ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 全員で、ジリジリと慎重にイノシシ型の魔物に近づいていく。

「今だ!」

 純子が声を上げ、有紗も沙耶も一斉に矢を放った。
 矢は見事に魔物の肩に命中する。
 矢が刺さった部分からは、血がじわりと滲み出し、イノシシ型魔物は驚いたように体をよじり、痛みに反応して暴れ始める。大きな体が揺れ動くたびに、周囲の草が揺れ、地面が揺れる。

 魔物は怒りに満ちた目でこちらを睨み、牙をむき出しにして威嚇する。彼の体は傷ついているが、まだ戦う意志を失っていない。イノシシ型魔物は、こちらに向かって突進しようとするがその前に明が叫んだ。

「行くぜ!」

 無謀にも、ロングソードを振り上げ、イノシシ型の魔物に突進する。

「ちょっと壁役はどうしたのよ!」

 純子が叫ぶが興奮した明の耳には、その声は届いていないようだ。

 有紗たちの矢が次々と放たれ、イノシシ型魔物は矢を受ける度に苦しんだが、なおも立ち向かおうとする姿勢を崩さない。彼の体は傷だらけになりながらも、最後の力を振り絞って戦おうとする。その姿は、まさに勇敢な獣のそれだった。

 突っ込んだ明のロングソードがうなりをあげる。

「止めだー!」

 明の渾身の一撃が振り下ろされた。

 炎のような魂の一撃がイノシシ型魔物の頭部に致命傷を与え…………るはずだった。

 だが明のロングソードはイノシシの牙にその軌道を阻まれていた。

 がきーん!

 牙と剣の重なり合う衝撃で、辺りの空気が震え、地面が揺れる。

「くっ」

 明が苦しそうに顔を歪め、剣を落とした。イノシシ型魔物が明の隙をついて突進を開始した。彼の目は純子に向けられ、牙をむき出しにして迫ってくる。パーティのリーダーが純子だと思ったのだろうか?

 イノシシ型魔物の全身の筋肉は盛り上がり、怒りに満ちた目は、純子を睨みつけている。その姿はまさに獣の王者であり、周囲の空気が重く感じられるほどの迫力を放っている。大きな体が地面を揺らし、牙が光を反射して鋭く輝く。

 純子はその迫力に圧倒され、思わず後ずさりした。彼女の心臓は早鐘のように打ち、恐怖が彼女の体を硬直させる。

「や、やめて……」

 と小さな声が漏れた。

「純子、危ない!」

 卓郎は思わず叫び、心臓が高鳴る。助けなくては。

 俺しか壁役をできるはずがない。三次はさっきから我関せずとでもいうように傍観を決め込んでいるし、明はもう間に合わない。

「クソ! やっぱり俺が、止めるしかねー!」

 卓郎はショートソードを構え、純子の前の壁役としてたちはだかり、イノシシ型魔物の動きを見据える。

「力の一撃!」

 卓郎は心の中で唱え、力を貯める。イノシシ型魔物の突進に地が揺れ押し流された空気が体を襲う。

 1秒

 卓郎の体に力が満たされていく。

 イノシシ型魔物が純子とその前で立ちはだかる卓郎に向かって突進してくる。

 卓郎はだんだんアップになる魔物から目を逸らさず、覚悟を決める。ギラギラし、充血した目と目が合った。怖い。間に合うのか?

 2秒

 イノシシ型魔物が口から泡を吹き、牙をむき出しにして突進してくる。牙についた血液が粒となって飛びちるのが分かる。

 もう少しだ。卓郎は魔物の動きを冷静に見極め、力を体に貯め続ける。

 間に合え! もう目の前にイノシシの牙が迫っている。

 3秒

「今だ!」

 卓郎のショートソードがイノシシ型魔物の頭部めがけて振り下ろされた。溜め込んだ力が一気に解放される。

 ズバキーン!

 一瞬雷鳴が轟いたかと思うような閃光が走る。

 イノシシ型魔物の頭部が真っ二つに分断されていた。そして突進の勢いは止まった。

 ピロリン!

 その1秒後、フリーズが解けた瞬間、全身の力と気力を出し尽くした卓郎は尻餅をついた。まだ心臓がバクバクと最速のリズムを刻んでいる。顔面は蒼白だ。

 その後ろでは、純子が同じように尻餅をついて震えている。

 倒したのか? 間に合った? 助かった?

 混乱した思考で確認作業を続ける。技が間に合うかも、一撃で倒せるかも分からなかった。でも卓郎は壁役をやり切った。命懸けで。

「スーゴーい!」
「見直しちゃったよー」

 有紗と沙耶が駆け寄って来て、そして卓郎に抱きついた。二人の胸の感触が柔らかく、そして二人の笑顔が眩しい。三次がやれやれというようなポーズをとりながら、卓郎に手を差し出し、起き上がらせようとする。

「驚いたぜ。あの一撃。スキルか?」

 卓郎も手を伸ばして立ち上がらせてもらおうとする。

「はい。『力の一撃』っていうスキルです」

「やるなー。見かけによらないモンだな。ダメスキル持ちだって聞いたように思ってたんだが……違ったようだな」

「はは……」

 笑って誤魔化すしかない卓郎だった。
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