ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 軽部村の集会所。質素な石造りの建物に、十数人の仲間たちが集っていた。窓の外では朝霧がたなびき、昨日までの激戦の名残が、どこか空気に漂っている。

 卓郎は、広げられた地図に目を落としながらつぶやいた。

「これが……『呪詛の谷』?」

 ロメオがうなずく。革のカバンから取り出した書物のページをめくり、該当箇所を示した。

「古代語では『アナマスの地』。瘴気の源とされる、忌まわしき谷……。数百年前の記録にも『そこから出たものは浄化できぬ』とある。聖女・由里様の力がなければ踏み入ることすら難しい」

「だからこそ、先に動かないといけないんだよね」有紗が言う。落ち着いた口調の奥に、芯の強さがあった。

 仁が剣を腰に戻しながら、皆を見回す。
「俺は行く。奴らはあの祠の封印を壊そうと襲ってきた。今度はこちらが封印をしに行く番だ。一番怪しいのは『呪詛の谷』!」

 しばしの沈黙のあと、明がニヤッと笑った。
「だったら、全員でカチコミに行こうぜ。なぁ卓郎?」

「……もちろん。あの谷の底で、何かが俺たちを待ってる。行こう、みんな」

 そして、朝陽の中。一行は北を目指し、出発した。



 軽部村から呪詛の谷までは、およそ半日の行程。初めのうちは草木も生い茂り、鳥のさえずりも聞こえていた。

 だが――距離が縮まるにつれ、風は冷たくなり、木々の葉は枯れ落ち、土の色が灰に近づいていく。生きた土地が、死の領域へと変貌していた。

「うわ……なんか気持ち悪い……」沙耶が鼻をつまみ、身をすくめる。

「もう瘴気の影響圏かも」セリアが険しい声で言った。「この辺りからは、魔物も変異しているはず」

 その言葉を証明するかのように――森の奥から、ぎぃ、と何かが軋む音が響いた。木を押し分けて現れたのは、腐肉をまとった異形の猪型魔物だった。

 牙はねじ曲がり、眼窩は空洞。皮膚は裂け、骨の隙間から黒い瘴気が漏れている。

「来たな! 構えろ!」仁の怒号とともに、前衛が飛び出す。

「屍牙獣だ……っ!」ロメオが背後で叫ぶ。「あれは瘴気で蘇った死獣、しかも中に核がある!」

 屍牙獣は咆哮し、腐った脚で地面を踏み鳴らす。ドォン、と衝撃波のような突進。盾を構えるバルドが正面から受け止めた。

「ぐっ……重てぇなッ!」

 その瞬間、空中から光が閃いた。

「下がれ、バルド!」

 叫びながら跳躍――そして空中で構えた剣から、無数の光の雨が降り注いだ。

「『ホーリーレイン』!」

 光の雨が屍牙獣の背中を貫く。純子たちの魔法の矢が次々と爆ぜ、腐肉が焼きただれ、瘴気がきしみを上げて弾け飛ぶ。

 その中で、俺は着地と同時に地を蹴る。

「次は――これだ!」

 剣を横に構え、放たれたのは真っ白な閃光の斬撃。

「『斬光断』!」
 剣から閃光を放ち、一直線上の敵を高速で切り裂く中距離技。

 放たれた閃光の刃が一直線に屍牙獣の胴体を切り裂き、背後の木々をもまとめて粉砕する。光属性の剣閃が屍牙獣を浄化した。

「『セラフレイム』!」剣が光と炎の魔法を纏い青白い光につつまれる。
 俺は走りながら屍牙獣を駆逐する。

 バルドや聖騎士達も屍牙獣と奮闘、次々にきりつけるが、その肉体の奥、裂け目から黒い瘴気が噴き出し回復してしまう。

「核が……っ! 中にまだある! 核を切らねば滅せないぞ!」

 乱戦の中、黒い瘴気が触れた地面から小型の魔物が複数、蠢き出す。

「くそっ、間に合え――!」仁が駆けるが、それよりも早く瘴気が地面に触れ、うごめくように小型の魔物が複数蠢き、その数はますます増えていく。

「数が多い……ッ!」

 俺は、再び魔法を唱えた。
「ピュリファイ!」 
 呪いや毒などを光の力で浄化する魔法だ。

 剣を天に掲げた卓郎の体から、まばゆい光がほとばしる。
 黒い瘴気が触れた地面が浄化され、小型魔物発生が止まる。

「『ホーリーレイン』『ホーリーレイン』『ホーリーレイン』!!」

 天から金色の雨が降る。暖かな輝きが仲間たちを包み、傷が癒えていく。だがその雨は敵には容赦なかった。光が触れた屍牙獣の体が崩れ、小型の魔物たちは悲鳴のような叫びをあげて灰となっていく。

「やった……! 核が……!」有紗が息を呑む。

 目を見張るほどの威力。光の洪水の中、卓郎が静かに剣を納めた。

 ――静寂。

 地は焼け、瘴気は霧散し、残るのは光の余韻と、再び戻った空気の静けさ。

 純子が呆然とつぶやく。

「……今のが、本気の卓郎?」

 沙耶がぽかんと口を開けていた。

「すご……。なんか、もう勇者じゃん」

 俺は振り返り、少しだけ笑った。その背中を、聖騎士達が驚きの表情で見つめていた。


 そこから先、幾度か瘴気に侵された小型の魔物との交戦を経て、陽が西に傾き始めたころ――一行は、ようやく谷の入り口にたどり着いた。

 そこには、風もなく、音もなく、ただ瘴気がじっとりと満ちる「死の空間」が広がっていた。

「ここが……呪詛の谷……」沙耶がつぶやく。

 谷の向こうから、かすかな呻き声と、鈍い鐘の音のような響きが聞こえてきた。

「歓迎されてるみたいだな」明が剣を肩に乗せて言う。

 俺は、ゆっくりとミスリルソードの柄に手をかけた。

「行こう。お待ちかねのようだしな」

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