりの隣家であるらしく家族で毎年ゆかりの家の田畑を手伝うのだと言う。

残ったのは都市部に住むゆい瑞稀みずき

唯は勿論断らない、二つ返事で了承した。

瑞稀は唯がOKした瞬間に食い気味に参加したいと申し出て来た。

礼子の実家に隣接する簡易宿舎で二日半のアルバイトが決定した。

他の参加者は農業大学の学生数名。

礼子としては一人でも別に良かったが、二人~三人いても問題無い。

こうして唯と瑞稀のゴールデンウィークは、篠田ファームでアルバイトする事が確定となった。




 ◆ ◆ ◆




瑞稀の家は学校のある都市ではは無く、二駅先の尾形市に有る。

そのまま途中で降りずに、礼子の家がある篠原村の駅に直行して迎えを待てば良いのだが…

ワザワザ学校のある駅で降り、唯が来るのを待って一緒に向かう。

「あれぇ?寺田ぁ?何でいんのぉ??」

唯はピンク色の薄手の、少しもこもこしたパイル生地のミニスカートと、同じ素材のパーカーにヒール付きのサンダルといった出で立ち。

水色の縞模様が入った透明の大き目の袋の中には、作業に使うのであろうジャージとジーンズや、少々くたびれたスニーカーや仮粧ポーチなどの袋がゴチャゴチャと入っているのが見える。

「あ、え、っと…歯ブラシ、歯ブラシ忘れて!そこのコンビニに買いに降りたんです!…ついでに栗原先輩待とうと…そんな感じです…はい」

対する瑞稀はオーバーオールに長靴に他の物は…登山用だろうか?

他の物はナップサックに入っているらしい…重装備で有る。

「寺田…お前…凄い格好だねぇ?登山かよ♪礼子様が他の道具は大学生達が使うのあるって言ってたよぉ~?」

(本人いないのに…礼子様か……)

瑞稀は一瞬悔しい様な、淋しい様な感情が湧くのを感じたが、顔には出さずに唯の問いに答える。

「私、農作業とか初めてなんで…ハハハ…とりあえず」

「ふーん私もだけどね~~あっ!もうすぐ電車来るかも!行こう♪」 

電車の中で他愛のない話をしつつ、矢鱈と篠の字が付く駅を通り過ぎ三十分程電車で揺られ、目的地の篠原駅に到着した。

待ち合わせ場所には一緒にバイトする農業大学の学生四人が待っていた、男性三名、女性一名。

近くで待機していると、向こうの方から声をかけて来た。

「もしかして君達も篠田さんとこにアルバイト?」

「あ、そうでーす♫」

瑞稀は緊張して喋れなかったが、唯が軽いノリで大学生達に応答する。

「ヤダ!ちっちゃ!かわいい~」

後ろで髪を束ねた女性が、唯を見て思わず呟く。

「今年は女子高生もいるって聞いてたけど…いやラッキー♪」

「部屋隣だからさぁ~夜に俺等の部屋においでよ~」

「バカ!篠田さんトコの娘さんの友達だろ!変な事考えるなよ!」

「ちょっと!女子部屋に夜這いに来たら殴るからね!」

唯は軽いノリでケラケラ笑いながら、四人の大学生達との会話を見事にこなしている。

「えー!…そんな…え~…そうなんスかぁ~……さんの方が…やだ~…アハハッ…そんなじゃねっすよ~」

(栗原先輩…すげー……私も一応女子高生なんだけど……もう少し普通の格好でも良かったのか…あ、もう名前で呼んでる…)

大学生達も至って普通の格好で作業着は荷物の中だろう。

瑞稀はコミュ力の違いを痛感した。

人の心理や感情への造詣や考察は深いが、所詮は机上の空論を頭の中で繰り返す高校デビューの小ヤンキーでしか無く。

元々は陰キャの文学少女である。

一時期周りがバカに見えて才女を気取っていたのだが、気づいたら友達もほとんどおらず…

中学時代は一人ぼっちで日々教室の隅で本を読んで過ごしていた。

そんな中、大人向けの恋愛小説や一部の性愛を綴るつづる文学からエスカレートして、官能小説に手を出したのを切っ掛けにオナニーを覚え…

正に一人遊びで自分を慰めなぐさめていたわけだ。

あらゆる書籍を読んだお陰で、国語や歴史といった教科は得意だが理数系に弱く、意思も弱い。

行き詰まると直ぐにストレス発散とばかりに陰部いんぶに手が伸びグリグリとオナニーが始まる。

男ならスッキリする所ではあるが…

女は…人にもよるのだろうが終わる頃にはぐったりとして疲れてしまい、後は明日で良いかと勉強も捗らず…

密かに夢見ていた進学校での薔薇色の高校デビューの筈が、低偏差値の山間第一高校での別の高校デビューと相成った。

格好だけの不良娘を気取る瑞稀に比べ、中学一年で高校生の不良相手にオナニーより先に性行為を覚え、その後も仲間や他の男達と遊び回っていた唯とは社交能力に大きな差がある。

