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しおりを挟むギルドで受け取った依頼書を手に、俺たちは北にある農村――『山本村』へと向かっていた。
内容は、畑を荒らすウサギ型の魔物『ラビバグ』の群れを討伐するというもの。一体につき銀貨5枚の報酬が出る、手頃な討伐依頼だ。
「ラビバグって、確かちょっと大きめのウサギみたいなやつだよね? でも、角が生えてて、突進してくるんでしょ?」
沙耶が眉をひそめながら言った。
「うん、油断は禁物だね。特に群れてくると、普通の小型魔物より厄介かも」
有紗が頷いて補足する。
「でもまあ、一体銀貨5枚ってのは悪くないわ。数をこなせばそこそこになるし」
純子は弓の手入れをしながら、軽く口元を緩めた。
「いいじゃねーか、俺たちみたいなFランクパーティにぴったりだろ。小金稼いで、またうまいもん食おうぜ!」
明が陽気に言って、皆の顔に笑みが浮かぶ。
舗装の甘い田舎道を歩くことしばし、木々の合間から山本村が姿を現した。のどかな農村のはずだったが――。
「……あれ、なんか様子がおかしくねぇか?」
俺がつぶやくと、全員の歩みが自然と遅くなる。
村の周囲には荒れた畑が広がっており、所々に小さな穴が空いている。野菜の苗が無残に引きちぎられ、土が掘り返されたような跡が点々と残っていた。明らかに、普通の野生動物の仕業じゃない。
「こりゃ……ラビバグの仕業で間違いないね」
有紗が静かに言った。
村の入り口で待っていた初老の男が、俺たちに気づくと駆け寄ってきた。
「おお、討伐に来てくれた冒険者さんか! ありがてぇ! ここんとこ毎晩のように畑を荒らされててな……もうこのままじゃ、村の作物が全滅だ!」
「ラビバグはいつも夜に現れるんですか?」
俺が尋ねると、男は深くうなずいた。
「そうだ。日が暮れてからが本番だな。最初は2、3匹だったが、最近は10匹以上の群れで来やがる。怖くて見回りすらできんよ……」
「よし、じゃあ今夜は村に泊まりつつ、見張って奇襲をかけよう」
俺の提案に、皆が即座に頷いた。
山本村の集会所で、俺たちは村長の案内を受けながら作戦会議を開いた。
「畑の被害は村の南と西に集中しておりましてな。最近の被害は特に西側がひどい。そこに潜んでいれば、まず奴らに出くわすはずです」
「なるほど、西の畑に罠と待ち伏せを仕込むのがよさそうですね」
有紗が地図を見ながら丁寧に答える。
「わ、私、畑に引かれた獣道のチェックしてきますっ」
沙耶が元気よく立ち上がり、すぐさま動き出す。
俺たちはそれぞれ準備に動き始めた。
村の若者たちが罠作りを手伝ってくれ、簡易な落とし穴や木の柵が即席で設けられていく。
純子は村の子どもに弓の構え方を教えていた。
「……こら、もっと肘を上げる。あんた、ちゃんと狙わないとだめでしょ?」
言いながらも、その目はどこか優しい。
明はと言えば、子供たちに囲まれて「ラビバグを一撃で倒すかっこいい構え」を披露しており、拍手と笑いが起きていた。
こういう光景、嫌いじゃない。
俺は剣の手入れに集中した。
やがて日が落ち、空が紫から漆黒へと染まり始めた。
「全員、配置につけ!」
俺の掛け声で、皆が動き出す。畑の陰、木の影、罠のすぐそばに潜み、それぞれが呼吸を整えた。
そして――草を踏みしだく音。
畑の奥、揺れる野菜の葉陰から、ぽんぽんと跳ねる影が現れる。
丸くて、耳が長く、体毛がもふもふで一見かわいらしい。だがその額には鋭い角があり、目は血走っていた。
「来たっ……!」
沙耶がささやく。
次の瞬間、3体、4体……それ以上のラビバグが畑に飛び込み、葉をむしり、根を掘り返す。
俺は小さく手を振って合図を送り――
「今だ!」
明が真っ先に飛び出し、ラビバグの群れに突撃。叫びながらそのうちの一体に剣を叩き込む。
「ラビィイィィッ!!」
甲高い鳴き声とともに、周囲のラビバグがいっせいにこちらを向いた。
「させない!」
純子の矢が放たれ、跳びかかろうとした個体を空中で貫いた。
有紗と沙耶も連携し、別方向から矢を射る。視界の悪い夜でも、彼女たちの放った矢は正確に獲物を捉えていく。
俺も剣を抜き、俊敏に走り回りながら、一体ずつ確実に仕留めていく。
俊敏で跳ね回るラビバグは手強いが俺のスピードは、そのスピードを大きく上回っている、仲間と連携を取りながら狩り続け、ラビバグは徐々に数を減らしていった。
罠にかかった個体もいた。落とし穴に落ち、柵に引っかかって動けなくなったラビバグに、俺たちはとどめを刺していく。
「全員、生きてるな! あと3体だ、囲め!」
明の号令に従い、俺たちは最後の群れを包囲した。
戦いが終わった頃には、畑の周囲にはぐったりと倒れたラビバグの死体が30以上が並び、空には月が昇っていた。
村人たちが恐る恐る近づいてくると、誰からともなく拍手が起こった。
「助かった……ほんとうに助かったよ!」
老若男女が俺たちに深々と頭を下げてくる。
俺たちは、しっかりと討伐数を確認しながら、朝一番でギルドに報告する準備を始めた――。
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