ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 夕暮れ時、フォーカスの一行は冒険者ギルドの扉をくぐった。

 依頼の成功と、三つの激戦を終えた疲れが表情に出ていたが、その目には確かな自信が宿っていた。

「おかえり!」

 受付カウンターの向こうから、笑顔の礼子が立ち上がる。

「《赤牙狼の群れ》討伐、《群青鳥》の掃討、《徘徊する魔物》の討伐、全部報告受けるわよ。確認のために証明部位の提出、お願い」

 卓郎が無言で、赤牙狼の牙、群青鳥の尾羽根、焼け焦げた《グレイムバイン》の核、それに討伐時に記録した冒険者ギルドのカードを順に差し出す。

「うん、どれも本物。文句なしの成功!」

 礼子がパチンと書類にスタンプを押し、軽く手を叩いた。

「Aランクチャレンジ、2連続成功。あと1回で正式な昇格になるわよ。やったね、みんな!」

「やったーっ!!」
「ふふ、さすが、私たち」
「これで名実ともにトップパーティ目前だね」
「当然の結果だろ」

 メンバーそれぞれが口々に喜びを表す中、礼子が続けた。

「ただし――明日は、ロメオさんからの特別依頼が入ってるわ。指名依頼。これはキャンセル不可ね」

「知ってる……」
 純子がやれやれとため息をつく。

「ロメオのおっさんに、ちょっと一日待っててもらって、明日Aランクチャレンジ受けるってわけにはいかねーかな」

「明らしいわね。でも、たぶん、そんなに急がなくても依頼失敗しなければ、すぐAランクになれるんだから、焦ることないと思うけど」
 沙耶がぴょんと飛び跳ねて振り返る。

「『ルドゥス廃城』に行って『蒼穹の門』を見つけるのよね……そこに、封印にかかわる何かがある……」
 有紗が心配そうに小さくつぶやく。

「何があるかわからないけど、そこはロメオさんに任せておけばいいんじゃない。私たちは、ロメオさんの安全を確保することだけを考えてれば」と純子。

「……とはいえ、またロメオさんのいつものノリが始まったら面倒そうだな」
 明が腕を組み、思い出したように苦い顔をする。

「迷宮の最深部で座り込んで本読み出すとか、普通しないよね……」
 沙耶も思わず吹き出す。

「でも、ロメオさんって、変わってるけど頭はすごくいいと思う。私たちじゃ気づかないことも見抜いてるし」
 有紗がそっとフォローを入れると、礼子がコクリと頷いた。

「今回の依頼、ギルドとしても注目してるのよ。《蒼穹の門》に関する記録は数百年前から断片的にしか残ってない。それがもし本当に見つかれば……国家級の発見になるわ」

「国家級って……そっちのプレッシャーの方がやべぇな」
 明が頭をかく。

「まあ、それを見つけるのはロメオさんだし。俺たちは、彼の護衛と魔物処理」
 卓郎が淡々と言い、周囲を見回す。
「何が来ても倒す。それだけだろ」

 その一言に、全員が自然と頷いた。

「……たっくんがそう言うなら、ね」
 沙耶が小さく微笑みながら言い、有紗と純子もその表情に釣られるように笑った。

「はいはい、それじゃあ今日は解散。明日、朝六時に南門集合。寝坊したら引きずってでも連れてくから」
 純子が言い放つと、明が「お前が寝坊したらどうすんだよ」と返し、また小さな笑いが生まれた。

 そんなやり取りの中、礼子は静かに卓郎に歩み寄り、耳打ちするように言った。

「――ねえ、卓郎くん。油断しないで。今回の依頼、ただの護衛じゃ終わらない気がするの」

 卓郎は少しだけ目を細め、静かに礼子を見返した。

「……わかってます。この前も、大変な事件に巻き込まれましたからね。でも、みんながいれば大丈夫。今までだって、協力して乗り切ってきたので」

「ウフフ……頼りにしてるわ」

 礼子はそれだけ言うと、いつもの受付嬢の顔に戻り、笑顔で手を振った。

「気をつけて、明日も頑張ってね!」

 夕暮れのギルドを後にする頃には、空にひとつ、星が瞬き始めていた――。


 翌朝、まだ朝靄の残る空の下、冒険者ギルド前にはすでに何人かの旅人が行き交っていた。

 その中で、ひときわ浮いた存在がいた。

「おおお! 諸君、良き朝だ! 空気に魔力の粒子が漂っているぞ! こいつは当たりの日だ!」

 ギルドの石段に腰かけていたロメオ・ヴァインが、分厚い古文書をパタンと閉じて立ち上がる。白シャツに革のベスト、その肩にかけたカバンはぱんぱんに膨れ上がり、はみ出た羊皮紙が風に揺れていた。

「おはようございます、ロメオさん」
 卓郎が声をかけると、ロメオは目を輝かせて両手を広げた。

「おお、我が勇敢なる護衛隊! よくぞ来てくれた! これで我が命運も安泰だな!」

「……人の命運を軽々しく託さないでほしいんだけど」
 純子がぼやくと、有紗と沙耶が苦笑する。

「でも、一週間ぶりだね、ロメオさん。〈古代の記録結晶〉の解読は進んだの?」
 有紗が穏やかに声をかけた。

「《蒼穹の門》には『青き天の封印』があると記されていたぞ。絶対見つけよう」

「またすごい場所に行くんでしょ?」
 沙耶が続けると、ロメオは目を細め、ポケットから小さな水晶球を取り出した。

「その通り。目指すは古代王朝『ルドゥス』の最後の砦、《ルドゥス廃城》。そしてその最奥に眠るだろう《蒼穹の門》……。はたして、〈古代の記録結晶〉に記された『青き天の封印』は存在するのか――この目で確かめねばなるまいな!」

「要するに、また危険地帯ってことね」
 明が短く言うと、卓郎が静かに頷いた。

「今日は護衛じゃなく、共に探索する気持ちでいた方が良さそうですね」

「そうそう、それそれ! きみたちも見たいだろう? 古代文明の謎とロマンを!」
 ロメオがうれしそうにくるくると踊りだす。

「……あんまり踊ると転びますよ」
 沙耶の鋭い一言に、ロメオがピタリと止まり、咳払い一つ。

「では、ゆこう! 《ルドゥス廃城》は、南の断崖地帯に隠されている。馬車でおよそ四時間。途中に古代の魔法陣跡があるから、まずはそこを目指す!」

「……今回も、簡単な護衛じゃなさそうだな」
 明が腰の剣に手をかけ、半ばあきれたように言う。

 それでも、誰一人後ろを振り返らず、隊列を整える。

「よし、全員準備はいいな」
 卓郎の声に、皆が頷いた。

 朝の光の中、フォーカスの一行はロメオを先導し、《ルドゥス廃城》を目指して歩き出した。

 空は高く澄みわたり、遥か遠くの断崖地帯に、風に舞う白い鳥の影が見えていた。

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