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しおりを挟む二週間の時が経った。
朝靄の立ちこめるギルド本部。
まだ陽も登りきらぬ時間帯に、俺は一人、静かなロビーに佇んでいた。
(みんな……どうしてるかな)
目の前にはステータスを示すメッセージボードが浮かんでいる。
百点カード、百点ポイント9,680、銅級、冒険者レベルA、
ステータス、HP:200/200 MP?/?
攻撃力:209 魔法効果:215 防御力:200
速度:284 知力:200 器用:200、
力の一撃、完全見切り、ヒール(光)、ファイアバレット(火)
セラフレイム(光火)
二週間、俺は、ほぼ休む間もなく、ソロでの狩に打ち込んだ。
仲間たちが修行にいそしんでいる間、ポイント稼ぎとたくさんの戦闘経験をつむことで、戦いの感や、咄嗟の判断力を養てきた。
(みんなが戻ってきた時に、頼りになる前衛、後衛を護る盾になれるように)
そんな想いだけが、俺を動かし続けてきた。
そこへ――。
「おーい、卓郎くーん!」
ガチャリとドアが開き、軽快な足音が駆け寄ってくる。
「……沙耶!」
「じゃーん! 見て見て、新しい弓買っちゃったー!」
いつものように元気いっぱいの沙耶。背中に背負った弓が、どこか以前より重厚な雰囲気を帯びている。
続いて、落ち着いた足取りで有紗が現れる。
「私の弓も、沙耶とおそろいです」
彼女の瞳に、確かな自信の光が宿っていた。
「遅れてごめん」
最後に現れたのは、いつも通り眉間に皺を寄せた純子。その表情の奥には静かな誇りがある。ちょっと、どや顔が入ってる?
「『遠距離射的(ロングショット)』……三人とも、習得してきたわよ。これで、もっと戦いが有利になるわ」
そして――
「……お前ら、ずいぶん騒がしいな」
壁際から声がして、振り返ると明が、刀身を肩に引っ提げて立っていた。なんかカッコいいな、おい。
「『斬鉄』……完成したぜ」
静かにそう告げるその姿に、卓郎は無意識に笑みを浮かべる。
「……みんな、おかえり」
「ただいま!」
四人が声をそろえ、自然と輪になって立った。
「さぁ、卓郎。次の目標は何だ?」
明が軽く笑いながら問いかける。
俺は一歩、前に出る。
「次は――久しぶりの依頼だ。初めてのCランク依頼。俺たち新生『フォーカス』の力、全員で証明しよう!」
「「「おー!」」」
俺たちはさっそく掲示板で依頼を探す。C急に昇格したことで異常事態の起きている南と北のエリアでも依頼を受けることができるようになっている。やはり南の変異種異常発生と、北の軽部村での異常事態の二つは気になっていたのだ。
掲示板の依頼から二つの事件のその後を推察するに、南の変異種異常発生は冒険者たちによって変異種の間引きは順調に行われているが、異常発生自体は続いているのか、変異種討伐依頼は数多く張られている。
北の軽部村の異常事態には多くの冒険者が、今もなお現地で戦っているようだ。隣国のバルガニア王国から勇者を含むSランクパーティが、教会本部からは聖女を含む聖教騎士団の精鋭が現地入りしているらしい。早晩事件は解決するだろうといわれている。
「やっぱり南の変異種討伐かな?」
俺の意見に純子が答える。
「そうね。たくさん湧いてきてるみたいだし、力を試すには持ってこいかもね」
「うん。うん。私もそう思う」
「俺の『斬鉄』で変異種だって、一刀両断してやるぜ」
「近距離先頭になる前に『遠距離射的(ロングショット)』で倒しちゃうけどねー」
沙耶が明をからかう。
俺たちは、ギルド本部の掲示板に並んで貼られた依頼書を食い入るように見つめていた。
「こっちの『深紅の牙ラプトル』……討伐対象は一体だけど、Cランクの中でも危険度は高めって書いてあるな。持ち帰った魔石によってはBランク相当だってさ」
俺が指差した依頼を読んでいると、有紗が静かに補足を入れた。
「ラプトル種の中でも異常個体って噂。通常種より動きが鋭く、頭も良いらしいよ。接近戦では特に注意が必要……」
「ふーん、でも動きが速いってことは……」
沙耶がにやりと笑う。
「こっちのロングショットで撃ち抜き甲斐があるってことじゃん!」
「ふむ。赤牙ラプトル……硬さよりも回避重視のタイプかー」
純子は真面目な表情で札を抜き取り、光にかざす。
「私の矢でも通りそうね。攻撃が通らない相手は困るけど、回避型ならやりようはあるわ」
「お、こっちの獣王バジルホーンとか面白そうだぞ」
明がBランク依頼の札を手に取った。
「巨大な変異牛、突進力で岩も砕くって書いてある。真正面からぶつかってみてぇ……」
「ちょ、ちょっと待って!? いきなりBランクは、さすがに無謀じゃない?」
沙耶が慌てて止めに入る。
「ふん、別に無謀じゃねえ。こっちにゃAランクの卓郎がいるんだぜ。準備と連携が取れてりゃ、俺たちでもいける。だが……まあ、最初は様子見でCランクってのもわかるけどな」
明は札を戻しながら、ニヤリと笑う。
「ふたつ候補が出たな。『深紅の牙ラプトル討伐』と『獣王バジルホーン討伐』」
俺は二つの札を見比べて、頭を巡らせた。
「どっちも強敵だけど……まずはラプトルの方が良さそうだ。数は一体だけだし、移動速度と連携のテストにはちょうどいい」
「うん。射撃の練習にもなるし!」
沙耶が力強く頷く。
「最初にラプトルを倒して、バジルホーンはその後ってのはどう? 連戦にはなるけど、強敵への挑戦にはちょうどいいと思う」
有紗が提案し、皆が顔を見合わせる。
「……ふっ、いいんじゃない? それくらいの挑戦、してやるわよ」
純子が小さく微笑む。
「よーし、決まりだな」
明も札を指で弾いて同意した。
俺たちは『深紅の牙ラプトル討伐』と『獣王バジルホーン討伐』――二つの討伐依頼を手に取り、受付へ向かった。
気がつけば、誰も口にしなかったが、皆の目が輝いている。
受付の礼子が久しぶりの俺たちを軽くからかうが手続きはテキパキと済まされる。
「じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」
俺たちは南の草原に向けて冒険者ギルドを後にした。
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