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しおりを挟む村の入り口に立つと、俺たちは思わず足を止めた。
畑は踏み荒らされ、家の柵は無惨に壊れている。いくつかの家屋の壁には、爪痕のようなひっかき傷が残っていた。村人たちの姿もまばらで、見かけても顔色は青ざめていて、俺たちを見るなり駆け寄ってくる。
「と、討伐依頼の方ですか!? お願いです、どうか、子供たちを……!」
「落ち着いてください。詳しい状況を教えてもらえますか?」と有紗が静かに声をかける。
村長らしき老人が現れて、事情を語ってくれた。どうやら、森の奥から現れた狼型魔物の群れが村に近づき、数日前に子供を襲ったらしい。今は村の広場の倉庫に避難しているとのこと。
「夜になると、やつらの目が光って森の中をうろついてるのが見えるんじゃ……」
「なら、こっちから迎え撃つわよ」と純子がすぐさま弓を握った。
「森の手前に罠でも仕掛けておくか?」と明が腰に手を当てながら提案する。
「ありね。爆薬矢もここで使えば、奇襲できるわ」と純子。
「じゃあ俺が囮になって少し森の中に入って、群れを引き寄せるってのはどう?」と俺はニヤリと笑う。
何せ俺の速さのステータスは284だ。狼型なんかに追いつかれることは絶対にない。
「さっき『爆発に巻き込まれるのはイヤだ』って騒いでたの誰だっけ?」と明が言うと、全員が吹き出した。
それでも、行動は素早かった。俺たちは森の手前に簡易のバリケードを作り、爆薬矢の準備を整え、囮となる俺は鈴を持った。
「準備完了だよ~」と沙耶が笑顔で拳を掲げる。女子3人は1本ずつ爆薬付きの矢を握っていた。
純子は「これ外したら笑えないからね……」と真剣な目。
有紗は静かに矢羽を撫でながら祈るように目を閉じ、
沙耶は「ドッカーンっていくからね♪」と、いつも通りの笑顔。
そして、夕暮れが迫り始めた頃――
「来た!」と遠見のスキルを持つ沙耶の叫びが響いた。
純子たちが身を潜めて待つ中、草を揺らしながら獣の足音が近づいてくる。やがて見えたのは、毛並みの荒れた灰色の狼型魔獣・シルバーウルフたち。目がギラついていて、まるで魔力に蝕まれているような異様な雰囲気だ。
「推定通り、30匹以上……!」と有紗が息を呑む。
俺は余裕で狼たちを挑発しながら付かず離れず逃げてくる。狼たちすべてがが俺に食いつこうと一斉に追いかけてくる。
だが俺は、余裕で躱しながら、狼たちを誘うように立ち回る。
「今よ、みんな!」
純子の叫び。
「了解、いっけぇぇぇぇぇっ!!」
空を裂くように放たれた3本の矢が、群れのど真ん中に突き刺さる。爆薬付きだ。
ドカァァァン!!
地響きを伴って、爆煙と土煙が巻き上がる。狼たちの叫びが響き、一部は吹き飛ばされ、他の個体たちは混乱して動きを止めた。
俺は全力で逃げたために、何とか爆発には巻き込まれていない。
「ちょ、マジかよ……。今の爆風、俺でもギリギリだったじゃん」
明にこの役やらせてたら、絶対ブチ切れてたな――と、心の底から思った。
「よし、今がチャンスだ!」
気を取り直して叫ぶと、俺はミスリルソードを握りしめ、まだ立っているウルフたちに向かって飛び込んだ。切っ先は迷いなく、魔獣の体を切り裂いていく。
魔力を込めたミスリルソードは、すんごい切れ味だ。なんの抵抗も感じることなくシルバーウルフが両断されていく。
純子と有紗、沙耶が援護のために通常の矢を放つ。
「明も行って!」と純子。
「おう、行くぜ!」
明はロングソードを引き抜くと、狼たちを討つために走り出した。
俺が斬り伏せたウルフの体が倒れると、残りの狼たちは怯んだように距離を取った。
爆薬の衝撃と矢の連射により、群れはすっかり混乱状態――そう思った矢先だった。
――グルルル……
森の奥、バリケードの裏手から、ひときわ重く低い唸り声が響く。
目を凝らすと、そこにいたのは――
「……な、なにあれ……」と有紗が青ざめる。
全長は他の個体の二倍以上。
黒鉄のような毛並みに覆われ、片目には深紅の傷跡。
口元からは紫の泡が垂れ、まるで魔力に侵蝕されたような異常な気配を放っている。
――《異変種》、キングシルバーウルフ。
「ちょ、マジであれヤバくね!? 狼の域超えてるでしょ!?」
俺が声を上げると、明がニヤリと笑った。
「へへ、面白え。あれ、俺がやっていいか?」
「待て、単独は危険だ。爆薬もうないし――」
言い終える前に、別の方向でざざっ、と草むらの音。
「逃げる奴がいる!」沙耶が叫んだ。
2匹の狼が群れを見捨てて、森の奥へと走り出す。
「そっちは任せて! 明、行こう!」
「しょうがねー、任せたぜ、卓郎!」
沙耶が瞬時に矢を番え、逃げるウルフの足元へと射る。矢は地面に突き刺さり、土を跳ね上げた。
その間に、明が一気に距離を詰める。彼のステータスは俺ほど高くないが並み以上、足場を利用する判断力も一級品だ。
「よっしゃあ! 逃がさねえぞ!」
一方、俺と女子2人は、《異変種》と対峙する形になった。
純子が唇を噛みながら呟く。
「強すぎる……でも、やるしかないわね……!」
「大丈夫。俺が前に出る。二人は援護、頼んだ」
俺は剣を構えた。《異変種》との戦い。
それは今までの狩りとは違う、本当の意味での命懸けになるかもしれない。
でも……不思議と、怖くなかった。
――さあ、第二ラウンドの始まりだ。
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