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しおりを挟む俺は、『魔術師ギルド』での基礎指導と特別指導を終えて、『福佐山』に帰る途中、王都の西郊外のさびれた宿屋で一泊した。晩飯と朝食がついて6千ゴルドとかなりチープな宿である。素泊まりでもよいのだが、勝手の分からない王都で、適当に晩飯を食べるより安心だと思ったのだ。
値段の割に部屋はきれいに整えられて、ベッドも柔らかく寝心地はよさそうだ。
俺の課題は、魔力コントロールか……キース・ベルフォードという新人魔術師にも負けるようではまだまだ研鑽を積まないといけないな。
ベッドに腰を下ろし百点カードを呼び出すと、『魔術師ギルド』の枠をタップする。
目の前に現れたメッセージボードには、
百点ポイント2340、銀級、
魔術師レベルS
MP?/? 魔法効果:2万3815
『基本魔法取得』『特殊魔法取得』
魔法一覧
ライト(光)、ヒール(光)、サンクチュアリ(光)、
ピュリファイ(光)、セイントシールド(光)、ホーリーレイン(光)、
ジャッジメント(光)、シャインウェイブ(光)
ファイアボール(火)、ファイアバレット(火)、
フレイムジャベリン(火)、メテオフレア(火)
クリムゾンバインド(火)、カタストロフブレイズ(火)、
ウィンドカッター(風)、ストーンウォール(土)
ウォーター(水)、ウォーターショット(水)、レインコール(水)、
スノウバインド(氷)、アイスニードル(氷)
の表示。そして音声とともに現れるメッセージ。
「銀級特典として『基本魔法取得』『特殊魔法取得』時の魔法取得ポイントが100ポイント割引されます」
お、100ポイント少なく魔法が覚えられるのは大きいな。ラッキー!
基本魔法は……これまでも覚えられたやつだね。……特殊魔法は6大系統以外の魔法のことかな。
俺は『基本魔法取得』『特殊魔法取得』をタップして確認する。特殊魔法には欲しい魔法がたくさんあるが、そういうものほど取得ポイントもかなりたくさん必要だ。
中でも一番欲しいのはストレージ(異次元収納)3000(100割引きで2900)ポイントだ。この前からこれを覚えようとポイントを貯めようと思っていた。
今は荷物が多くなるのでミスリルソードか聖印のロッドのどちらかの武器を選ばなくてはならない。結局、魔法はロッドがなくても使えるのでミスリルソードを装備している。せっかく手に入れた伝説級の武器・「聖印のロッド」が持ち腐れ状態なのだ。
だが、これさえあれば、福佐山の自宅に置いてある「聖印のロッド」をストレージに入れておき、魔法を使いたいときに取り出して戦えるのだ。
2900ポイントまであと600か。明日からは魔獣を狩りながらポイントを稼ごうかな。
そんなこと考えて、精錬銀のミスリルソードを抜いてみる。王都一の名工グレンの会心の一振りだ。
「すげー輝いてる。切れ味よさそうー。明日はコレで斬りまくりだな」
にやりと笑って剣をしまった。
明達も今頃道場で頑張ってるのだろう。いや、もう今日の訓練は終わったか。メンバー全員の顔が浮かんでは消える。俺も負けてはいられないな。
「さて晩飯でも食いに行くか」
晩飯は一階の食事処で食えるはずだ。
ベッドから腰を上げ、食事処に移動する。宿屋のおばちゃんが目で飯かと聞いてきた。俺は頷きながら空いた席に腰を下ろす。
「あいよ。晩御飯はこれだよ。何か追加が欲しけりゃ言っとくれ!」
宿屋のおばちゃんが、一杯の素うどんを俺の前にどんと置いた。流石に2食付き6千ゴルドの安宿だ。あまり期待はしていなかったが、まあそんなところだろう。
俺は黙ってうどんを食べる。
美味いじゃん!
まあ、うどんは好きだからね。俺は一気にうどんをかきこんだ。
「おばちゃん酒とつまみをくんな!」
外から人相の悪い親父が二人、入ってきて席に着くなり注文をだす。
「あいよ!」
おばちゃんは、慣れた様子でもう酒の準備ができている。常連客か。
一階の食事処は、泊り客以外も受け入れていて、超低価格で酒と飯を提供しているらしく、そこそこ込み合っている。
「はい。お待ち! 今日のつまみはこれだよ」
「お! 今日のつまみは、おからかい。ここのおからは美味いんだよなあ」
「褒めても、何にも出ないからね」
そんなことを言っているおばちゃんの顔はニヤけている。嬉しいんだな。わかりやすい人だ。
おばちゃんはそのまま調理場に入って行くと何か小皿を持って来た。
「これも食いな。サービスだよ!」
「お! おひたしかい。こりゃありがてー」
何の出ないと言っていた先から一品出るんかーい。
照れ隠しに不機嫌そうな顔をするおばちゃんに、人相の悪い親父が二人が嬉しそうに声をかけた。
「いやー、これだから俺、お姉さん大好きだよ。よ! 貧乏人の味方」
いや、お姉さんって歳じゃないよ。どう見てもおばちゃん。
おばちゃんなんだか上機嫌だ。目尻が下がってる。
親父二人も上機嫌で酒を飲み、つまみをつついている。
するとおばちゃんがまた中に入っていき、今度は焼き魚の皿を持って来た。
「サービスだよ!」
「ありがてー! だからこの店は好きなんだよ。まじお姉さん、天使!」
「もう何にも出ないからね。サービスはそれで終わりだよ」
「ありがてー! ありがてー! いつもサービスしてもらっちゃってわりーな」
いつもこの調子かよ! この店、よく潰れないなあ……と考えているとおばちゃんと目があった。
「あんた、魚すきかい?」
「い、いえ。俺はこれで腹いっぱいです」
俺はそういうと、食べ終わった丼を置き、部屋へと引き返すことにした。
すきと言ったら、俺にも焼き魚をつけてくれたかもしれないな。でも店が潰れそうだから遠慮しとくわ。
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