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しおりを挟む俺は、ポイント獲得と、魔力操作の上達を目指して、ワイバーン狩りをすることにした。何せ、ワイバーン狩りは効率が良い。
目指すは、王都から北北西に二日ほどの距離にある〈翼竜峡谷〉。礼子さんから聞き出した情報によれば、そこにはワイバーンの群れが生息しているという。
馬車の中で、俺は魔力の流れを掌に集中させ、何度もイメージを確認していた。風の刃を安定して放つだけならかんたんだ。しかし、それを「狙った軌道に」「必要最低限の威力で」「素早く連続して」撃つとなると話は別だ。それが思うようにできることが、魔力操作の上達につながるのである。
昼を少し過ぎた頃、岩肌が裂けたような峡谷が視界に入ってきた。風が強く、乾いた土と草の匂いが混じる。馬車を停めて、俺は荷台から降りる。
「ここからは徒歩だな」
峡谷の縁に立ち、下を見下ろすと、遠くの岩棚に動く影があった。灰色の鱗、鋭い翼――間違いない、ワイバーンだ。数は……三体。風に乗って舞い上がり、低空を旋回している。
「よし、やってみるか」
俺は剣には手を伸ばさず、ストレージから「聖印のロッド」を取り出す。
これこそが、教会からご褒美としていただいた伝説級の杖である。
魔法の威力を数倍に増幅するため、より少ない魔力でワイバーンを倒せるに違いない。
今まで最小の魔力コントロールで倒してきたワイバーンをもっと最小の魔力量で倒すことになる。それはつまり、一段と細かい魔力コントロールの練習になるということだ。
「こいつを使うのは初めてだな。威力が強くなり過ぎないか心配だよな」
俺が上空を旋回しながら、俺を餌と思って隙を伺う3匹のワイバーンに向かって杖を向ける。
「ウィンドカッター!」
風が巻き起こり、鋭い刃となって放たれる。最小の魔力量で出力したはずのウィンドカッターが三匹のワイバーンをまとめて切り裂いた。
「どんだけ強くなってるんだよ!」
思わず呆れた声がでる。驚愕の一撃で三体のワイバーンをまとめて落とした俺は、しばし呆然と空を見上げ、風が吹き抜ける峡谷の縁に立ったまま、聖印のロッドを見つめる。
「こりゃ、この杖、封印ものの威力だぞ。最小の魔力量で範囲魔法並みのウィンドカッターになっちゃった。やべーやつだわ、これ」
ウィンドカッター一発であのサイズの魔物を三体まとめて落とすなんて、正直チートすぎる。しかし、だからこそ――この力を本当に扱いきるためには、制御の精度を極限まで高める必要がある。
「よし……やれるとこまでやるか」
俺はロッドを握り直し、力を絞って魔力を流す。指先に集中し、魔力を薄く、細く、鋭く、まるで髪の毛一本を通すような感覚で絞り出す。
「ウィンドカッター!」
風刃が一筋、鋭く地面をなぞるように走った。――だが、切り崩されたのは目標にしていた岩の一角ではなく、岩全体を含む広範囲に及んでいる。
「……まだ強すぎだな。もっと絞り込めなくちゃ」
再び魔力を絞り直し、
「ウィンドカッター!」
第二撃。風刃は今度、弧を描きながら飛び、目標の岩を真っ二つに切り裂いた。
「……よし、今のは悪くない。さっきよりは小さく抑えられたぞ!」
俺は何度も何度も練習を繰り返し、やっと思うような威力の極小魔力量にコントロールできるようになってきた。
だが、ここで満足してはいけない。俺の目的は、魔力を完全に思い通りに扱えるようになること。それも、どんな状況でも。
立ったまま、しゃがんだ姿勢、横跳びしながら、杖を逆手に構え――様々な体勢で、様々な角度からウィンドカッターを撃ち続ける。魔力の量、形、軌道、速度。風を操る感覚が、徐々に掌の中に馴染んでいく。
途中、何度かワイバーンが現れるが、俺はそれらを試し撃ちの的として活用する。
「ウィンドカッター!」
頭、翼、尻尾――一つの風の刃をコントロールして、軌道を曲げそれぞれ異なる角度から一匹のワイバーンを三か所分断する。すべてが狙い通りに命中し、ワイバーンが四つに分かれて墜落していく。
「ふぅ……魔力の消費を最小限に抑えながら、風の刃を自在に曲げられるようになったか。これで、自在に風刃をコントロールできるかな」
俺は練習をやり続け、あっという間に約束の日は近づいていた。
そして、最終的には、直線的に飛ばすだけだったウィンドカッターを、まるで変化球のように飛ばせるようになっていた。
「さて、明日はギルドに集合の日だったな。今日のうちに福佐山に帰っておくか」
福佐山まで馬車で二日、明日集合なのになぜここまでワイバーン狩りを続けていられたかというと、転移魔法を覚えて帰るつもりだったからだ。
『ポータルシフト』は訪れた経験がある場所なら何処にでも瞬間移動できる転移魔法だ。
俺はこの特殊魔法の存在を知り、2900ポイントで覚えられるのも知っていたのだ。
『魔術師ギルド』のページを開き『ポータルシフト』を選択する。百点ポイントは8万7354。2900使っても8万4454ポイント残っていた。
「家に帰ってゆっくりポイントの使い道でも考えるか」
俺は、 魔力コントロールは、十分熟達したと満足しながら、福佐山の自宅へと『ポータルシフト』を発動させた。
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