(栗原先輩と一緒に来て正解だった、私一人じゃ緊張しておかしな事でも言って引かれてたかも…)

そうこうしてる間に迎えのワゴンが来た、礼子は乗っていない。

ドライバーとして来たのは篠田家の次男だろうか?

礼子ほどでは無いが、顔立ちの整った筋肉質でいかにもな好青年である。

「こんにちは!君達が兄貴の後輩君達かな?大学の方で聞いてると思うけど…あぁ君は前も来てるのか、それじゃあ………」

ひとしきり大学生達と話すと唯と瑞稀に声を掛けて来た。

「君達が礼子の友達かな?栗原さんと寺田さんだね?」

「ハイ、そうです…」

(あれ…栗原先輩…ちょっとおとなしい?)

「あ、はい」

「ちょっと大変だけど、出来そうな仕事振るから大丈夫だからね、それと君たちの宿舎は彼女と一緒だ農大の尾形さん…だったかな?」

唯一の女学生が唯達に手を振る。

ワゴンの席は…案の定……瑞稀の姿は耕二の隣…つまり………助手席にあった。

唯と言えば後部座席で大学生達に囲まれ、車の中は騒がしい、瑞稀を除いてではあるが…

(クスン……こうなる気はしてたけどね…うぅ…ツライよぉ…………)



 ◆ ◆ ◆




昼食の後に、それぞれ着替え仕事説明を受け、個人個人作業を割り振られ、瑞稀は篠田家の次男である耕二と行動する事になった。

「それじゃあ栗原さんは義姉さんを手伝ってくれるかな?」

「はい!…あの…」

「ああ、礼子は山向こうの水田に親父やお袋の手伝いに出てるから……夕方まで戻って来ないなぁ、夕食は家の広間でみんなで食べるから、その時に会えるよ、だから義姉さんと一緒に美味しい食事作ってあげてよ、俺も期待してるよ~ハハハ!」

「え~!?」

唯は料理など家庭科の調理実習でしか作った事が無い、そのうち半分はサボっていたのだ、ほぼ知らないと言っても過言では無い。

「それじゃあ義姉さん、この娘の事を頼むよ」

そう言って耕二達は行ってしまった。

「えーと栗原…唯ちゃん?だったよね?こっちでやるのは家畜かちくの世話と小屋の掃除、手が空いたらビニールハウスの世話と……」

(すげー!それにしても大きい家…全部合わせたら学校の体育館くらいあるのかなぁ?家なんて十畳しか無いのに!)

学校の体育館は言い過ぎだが、家屋と敷地を合わせればそれくらいはあるかも知れない。

母屋おもやだけでもかなりの広さで平屋建ての和風建築。

離れは二階建ての今時の物で、唯達の泊まる宿舎はこれもまだ新しく築五年だ、十二畳の独立した部屋二つが連なっており、シャワーとトイレは共用で外にそれぞれ別にあった。

風呂は母屋に有るので風呂に入る場合は順番待ちと言う事らしい。

ぼーっと敷地面積の大きさに圧倒されていた唯だったが…礼子の義姉あね恵子けいこに声を掛けられハッと意識を覚醒させる。

「じゃあ取り敢えず唯ちゃんは、ニワトリ小屋の藁を換えて、掃除でもしてもらおうかなぁ~♪」

「あ、ハイ…」

恵子の案内で鶏小屋に付いて行く…

思ってた以上に広い、少し舐めていた。

そこは小さな倉庫くらいのサイズで…

鶏達が騒がしい、想像してたより凶暴な気がする。

(おい!小屋なんて可愛いモンじゃないしぃ!)

「よし♪それじゃさっさと片付けてお昼ご飯の支度しよっかぁ♪」

恵子が明るく…軽いノリで唯を促す。

「あ…ハイ…頑張ります……」

こうして栗原唯の…人生初のアルバイトが始まったので有る。




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