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しおりを挟む「その依頼で良いぜ。別に気にしてるわけじゃねえからさ」
切り替えるように視線を逸らし、遠くを見ながら明が吐き捨てる。
めんどくさいなあ……と思いながら俺は話に加わった。
「じゃあ、北野村の依頼を受けちゃおう。明もいいって言ってるんだしさ」
有紗と沙耶が顔を見合わせる。純子は少し硬い表情で言った。
「ーーそうね。嫌な思い出も上書きしちゃえば良いんだしね」
有紗と沙耶も頷いた。
明は掲示板から依頼を書いた紙を剥がしとり、受付窓口に歩き出す。受付窓口には綺麗な黒髪の礼子がテキパキと手を動かしている。
「この依頼、お願いします」
「あら、明君。1人でこの依頼を受けるの?」
「いえ、5人で」
純子が窓口から俺達5人をチェックして告げる。
「5人でパーティ登録してくれる。そうしないとランクも上がりにくいしね」
5人は顔を見合わせて頷く。
「パーティ名を決めてねー」
礼子の言葉に皆ハッとした顔を見合わせてから純子が切り出した。
「何かいい名前はない?」
「そんなん、適当でいいだろ。何か案はねーのか?」
「そうは言ってもすぐにはね……」
礼子がテキパキと仕事を進めるために提案した。
「とりあえず、明のパーティで仮登録しとくから今度までに決めてきて。メンバーはその5人ね。依頼は、はい、これに完了サインをもらって来てね」
明が紙を受け取り窓口を後にする。
「行こうぜ」
俺たちは北野村に移動した。
***
北野村、諭吉の畑は森を切り開いて作ったものなのか、畑のすぐ横まで木々が迫っていた。広い農地の片隅に、納屋のような小さな木造の建物がポツンと立っている。
諭吉さんが広い畑の真ん中で鍬を振り上げ畑を耕していた。
「こんにちは。冒険者ギルドの依頼を受けてやってきました。依頼書はこれです」
明が依頼書を見せて確認すると、諭吉が畑を指さし早速説明を始める。
「見ておくれ。森から猪型魔獣が出て来て、この畑を食い散らかすんじゃよ」
「どのくらいの大きさか分かりますか?」
純子が情報収集に取り掛かる。こういうところ、純子は賢いなあ……と思った。
「夜中に食いに来ておるから、見ちゃーいないさなあ。ただ足跡は残っとるから推測しておくれや」
「わかりました」
荒らされたキャベツ畑のチェックをするとさんざんに食い荒らされたキャベツに猪型の歯型、地面には足跡が見つかった。
「大きいのと小さいのと……これ親子で食べに来てるわね」
「大きいのも2種類あるかもな」
「猪一家かしら、ヤダ可愛い」
「沙耶! それこれから狩るんだからね。大丈夫?」
俺も足跡の大きさから成獣2匹と幼獣多数と推測する。
「どうする? 夜を待ってここで狩るか、このまま森に入って探すか?」
「ここで待つのも面倒だぜ、森に入ろう」
明は、やはりイケイケだな。
「私も森に入ろうと思う。木があった方が猪の突進を避けやすいでしょう」
純子はやっぱりよく考えているんだなと、改めて感心した。
「いいと思うよ。その方が早く帰れそうだし」
「私、頑張ってみつけるよ」
「じゃあ、決まりね。卓郎、足跡を追って」
「うん」
俺は地面に顔をつけるようにかがみ腰で猪型の足跡を探しながら森に帰っていく足跡を選別し後を追った。
森に分け入ると足跡を探すのはより難しくなる。
「あっちだ」
俺は大体の方向を指し示しながら先頭を進んだ。こういう時に役立つスキルが有れば良いのだが、そんなものは持っていない。沙耶の『遠見』も足跡の発見には役立たない。だが、遠くの魔獣の発見にはきっと役立ってくれるはずだ。
途中足跡を見失い俺は首を振って立ち上がった。
「ここで足跡が分からなくなっちゃったよ。途切れた続きを探さなきゃ」
「困ったわね。手分けして探しましょう」
「任せろ!」
明が威勢よく言うが、純子がそれを制す。
「明は足跡踏み荒らしそうだから、ここで周りを警戒して!」
「え! あ、ああ。分かった」
消えた足跡が続いていそうな、続きがみつかりそうな場所に4人が散らばる。
「あ、あったわ!」
有紗の声に全員が喜びの笑顔を見せる。
その後は、有紗が先頭になって皆を案内した。
突然沙耶が小さく叫ぶ。
「いたわ!」
指さす先、木と木の間の茂みの中に猪型魔獣の一家が見える。
「ありゃーやばいな。あの大きさ二匹はちょっと無理だぜ」
いつも強気の明が弱気を見せる。猪型2匹と分かったときになんとなく予想はできていたが、目の当たりにするとその予想が間違いでなかったことが実感できた。
「近づく前に、何かいい方法を考えましょう」
皆が黙り込んで顔を見合わせる。猪型魔物成獣2匹幼獣5匹の群れと戦う方法などなかなか思いつくものではない。
「弓は木の上に登って狙ってもらえば、盾役はいなくてもいいかな? そうすれば俺と明が一匹づつ受け持てるけど」
「幼獣が5匹もいるじゃねーか。どうすんだよ」
幼獣と言えども膝よりでかい大きさである。突進攻撃をまともに受ければ死ぬまでありそうだ。
「1っ匹づづ減らしていくしかないわね」
「どうやって?」
「少しくらい矢が刺さっても死にそうにないわよ」
「毒しかないわ。毒矢で幼獣だけでも倒すのよ。卓郎お取り寄せできる?」
俺はお取り寄せで毒矢をさがした。
「あ、これ凄い。ドラゴンもイチコロ強力トリカブトンだって」
「ちょっと、信用できねーな」
「ドラゴンは無理でも猪型ならけないかな?」
純子が肩越しにメッセージボードを覗き込み、「これが良いわ」と指差した。
「トリカブトン……ただのトリカブトン? おんなじ名前だが過剰な広告がなくて値段が安い。効き目は同じか?」
「そこは分からないけど、ただのトリカブトンは一般的に出回ってると思ったわ」
「なんか怪しそうなんより、よく見かけるやつで良くねーか?」
「「そうね」」
俺はトリカブトンをポチッとする。ビンに入ったトリカブトンがゴロリと転がった。
矢の先をビンの中に入れ、トリカブトンを矢先につける。結構ドロっとした黒っぽい液体でいかにも毒という感じだ。
10本づつの毒矢を用意し3人が木に登って身構えた。
俺と明が頷き合い、猪型を挑発して誘き寄せるために近づいていった。
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