7 / 265
7
しおりを挟む立ち上がって振り返ると、純子がまだへたり込んでいる。純子の両脇に有紗と沙耶が寄り添っていた。
俺は近づいて手を差し出す。
「立てる?」
「たた、立てるわよ!」
純子は顔を赤らめ横を向きながら卓郎の腕をとった。小さく呟く。
「あ、ありがとう。助かったわ……」
「ちゃんと仕事ができて、良かったよ。怖がらせて悪かったな」
俺はその時純子に許されたかと思った。
明が後ろから飛びついて、俺の喉を締め上げた。手荒な歓迎。
「おまえ! やるじゃんか。あの一撃すごかったぜ。まあ、俺には劣るけどな」
ヘッドロックをしながら俺の頭をポコポコ叩く明に俺は「痛い、痛い」と抗議した。
有紗と沙耶が微笑む。
明るい日差しが有紗と沙耶を照しだし、その笑顔がまるで天使のように輝いて見える。純子も笑えばいいのに。
俺はこのメンバーで、なんとか新たなパーティを組めるかもしれないと希望を持った。
「大物だな! コリャ運ぶのも大変だぞ」
三次はもう次の仕事に取り掛かっている。運んで買い取ってもらわないと、金にならない。2メートルもの猪型魔物を運ぶのは楽な仕事ではないのだ。
その辺の手頃な木をキル倒して担ぐための天秤棒を即席する。担ぐのは俺と明の役目だと、何故か自然に決まっていた。……まあ、そうだよな。三次はリーダー役だし、残りは女だし。
『俺は真の男女平等主義者だ』なんて、悪あがきをしようものなら純子に睨まれるのは間違いない。そもそもこういうところで使えるところを見せるのが俺に必要なことなのだ。
俺と違って明は不満が顔に出ている。もうすぐブツブツ言い出すだろうなと思っていると、案の定言い出した。
「なー! ギルドまでずっと俺たちが担ぐのかよ? ちょっと扱い酷くない?」
「しょうがないよ。女の子には重すぎるし……」
俺が前、明が後ろで魔物を担いでギルドを目指す。
2メートルもの猪型魔物の重さは200キロはあるんじゃないかと感じてしまう。
三次はリーダー面して先頭を意気揚々と歩いているし、女子3人は楽しくお話しながら歩いている。俺たちを助けてくれたり、代わってくれる可能性は0パーセントだな。これは。
汗だくの俺と明がギルドに戻ると、賑やかな雰囲気が広がっていた。冒険者たちが集まり、情報を交換したり、仲間と笑い合ったりしている。
三次達はもうすでに買取所の男と話を始めていた。
俺たちも、運び込んだイノシシ型魔物を抱えて、買取所へと向かう。
「あの猪型だ」と三次が指差す。大きな木の扉が開いており、中の買取担当の無精ひげを生やした男が目を細めて俺たちを見つめて待っていた。
「おい、そこの連中。ここだ。早く持ってこい」と男が声をかける。
「どっこらしょ! 重かったぜ。これならかなりの金額になるはずだぜ!」
と全ての獲物を買取所に出し終えた明が自信満々にイノシシ型魔物を指差す。俺たちの苦労の結晶だ。
男は目を丸くし、驚いた表情を浮かべた。
「おお、これは大物だな。良い値がつくぞ」
と男は言いながら、魔物の体をじっくりと観察する。
「で! いくらになるんでえ?」
と三次がニヒルに口の端をあげて顎に手を当てながら、ぶっきらほうに尋ねる。
「そうだな……状態も良いし、肉も相当取れそうだ。これなら20万ゴルドは行くかもしれん」
「20 万ゴルド!?」
俺と明の疲れは一気に吹っ飛び、目を輝かせた。
「分け前はちゃんと考えないとな」
と三次が冷静に言う。
「俺たちの労力も考慮してくれよなあ」
「そうね、俺たちが運んだんだから、少しは俺たちの取り分も多くしてね」
「まあ、そういうことだ。俺たちの頑張りがあってこその報酬だからな」
と明が頷く。
男は買取金額を計算し、金貨を数え始める。俺たちの心は期待で高鳴る。金貨20 枚という買取額は、6人で割っても一日の稼ぎとしては十分だ。
「2枚分は銀貨にしてくれ」
「分かった。はい、これで20 万だ。確認してくれ」
と男が三次に金貨を手渡し、三次が確認して頷いた。
「ありがとうよ」
「また、でかいの狩ってきてくれよ」
「ああ、任せろ」
三次が俺達に金を分配する。
「1人3万3千ゴルドで、2千ゴルドは運び賃として2人にやっていいよな?」
「「良いわよ」」
女子達は二つ返事で納得した。
3万4千ゴルド。手のひらに乗せた金貨の重みが、今日の努力を証明しているように感じた。
だがそれよりも大事なことがある。そう。これから一緒にパーティを組むかの相談だ。
「あのさあ……」
「明日からも、できたら一緒にやらないか?」
明も俺と一緒のことを考えていたらしい。
「わりーが、俺はパーティに入ってるんでね。明日からは別行動にさせてくれ」
三次は、元々メンバーのスカウトが目的だ。だがスカウトしたいメンバーはいなかったようで、手をひらひらさせながら背を向け去っていく。
3人の女子は顔を寄せあって相談を始める。そして話がまとまると純子が代表して話し出した。
「獲物の運送は2人がやってくれるって約束してくれたら、組んでも良いわ」
「僕はそれで良いよ」
二つ返事の俺とは違い明は少し考えてから不満げに返事をする。
「まあ、いいぜ」
「じゃあ、明日からもお願いね。それじゃあ、これから親睦会でもしましょうよ」
純子がギルドの酒場コーナーに視線を向ける。まだ席は十分に空いているのが見て取れた。
64
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる