魔法犯罪対策課上がりのおっさん、超パワー型魔力使いお嬢様の家庭教師になる

花端ルミ子

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3話 面倒な探し人

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 青年は、詰襟の学生服のような格好に身を包んでいた。

 ぶつかった際、眼鏡の向こうからじろっと斑鳩を睨み上げたが、その人相に少々怯んだらしい。面構えだけは一人前だとよく課長に言われたものだ。
 青年は一つ咳払いをして、斑鳩に軽く会釈をした。

「すみません、ちょっと急いでたもので」
「ああ、こっちこそ失礼」

 それだけ言って先を急ぐ素振りを見せたが、青年は思い直したように斑鳩を見上げた。

「あの、この辺りで道に迷ってる女の子を見ませんでしたか。あるいは、何かトラブルを起こし……いえ、トラブルに巻き込まれているような」
「いや、見てないが」

 青年が濁した部分が気になるが、斑鳩はともかく首を振った。

「女の子って言ってもなぁ、幼稚園生だったり高校生だったりするだろう。それに格好とかが分からなきゃ、探しようがねぇよ」
「それもそうですね」

 青年は俯いて考え込むと、片手の指をぴっと立てた。

「この辺りに、魔法士の専門学校があるのは知ってますか」
「ああ」

 斑鳩は頷いて応えた。なにせ自分の出身校である。
 まだ魔力保持者の扱いが定まっていなかった頃、十五歳以上のその人口と適性把握のために政府が設置した施設だ。

 斑鳩が在籍していた黎明期は、適性も何もかもが混在していたが、現在では幼少期の適性判断に則って相応しい教育者たちが揃っているらしい。
 また、「魔法犯罪対策課」に配属される人員はここで教育を受ける。魔力保持者が通る警察学校のようなものだ。

「探しているのは自分がお仕えしている家のお嬢様です。歳は十五歳、この春から魔法士学校へ進学されるのですが……辺りの様子を見て回るだけだと言ったのに、人を撒いてどっかに消えやがって」

 青年は語尾を小さくし、鼻の頭に皺を寄せて小さく毒を吐いた。どうやらこちらが本性らしい。

「その人探し、手伝おうか」

 斑鳩が言うと、青年が怪訝な顔をした。

「いや、職業柄人探しには慣れてるもんで」
「あんた、探偵かなんかですか」
「いやまあ、ちょっとね」

 こちらも言葉を濁しながら答えると、ひとまず害意はないと判断されたらしい。相手の服装などを説明された。
 青年は隼人(はやと)と名乗った。

「いかにもお嬢様っぽいのがいたら、俺が探していると言ってください。またこんなことがあったら学校終わりの寄り道も禁止します、とも。それじゃ」

 隼人と別れ、斑鳩はひとまず荷物をそこらの軒下に追いやって、対象探しに出た。
 ひとまず年頃の女子が好みそうな場所を当たる。きらきらしい外観の雑貨屋、カフェ、レストランの通りなど。しかし店員に怪しまれただけで、それらしい人物を見つけることはできなかった。

 慣れない場所を回り、疲れ果てた斑鳩が繁華街に差し掛かったところ、強烈な魔力の反応を感じた。
 と同時に、何やらものものしいやりとりが斑鳩の耳に届いた。
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