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2話 魔法犯罪対策課
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人類がシンギュラリティを間近に控えた、とあるエイプリル・フール・デーのこと。
突如として、現代科学では解明できない「謎の力」を持った人々が、世界各地で同時多発的に現れた。
フィクションの世界にしか存在し得なかったその力は「魔法」と呼ばれ、それを操る人々は「魔力保持者」と名付けられた。
未知の力を前にして、世界は一時混乱に陥る。しかし長い歴史を持つ人類の叡智により、人々は「魔法」のある世界で生きていくことに適応し始めた。
さて、「魔力保持者」によって頻発する魔法犯罪に対し、政府はそれらを取り締まる機関を、警察庁に連なる形で設置した。
それが「魔力保持者」らを結集して生まれた組織、「魔法犯罪対策課」通称「マホタイ」である。
斑鳩肇(いかるが・はじめ)が魔力保持者であることを自覚した、十五歳の頃。当初はもっぱら恐れられていた魔力保持者は、時が経つにつれ世間やメディアから好意的な感情を向けられるようになっていた。
若くして堅実な考えを持っていた斑鳩は、公務員であれば食いっぱぐれることもないだろうと、設立間もない魔法犯罪対策課への配属を希望した。
しかし、所属して間もないある日の現場で利き腕の腱を損傷。大事は免れたものの、機敏な動きは難しく、現場を退き事務仕事に徹することとなった。
やがて法整備や教育制度が整い、マホタイには優秀かつ若い人材も揃うようになった。若手の育成という言い訳も立たなくなり、窓際に追いやられていた斑鳩は、ついに退職を促された。
庁内の事務職に再登用を頼ってみたが、人事の反応は冷たいものだった。
「嘱託の方にも募集はないねぇ。おたく、マホタイだっけ。種別は?」
「魔力探知です……」
「今は検知計があるもの。わざわざ人件費は割けないねぇ」
そう言葉をかけられ、斑鳩は少ないデスクの荷物をまとめ、あえなく退庁することになった。
「参ったな……」
段ボールを手にしたまま、斑鳩は昼下がりの街をふらついていた。仮にも警察官一筋で働いて四十を過ぎた自分に、今更別の仕事が務まるのだろうか。
この足でハローワークにでも寄って行こうか、などと考え始めた斑鳩の肩に、通りの向こうから走ってきた一人の青年がぶつかった。
突如として、現代科学では解明できない「謎の力」を持った人々が、世界各地で同時多発的に現れた。
フィクションの世界にしか存在し得なかったその力は「魔法」と呼ばれ、それを操る人々は「魔力保持者」と名付けられた。
未知の力を前にして、世界は一時混乱に陥る。しかし長い歴史を持つ人類の叡智により、人々は「魔法」のある世界で生きていくことに適応し始めた。
さて、「魔力保持者」によって頻発する魔法犯罪に対し、政府はそれらを取り締まる機関を、警察庁に連なる形で設置した。
それが「魔力保持者」らを結集して生まれた組織、「魔法犯罪対策課」通称「マホタイ」である。
斑鳩肇(いかるが・はじめ)が魔力保持者であることを自覚した、十五歳の頃。当初はもっぱら恐れられていた魔力保持者は、時が経つにつれ世間やメディアから好意的な感情を向けられるようになっていた。
若くして堅実な考えを持っていた斑鳩は、公務員であれば食いっぱぐれることもないだろうと、設立間もない魔法犯罪対策課への配属を希望した。
しかし、所属して間もないある日の現場で利き腕の腱を損傷。大事は免れたものの、機敏な動きは難しく、現場を退き事務仕事に徹することとなった。
やがて法整備や教育制度が整い、マホタイには優秀かつ若い人材も揃うようになった。若手の育成という言い訳も立たなくなり、窓際に追いやられていた斑鳩は、ついに退職を促された。
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「嘱託の方にも募集はないねぇ。おたく、マホタイだっけ。種別は?」
「魔力探知です……」
「今は検知計があるもの。わざわざ人件費は割けないねぇ」
そう言葉をかけられ、斑鳩は少ないデスクの荷物をまとめ、あえなく退庁することになった。
「参ったな……」
段ボールを手にしたまま、斑鳩は昼下がりの街をふらついていた。仮にも警察官一筋で働いて四十を過ぎた自分に、今更別の仕事が務まるのだろうか。
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