ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 ゼルドに促され、俺はさらに岩場の奥へと歩を進めた。

「この先に、もう一体。Aランクの魔獣がいる気配がある。正式な依頼には載っていないが……君の実力を見せるにはちょうどいい相手だ」

 その言葉にうなずき、俺は深く溜息を吐く。先ほどの戦闘でAランク魔獣を余裕で倒しているのだからこの戦いは単にゼルドの興味によるものではないだろうか。

 魔獣の気配に向かって移動すること数10分、霧が晴れかけた谷の奥に、それはいた。

 〈雷爪獣ズィグラド〉のつがい。虎に似た体躯に雷の縞模様、四肢の爪には常に雷がまとわりついている。素早さと破壊力に優れたAランクの魔獣が二匹。……これを倒せばいいのか?

「グゥルル……」

 低く唸り、雷光を帯びた爪が岩を焦がす。

(ここは、スピード勝負か……)

 距離を詰めようとした瞬間、ズィグラドが飛んだ。ほとんど残像にしか見えない速度で、電撃とともに突っ込んでくる!

「《完全見切り》!」

 再び世界がスロウモーションになる。牙と爪の軌道を読み、紙一重で回避。だが、次の瞬間にはもう後ろへ回り込んできていた。

 速いが俺はそれ以上だぜ!

「――《アイスニードル》!」

 俺の周囲に、無数の氷の槍が現れる。そして一斉に前方へと射出。

 凍てつく音とともに氷柱が突き刺さり、ズィグラドの動きが一瞬だけ止まる。足元を凍らせ、わずかな隙を作った。

「ウィンドカッター!」

 風の刃が一匹のズィグラドを両断する。並みのウィンドカッターとは魔力効果が天と地ほど違う。

 残りあと一匹。

 高速で間合いを詰め、斬撃を入れようとする――が、ズィグラドが全身から電撃を放出し、接近を許さない。

「くっ……!」

 ……なら、こっちも雷で対抗する!

「《サンダーボルト》!」

 指先から放たれた雷撃が、真っ直ぐにズィグラドへ向かう。咆哮とともにそれを正面から受け、獣の体が仰け反った。動きが鈍る――電気による痺れだ!

 そこに、一気に斬り込む。

「セラフレイム!」

 魔力を込めた一撃が、ズィグラドの脇腹に命中。雷をまとった体から火花が散り、巨体が吹き飛ぶ。

 そのまま動かない。……勝負ありだ。

 俺は一歩下がって剣を納めた。

 草陰から歩いてきたゼルドが、今度は大きくうなずく。

「――見事だ。さっきよりは手の内を見せてくれたな。基本のウィンドカッターの威力で魔力効果の異常な高さが分かったよ」

「気のせいじゃないですか。たまたま運よく急所にでもあたったのでしょう」

 俺がそう返すと、ゼルドはわずかに笑みを見せたような気がした。

「よし、まだまだ底が見えたわけではないが、これで君の評価は十分だ。……帰還するぞ、Sランク冒険者卓郎」

 風が吹き抜け、霧が晴れていく谷を背に、俺たちは福佐山への帰路につく。
 追加の討伐試験を終え、俺とゼルドは再び岩場を抜け、街道沿いの道を戻っていく。朝に見た霧はすでに晴れ、太陽が高く昇っている。

 ゼルドは道中、ほとんど何も言わなかった。ただ、最後の魔獣との戦いで、俺が〈アイスニードル〉で動きを止め、〈ウィンドカッター〉で仕留めた時には、ほんの一瞬だけ小さく笑った気がした。

 それが評価だったのかもしれない。

 やがて、東門が見え始め、王都の喧騒が耳に届く。いつもの街並みに戻ってきた安堵を感じながら、俺は小さく息をついた。

 門を抜けた瞬間、ゼルドが足を止めた。

「……よくやった。文句なしだ」

 彼は俺の方を向き、淡々と続けた。

「正直、余裕すぎて驚いたよ。君のような若者が、ここまでやれるとはな」

「ありがとうございます」

「ギルドで正式な手続きを済ませろ。書類は俺が通しておく。……今日から君は、Sランク冒険者だ」

 そう言って、ゼルドはふっと目元だけで笑い、背を向けて歩き出した。再び布を巻き、黒い風のように街の中へと消えていった。

 ギルド本部。木造の重厚な扉を開けると、すぐに受付のカウンターから、明るい声が飛んできた。

「おかえりなさい、卓郎くん!」
 声の主は、ギルド受付嬢の礼子さんだ。今日はいつもより少しだけ丁寧な制服姿で、俺を見て目を細めている。
「戻ったわね。……って、その顔、やり遂げたって顔ね」

「ええ、試験官にも合格って言われました。Sランク、認定だそうです」

 礼子さんがぱちぱちと拍手をしてくれる。そこへ、後ろから騒がしい足音が。

「たっくろー! 無事だったのかよー!」
 最初に飛びついてきたのは、明だった。相変わらず自信満々の顔で、俺の肩を叩きながらにやりと笑う。

「どうせならそのギラントなんとかってやつ、俺と一緒にぶっ倒したかったな。次、二人で狩りに行こうぜ」

「お前が一緒だったら、試験どころじゃなかったと思うけどな……」

 そう返すと、後ろから別の声。

「ほんとよ。試験に乱入なんて、あんたならやりかねないんだから」
 純子が腕を組みながら現れた。その横には、有紗と沙耶も揃っている。三人とも、ちょっと心配そうな顔をしていたが、俺の姿を見てすぐに柔らかい笑みを浮かべた。

「……本当に、無事でよかった」

「おかえりなさい、卓郎くん。ちゃんと帰ってきてくれて嬉しい」

「えへへ、やっぱりたっくんは最強だねっ!」
 そう言って、沙耶が嬉しそうに手を振る。

 気づけば、仲間たちに囲まれていた。礼子さんも、それを見て微笑んでいる。

 俺は、Sランクという称号を得た。でも、それ以上に、こうして迎えてくれる仲間がいることが、何よりも嬉しかった。

「……ただいま」

 心からそう言って、俺は一歩、みんなの輪に戻った。
 全員Aランク昇格試験に合格し、『フォーカス』はAランクパーティに成れたことは言うまでもない。

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