ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 俺は福佐山都市に戻ると、一人で淡々と魔獣狩りに勤しんだ。
 狩場の空気は冷たく澄んでいて、時折吹く風が木々を揺らす音だけが響く。人の気配も声もない。だが、この静けさが、今の俺にはちょうどいい。

 獲物は主に中位魔獣――フォレストウルフやアッシュベアー。魔法一発で瞬殺だが、ひとつひとつの動きに集中し、魔力の制御を意識しながら、できる限り少ない魔力で最大の効果を引き出す訓練も兼ねていた。

「ウィンドカッター」
 魔法を放つ。狙った一点に風の刃が命中し、魔獣が崩れ落ちた。

(……あいつ、キース・ベルフォードなら、この程度の魔獣は無詠唱で一掃だろうな)

 記憶に焼き付いた悔しさが、身体の奥からふつふつと湧いてくる。
 奴のあの余裕――魔力操作の正確さ、――俺にはまだまだ足りない。

 だが、負けっぱなしじゃ終われない。
 俺は、俺の弱点を克服しなければならない。。

 森の奥へとさらに踏み込む。
 地を這う濃い気配に、魔獣の存在を察知した。今度は少し格上――ファングリザードか。

 「ウィンドカッター」
 また基本の風魔法を放つ。狙った一点に風の刃が命中し、魔獣が崩れ落ちた。

 俺は次の獲物を求めて足を踏み出した。
 「ウィンドカッター」だけで、ひたすら狩り続ける。
 この初歩魔法ひとつで、どこまで通じるか。
 どこまで魔力の流れを研ぎ澄ませられるか。
 俺はそれを確かめたかったし、魔力操作を極めたかった。

 木々の間を進むたびに、野生の気配が濃くなる。
 足元を警戒しつつ、気配を探る。

「……いたな」

 茂みの影から飛び出してきたのは、フォレストウルフ。
 即座に指先に魔力を集める。

「ウィンドカッター」

 風の刃が鋭く放たれる――が、あえて威力を抑えた。
 
(よし、今の魔力消費は……四割減。次は三割まで落とす)

 戦闘としては非効率だが、今の俺に必要なのは“狩り”じゃない。
 “研ぎ澄ますこと”だ。

 倒れる音を背に、俺はさらに森の奥へと進む。
 次に現れたのはアッシュベアー。
 分厚い毛皮に覆われた巨体を前にしても、構えは崩さない。

(狙うのは喉元。魔力は、指先から真っすぐに――)

「ウィンドカッター」

 魔力を極限まで絞り、密度を高めた風の刃が放たれる。
 ズバッと音を立てて、アッシュベアーの喉元に走る深紅の線。
 魔獣は呻きもせず、崩れ落ちた。

 俺は深く息を吐く。
 魔力の流れが、ほんの少し軽く感じられた。

(少しずつ――確実に、手応えがある)

 魔力を余分に漏らさないよう、詠唱中の呼吸すらも制御する。
 一撃ごとに、無駄を削ぐ。
 一瞬ごとに、自分を研ぎ澄ます。

 「ウィンドカッター」

 「ウィンドカッター」

 「ウィンドカッター」

 繰り返すたびに、風の軌道が真っすぐに、無駄なく走る。
 命中精度が上がり、消費魔力量は目に見えて下がった。
 気づけば、同じ数の魔獣を倒しても、消費魔力量は半分にも満たない。
 この森に入り、何体の魔獣を屠っただろう。だが、まだ満足にはほど遠い。

(ウィンドカッターの精度は上がった。魔力消費も抑えられるようになった。――なら、次は……)

 目を閉じる。
 呼吸を整え、身体の中を流れる魔力の“気配”に意識を向ける。
 指先から出すだけじゃない。
 もっと根本から、もっと深く――。

 掌に魔力を集中させる。
 だが、ただ集めるのではない。円を描くように流れを制御し、外に漏らさず保ち続ける。
 内圧が上がっていく感覚に、汗がじわりと滲む。

 ふと、小枝を拾って立ち上がった。
 そして、目の前の巨石に向かって枝を投げる。

 「……ウィンドカッター」

 魔法詠唱と同時に、投げた枝の軌道を読むように、風の刃を滑り込ませた。
 狙うは、石の側面にある亀裂――わずか数ミリの隙間。

 風がうなりを上げ、枝と共に石をかすめた。
 だが――亀裂には届かない。風の刃がわずかにぶれていた。

(……今のは、呼吸の乱れだ。魔力の回し方が少し荒かった)

 再度、深呼吸。
 魔力を肺の動きに同調させるように、静かに、穏やかに練り上げる。
 筋肉の緊張すらも一つずつ解きほぐしていく。

 そして再び、枝を拾って投げた。

 「ウィンドカッター」

 今度は、風の刃がぴたりと枝の軌道に沿い――亀裂へと吸い込まれるように突き刺さった。
 石の表面がパキンと音を立てて裂け、破片が静かに崩れ落ちた。

(……よし)

 俺は拳を握りしめた。

 魔法は力だ。だが同時に、技術でもある。
 派手な火球や炸裂する雷に目を奪われる者も多いが、俺は違う。
 たったひとつの風魔法でも、突き詰めれば――それは剣にも、刃にもなる。

 それが、俺の戦い方だ。

 日が傾き始める。だが、まだ終わらせるつもりはない。
 次は、動く標的だ。

 俺は腰のポーチから小瓶を取り出し、軽く森の空気に撒いた。
 誘い出すための匂い――魔獣を引き寄せるための罠だ。

 風がざわつき、木々の向こうから地響きのような足音が聞こえてきた。

(来たな……今度の獲物は、レッサートロルか)

 大ぶりの棍棒を構えた巨体が、森の影から姿を現す。
 魔力の反応も強い。だが、逃げる気はさらさらない。

 俺は呼吸を一つ置き、再び指先に魔力を練る。

 「――ウィンドカッター」

 その一撃は、今までのどれよりも鋭く、深く、正確だった。
 
 レッサートロルが崩れ落ちる。

(今の……刃の感触が、違った。明らかに違った)

 ウィンドカッターの「切れ味」がレベルアップしたような、そんな感覚だった。
 魔力を練る密度が、ある一定の閾値を越えたのかもしれない。
 指先に残る残滓を見つめ、ふと、自分の魔力の流れが“形”を持ち始めていることに気づいた。

 (魔力は、見えない。だが……意識すれば“流線”として、捉えられる)

 風の流れを読むように、魔力の流れを読む。
 それはもう、ただの“消費”じゃない。“扱う”段階に差しかかっている。

 “詠唱”ではなく“抜刀”のように魔法を扱える境地。

(俺だけのウィンドカッターが、見えてきた)

 “魔力の形を掴み、鋭く、正確に撃ち出す”

 風の魔法しか使っていないが、十分すぎる手応えだった。
 他の属性にも、この魔力操作は応用できる。
 立ち上がり、森の奥へとまた一歩踏み出した。

 
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