ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 ギルド本部の依頼掲示板。その前に集まった五人の若き冒険者たちは、真新しい紙に記された文字を見つめていた。

「……南部の湿原で、高魔力反応。原因不明、調査必須」

 読み上げたのは有紗。その声音は落ち着いていたが、眉はわずかにひそめられていた。

「この地域、過去にいくつか探索隊が入ってるけど、いずれも霧に阻まれて引き返してるって記録があるわ」

「それだけじゃねぇ。魔導院の観測記録もある。ここ最近、魔力の濃度が不規則に跳ね上がってるらしい」

 明が依頼書の下部、付記された報告書の一部を指さす。紙には小さく震えるような文字で「生態異常・魔獣の進化傾向アリ」と記されていた。

「進化って……なんか怖い言い方だなぁ……」
 沙耶が苦笑しながら一歩下がると、すかさず純子がその肩を小突いた。

「ビビってんの? Aランクになったんだし、そろそろ“大仕事”に挑もうと思ってたとこでしょ」

「わ、わかってるよー。でも、霧とか雷とか、あたし苦手なんだもん……」

 そのやり取りをよそに、卓郎はじっと地図を睨んでいた。

「ここだな……《フロルヘイム湿原》。王都から南南西、およそ二日」

「行くつもりか?」
 明が振り返る。卓郎はこくりと頷いた。

「Aランク昇格後、初の依頼だ。しかも、魔導院が動いてるとなれば……ただのモンスター騒ぎじゃない」

 純子の目が光る。
「また面倒なのに関わる予感しかしないけど」

「行こう、みんなで」
 有紗が笑ってそう言ったときには、すでに沙耶も決意を固めていた。

「んー、しょうがない! 初任務、びしっと決めちゃおー!」

「決まりだな」
 明が満足げに頷き、卓郎が締めくくる。

「〈フォーカス〉、Aランク任務。南の高魔力反応、調査開始」

 そして五人は、霧深き南方の地へと向かった。



 『ポータルシフト』を使って王都グランティアまで一気に飛び、そこから馬車で南南西に一日目、〈フォーカス〉の一行は南の村「リルベック」に宿を取っていた。

 この村は《フロルヘイム湿原》の北端に位置しており、以前は狩猟や薬草採取でにぎわっていたという。しかし現在は――

「……人の気配、少ないね」
 純子が口をひそめる。昼間だというのに、村には誰の姿も見えない。

「見て? あそこの家、窓が板で打ち付けられてる……」
 沙耶が震える指で指した家の扉は、内側から何重にも木材で封じられていた。

「村長宅、あそこね」
 有紗が地図を確認すると、卓郎が扉をノックする。

「……旅の者です。湿原調査の件で話を聞きに来ました。ギルドの依頼で――」

 カン。カンカン。
 扉の内側から釘を打つような音が返ってきた。

 数秒の沈黙の後、錠の開く音。そして戸が少しだけ開いた。

「……あんたたち、引き返しな。あの湿原はもう、“生きてる”。」

 やつれた表情の老人。肌は土色にくすみ、目は血走っている。

「昨日、村の若いのが三人入った。探索隊の手伝いだと言って。……戻らねぇ。雷も……止まらん。昼でも稲光が走る。何かが……“目覚めた”んだ……」

「それを確かめるために、俺たちは来たんです」
 卓郎の声は静かだが、強い。老人は黙り込み、しばらくしてからぽつりと呟いた。

「……せめて、雨具は持ってけ。濡れたら、戻れねぇぞ」

 *

 翌朝、夜明けと共に出発した〈フォーカス〉の一行は、濃霧に包まれた湿原の入口に立っていた。

「……見えねぇな」
 明が眉をひそめる。視界は10メートルもない。風がなく、空気は重く湿っている。

「この霧、自然じゃない」
 有紗がそっと周囲の気流を感じ取る。「魔力、濃すぎる……」

「わ、わっ……!」
 沙耶が突然身を引いた。「なにか、地面が、動いた……?」

 全員が即座に身構える。

 ジュルッ……ジュババ……。
 地の底から這い上がるような音。湿原の泥がうごめき、何かが――形を持って起き上がった。

「……魔獣、じゃないな」
 卓郎の瞳が光る。完全見切り、発動。

 泥の中から現れたのは、かつて人であったであろう影。皮膚の代わりに苔とヒルをまとい、眼窩には青白い光が揺れていた。

「変異体……! あれ、村の探索隊の……?」
 純子の声に、沙耶が息をのむ。

「やっぱり、生きてるっていうのは――」

「――来るぞッ!!」

 明の叫びとともに、“それ”が跳んだ。

 変異体は泥を撒き散らしながら跳躍した。鋭くないが質量のある腕が、明の頭上へ――

「甘い!!」
 明の剣が唸る。スキル《斬鉄》発動。
 泥の腕が一閃で裂け、肉片の代わりにヒルと藻が飛び散った。

「ちょっ、なにこれキモッ!!」
 沙耶が叫びながら距離を取り、すかさず《遠見》で周囲の敵影を確認する。

「卓郎! こっちに二体来るよ、三時の方向!」

「了解。純子、有紗、後方を任せる!」

「任せなさい!!」
「いっくよーっ!」
 純子と沙耶が弓を構える。有紗が矢に小瓶から液体を垂らし――

「《炎の矢・薬効爆》!」

 ドン、と炸裂音。一本の矢が霧を切り裂いて命中し、燃え広がる炎が変異体の体を包む。

「……燃えるには燃えるけど、あまり効いてない? 粘液で再生してる……?」

「雷……あの稲妻の力、もしかして……」
 卓郎の目が光る。

「明! あれの中心を斬ってくれ。俺が叩き込む!」

「よっしゃ、任せろっ!」
 炎を纏う剣――《フレイムバスター》が振るわれ、変異体の身体に斬り込みが入る。

「いっけえええっ!!」

 卓郎の剣が閃いた。
 まるで重力を無視したかのような一撃が、中心部を破壊し、霧を吹き飛ばした。

 変異体は、呻くような音を残して崩れ落ちる。

 ……静寂。

「ふう……終わった……?」

「これで“前哨戦”ってとこだろうな」
 明が剣を下ろしながら、肩で息をする。

「……霧が少しだけ晴れた?」
 有紗が小さく呟く。確かに、風が通り始めていた。

「卓郎……あれ……!」

 沙耶が指さす先、霧の向こうに黒い影。木ではない。岩でもない。

 ――石造りの門。巨大な遺跡の入口だった。



 
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