ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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「じいちゃん。そこでおとなしく待ってろよ!」
 そう言い残して、最後に明が水に入る。

 水中に広がる世界は、幻想的だった。

 淡く光る珊瑚のような植物、崩れた柱、そして歪んだアーチが連なる古代の回廊。沈みし都市は、時間を止めたまま静かに眠っていた。

 俺たちはロメオの用意した魔導灯で周囲を照らしつつ、神殿と思われる中央構造物へ向かう。

「ここか……記憶の源、ってやつか」
 明が前を歩きながら言う。

 扉のような石壁に手をかけると、不思議なことに、水の抵抗はそれほどなく簡単に扉は開いた。中に入った瞬間、周りの壁が、輝きだす。

 俺たちは明るく照らされた部屋の中へと足を踏み入れていた。

 そして、広間の中央に、水晶のように透き通った石柱を見つける。その中に浮かんでいるのは、金色の文字。

 「これが第五の言葉に違いないよ。文字も文法も今までの言葉に似ている感じだ」

 ロメオがそういいながら腕をかざすと、水晶が輝き始める。そして辺りは光に包まれる。俺たちは記憶の世界を見ていた。周りに広がる太古の都。そして迫りくる黒い霧。その中心にいる何者かの姿がはっきりと見て取れる。

「なんだありゃー?」
「あれが、古代文明を滅ぼした元凶なのね」
「なんだか、悪魔みたいだね」
「うむ。あれは文献で見たことがあるぞ」
「「「ロメオさん、しってるの?」」」
 三人の視線がロメオに集まる。

「あれは、死海文書の一つ、『光の子達と闇の子達の戦い』に出てくるベリアルだと思うな」

「そいつ、つえーのか?」
「決まってるじゃない。あんたバカ!」

「どういう奴なんですか?」
「悪魔の親玉みたいなやつかな……」

「見て! 都市が!」

 都市が霧に包まれあたりは闇に包まれた。何もかもが塗りつぶされていく。

 そして気がつくと、俺たちは再び、水晶の間に立っていた。まるで夢から醒めたかのように、静かで、現実味がなかった。

 第六の言葉――『闇の洞窟』にあるという記憶が、脳裏にはっきりと残っている。

 「『闇の洞窟』……」
 ぼーっとした表情のロメオが呟く。

 やがて、俺たちは再び視線を交わし、小さくうなずいた。

 そして、水晶の間を後にし、慎重に来た道を戻っていく。

 神殿を抜け、崩れかけた回廊を進み、かすかに見える陽の光を頼りに、浮上のルートをたどった。

 光が強くなる。

 そして次の瞬間――。

 俺たちは、再び白湖の水面に顔を出した。

「おかえり!」
 岸辺から、有紗と沙耶の声が響く。

 それが耳に届いた瞬間、張り詰めていた緊張が緩んだ。俺も明も、純子もロメオも、何も言わずに岸へと泳ぎ着く。

「みんな、無事……よかった……」
 有紗が四人分のタオルを持って駆け寄ってきて、ほっとしたように笑った。

「どうだったの? 中に、何があったの?」
 沙耶が食い入るように尋ねる。

 俺たちは頷き合い、それぞれが口々に、あの水晶の間で見たもの、そして第五の言葉が示した映像について語った。

「古代の都が霧に包まれて……全部が黒く、塗り潰されていったの」
 純子がまだ震えるような声で言う。

「それで、その黒い霧の中心に、『ベリアル』ってやつがいた。どうやら、ただの災害じゃなかったみたいだな」
 明が唇を噛みしめる。

「……文献にあった通りなら、あれは古代に封じられた災厄の核だ。だとすれば、言葉が必要なのも納得できる」
 ロメオが真剣な面持ちでつぶやく。

 しばし沈黙が流れる。

 やがて、沙耶が問いかけた。

「それで……次の言葉は、どこに?」

「――闇の洞窟」
 俺は、あの記憶の中で最後に残された言葉を思い返していた。

「そんな場所、地図にあったっけ?」
 純子が濡れた髪を絞りながら尋ねる。

「正確な地名ではないかもしれないけど……暗くて、深くて、光の届かない、自然の地下空間。そういう特徴の場所を探す必要があるな」
 ロメオが腰の鞄から地図を広げる。

「この南東の山岳地帯……《黒影の断崖》の下に、大きな鍾乳洞があったはずだわ」
 有紗が指を置いた。

「それ、たしか《影食いの穴》って呼ばれてる場所……。子供が近づくと消えるっていう伝説もあるよ」
 沙耶が補足する。

「闇の洞窟には、ぴったりだな」
 俺は地図を見つめてうなずいた。

 こうして、次なる目的地が決まった。
 《影食いの穴》――そこに、第六の言葉が眠っているに違いない。

「そういえば……銀蔵じいちゃんはどうしてる?」
 俺は、自爆した発明家のその後が気になって尋ねた。

「うん。じいちゃんは、意識を取り戻してから『改良じゃー!』って叫んで、ずっと工房にこもりっぱなしよ」
 有紗が困ったように工房の方向をちらりと見やった。

「まあ、自分の発明で爆発して潜れなかったんだから、悔しいよな」
 明が肩をすくめて笑う。

「でも……潜れなかったのは、本当に残念そうにしてたよ」
 沙耶がぽつりとつけ加える。

「とはいえ、今回は我々、銀蔵さんの発明品に助けられましたからね。感謝と報告は欠かせません」
 ロメオが真面目な顔でメモをとりながら頷く。

「そうだね。じゃあ、顔を見に行こうか」

 俺たちは、銀蔵の工房へと向かった。

 扉を開けると、いつものようにバチバチと火花を散らせながら、じいちゃんは工具を手に機械と格闘していた。

「ここをこうして、こっちは……むぅ、まだ安定せんか!」

「やってるやってる!」
 明が楽しそうに駆け寄る。

「おお、戻ってきたか! 結果はどうじゃった?」

「おかげさまで、大成功でしたよ。銀蔵さんの道具がなければ、ここまでたどり着けなかったかもしれません」
 ロメオが深く頭を下げる。

「ほっほっほ、それは何よりじゃ。発明家冥利に尽きるのう」

「これで、次の目的地に向かいます。今回は本当に、ありがとうございました」
 俺が頭を下げると、じいちゃんは顔をくしゃっとさせて笑った。

「おう、困ったことがあったら、いつでも来い! いろんな発明品が待っとるぞい」

(爆発しなけりゃ、役に立つかもな……)
 心の中でそう思いながら、俺たちは銀蔵じいちゃんに手を振り、工房を後にした。

 そして――俺たちは、第六の言葉を求めて、新たな目的地《影食いの穴》へと歩き出した。

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