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しおりを挟むジャイアントフロッグ6体――そのうち一体は変異個体。依頼は達成した。
夕暮れ時、俺たちは泥と疲労を背負いながら街へと戻った。
「やっべー、帰ってきたのに地面が揺れてる気がする……湿地トラウマかも……」
ギルドの扉を開けながら、明がふらふらと呟く。
「カエルの舌が夢に出そう……」
有紗が項垂れ、沙耶もぐったりと後に続く。純子だけは、どこか達観したように口笛を吹いていた。
ギルドカウンターの奥では、いつものように礼子さんが書類に目を通していたが――俺たちの姿を見た瞬間、ピクリと眉を上げた。
「……なによ、全員ドロドロじゃない。どう見ても戦場帰りじゃないの」
「ほぼ合ってるっすよ。見てください、これがその成果!」
俺はバッグから、魔物の証明部位――切り取った舌を6本取り出した。変異個体のやつはひときわ太く、ぬめりが強い。礼子さんが思わず鼻をつまんだ。
「うっ……これは……変異種のやつ、でしょ?」
「そう。残り5体は通常個体。依頼通り、5体分と余分1」
「確認するけど……このサイズ、この質感。うん、間違いないわね」
礼子さんが器用に鼻をつまんだまま頷いた。
「よくやったわね。特に変異個体……これは追加報酬対象よ。合計で、三十万ゴルド渡せるわ」
「っしゃああああ!!」
「やったー!」
「美味しいご飯いこ!」
一斉に歓声が上がる。
俺はふっと肩の力を抜きながら、ギルドの椅子にどさっと腰を下ろした。
「マジで……生きて帰ってこれてよかった……」
そうつぶやくと、礼子さんが少し笑った。
「無茶しすぎないでよね。次の依頼、もう少し穏やかなやつにしておきなさい。……はい、報酬明細と領収書ね。早く着替えた方が良いわよ」
俺はそれを受け取り、ホッと一息。
背後では、明と沙耶が早速「ステーキ」だの「デザート三個まで」だのと言い合っている。
「よし、じゃあ今日はご褒美だな。みんなで食べに行くか、街で一番うまい飯をさ」
「一度着替えてから繁華街に集合ね」
「「さんせーい!」」
日が落ち、街の明かりがともり始める中、俺たちはギルドを後にした。
***
夜の繁華街は活気に満ちていた。ランタンの明かりが石畳に揺れ、通りの屋台やレストランから、香ばしい香りと笑い声が漂ってくる。
俺たちが目指すのは、街の東側――《ミート・パラダイス》。肉料理専門の人気店だ。高いけど、うまさは折り紙付き。
「うっわ、今日も並んでるなあ……って、予約してる!? すげえ!」
「私がさっきギルドで予約入れといたから」
純子がさらっと言ってウィンクする。できる女すぎて逆にこわい。
「天才かよ……!」
「純子様ありがとーっ!」
そう言いながら俺は、三人の姿に自然と目を奪われた。
純子は、狩りのときとは打って変わって、紺色のスリット入りのワンピースを身にまとっていた。腰まで伸びた金色の髪は緩やかに巻かれ、普段の鋭い視線が今日はどこか柔らかい。スラリと伸びた脚がライトに照らされ、自然と周囲の視線を集めている。
「……な、なによ、じろじろ見て。あんた馬鹿?」
顔をそむけつつも、耳が赤い。たぶん、ちょっと照れてる。
有紗は、淡いクリーム色のブラウスにパステルブルーのスカートという、清楚な装い。ショートボブのピンク髪が揺れて、まるで春風みたいに柔らかな雰囲気をまとっていた。茶色の瞳が夜灯に反射して、穏やかな微笑みに輝きを添えている。
「こういう時間、大事だよね。いっぱい頑張ったあとのご褒美……って感じ」
沙耶は、元気いっぱいのミニ丈のワンピースに、動きやすいブーツ姿。ポニーテイルのパステルピンクの髪が跳ねて、子犬のように愛らしい。姉と並んで笑うその姿は、なんともほっこりする。
「お腹すいた~! 肉肉肉っ!」
そんな沙耶に、有紗が「こらこら」と笑って肩を抱き寄せる。姉妹の絆ってやつだな。
店内に入ると、香ばしい肉の匂いが一気に押し寄せてきた。天井にはファンが回り、客たちはでっかい肉の塊を豪快にかぶりついている。
案内されたのは奥のテーブル席。五人掛けの丸テーブルに腰を下ろすやいなや、明がメニューを開いて叫んだ。
「俺、まずTボーンステーキ! そのあとスペアリブ! あと……ポテト山盛りと……」
「ちょ、ストップ、まず一品ずつ頼もうよ!? あとでまた注文できるから!」
有紗が慌てて制止する。俺もオススメを眺めつつ、チーズたっぷりのハンバーグステーキとサラダを頼むことにした。
「お待たせしましたー!」
しばらくして、でかい木のプレートに乗ったTボーンステーキがドンと運ばれてきた。ジューッと音を立てる肉から、湯気が立ち上る。
「うわああ……これは罪……」
沙耶が手を合わせてから、目を閉じて香りを楽しむ。
「じゃあ、乾杯しようぜ!」
明が水のグラスを掲げる。
「依頼達成と、変異種討伐と、生還に!」
「「「「かんぱーい!」」」」
ガチャン、とグラスがぶつかる音が響き、俺たちは一斉に食事にかぶりついた。
肉の旨味が口いっぱいに広がる。香ばしい焦げ目の奥から、ジューシーな肉汁があふれ出して、噛むごとにうまさが増す。
「んっっっま! これやばい、語彙力なくなる!!」
「わかる、これだけで戦った価値ある……!」
有紗が目をうるうるさせながら肉をほおばり、沙耶はパンをちぎってソースを拭い取るように食べている。純子は葡萄ジュースをくゆらせながら、
「ふふ、これが勝者の晩餐ってやつね」
まるで貴族のように微笑んだ。
「なあ、やっぱこの五人、最強じゃね?」
「うん。なんか……今日みたいな一日、ベトベトでなければまたやりたい」
有紗の柔らかい笑顔に、俺も自然と笑みがこぼれる。
明日また命懸けの依頼が待ってるかもしれない。けど、今だけはこの温かい時間を味わおう。
仲間と戦って、笑って、腹いっぱい食う。それが、今の俺たちの最高のご褒美だった。
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