ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 夕方の福佐山冒険者ギルド、帰還に転移魔法「ポータルシフト」を使った卓郎たちの一団が、一瞬で現れた転移陣の中央にいた。

「――ただいま戻りました」
 卓郎が一歩前に出て、すっと背筋を伸ばして宣言した。

「へっ!? な、なに!? 転移魔法!? 卓郎くん!」
 カウンターにいた礼子が書類を放り出して立ち上がる。

「報告します。《フロルヘイム湿原》にて遺跡を発見、強力な呪詛存在――呪詛の王、ヴェルト=アナマス級の敵を一時的に封印しました」
 卓郎の声は落ち着いていたが、その場の空気がピンと張り詰める。

「呪詛の……王……? 待って待って、調査任務よね!? 高魔力反応の確認ってだけのはずでしょ!? なんでそんな魔物が出てくるのよ!」

「なんか……遺跡をちょっと調べたら出てきた」
 沙耶が苦笑まじりに手を振る。
「ドドドーって感じで現れて、ググーッて襲ってきそうだったから、ピカピカババーンって卓郎が封印した! ……みたいな?」

「……もう少し真面目に説明してくれる?」

「ごめーん、でもだいたい合ってるよ?」

「説明が雑すぎるよ沙耶」
 有紗が小声でツッコみながらも、うなずいて補足する。
「でも、ほんとうです。魔方陣の中からはい出そうとしてきた黒い魔物を、卓郎のサンクチュアリで押し返して、一時的にですが消滅させました。……完全封印には至っていません」

「魔力量が尋常じゃなかった。たぶん、ただの魔物じゃない」
 明が腕を組んで言う。
「下手すりゃ、『呪詛の王』ヴェルト=アナマス以上にヤベーやつだったかもしれないな」

「ほんとに、死ぬかと思いましたよ」
 純子はやや疲れた様子で、背中の矢筒をゆっくり外した。

「……あなたたち、Aランクでしょ。それが死ぬかと思ったってとんでもないことね……」
 礼子が頭を抱える。

「任務のスケールが勝手に膨らむのは、もう慣れました」
 卓郎が肩をすくめると、後ろの仲間たちもどっと苦笑した。

「とにかく、しばらくは俺の封印が効いている状態です。でも、完全な封印が、できてるわけではないので、できるだけ早急に、教会に連絡して聖女様に完全封印をしていただいた方が良いと思います。漏れ出る瘴気で邪魔な魔物が増えていきますから遅くなるだけ大変になります。迅速な対応をお願いします」
 一気にそう言って、卓郎は一息つく。

 礼子はそれを見つめ、数秒の沈黙の後――静かに息を吐いた。

  「……わかった。すぐにギルド長に報告して、教会と王都の対応を要請するわ。こっちも全力で動くから、あなたたちは少し休んで」

「ありがとうございます」
 俺たちは踵を返しギルドハウスを後にした。

 ギルドを出た俺たちは、そのまま街の西側にある馴染みの食堂《グランの鍋亭》に足を運んだ。戦闘の緊張感も、報告のピリついた空気も、今はひとまずどこかに置いている。

「ほらほらーっ、今日は奮発しちゃうよっ。鍋! 全部盛り!」
 沙耶が勢いよくメニューを指さして宣言する。

「さっきの戦いのあとで、それ食べきれる体力あるの?」
 有紗が苦笑しながらも、メニューに目を通している。

「食べるさ! 仕事のあとの鍋は特別って相場が決まってるんだから!」
 沙耶は胸を張って言う。

「……そんな相場聞いたことないけど」
 純子が呆れたように眉をひそめたが、口元は緩んでいた。
「でもまあ、今日は私も、がっつり食べていいと思うわ。矢、十数本もなくしちゃったし」

「明、肉は?」
 俺が隣の明に声をかけると、彼は腕を組んだままうなずいた。

「牛、豚、鶏――全部だ。炎の戦士に節制は不要」
「はいはい、じゃあ全部入れてもらおうか」
 俺が店員に頼むと、テーブルの周りに「おーっ」と小さな歓声が上がった。

「そういえばさ」
 沙耶がテーブルに肘をついて話題を切り出す。
「卓郎のサンクチュアリって、あんなに力強かったっけ? 前はもっとこう……快感って感じだった気がする」

「たぶん、遺跡の魔力と反応しちゃったんじゃないかな」
 有紗が推測するように言う。
「それか、卓郎くん自身の魔力コントロールが、前より上手くなってるとか」

「山籠もりの成果かな……」
 俺は少し考えて、言葉を選んだ。
「魔術師ギルドで、何が必要か? とか、訓練の仕方とか……を教わったから」

 その一言に、みんなが一瞬だけ黙る。

「……うん。やっぱり、それで魔法が強力になってたんだね。魔術師ギルドいってくれてよかったよ。おかげで助かったし」
 純子が静かに言った。
「少なくともあいつが完全に目覚めてたら、今ここにいなかったかも」

「うぇ~……こわいこと言わないでよぉ」
 沙耶が肩をすくめると、有紗が小さく笑った。
「でも、今日もみんな無事で良かったわ」

 その穏やかな一言に、テーブルの雰囲気がやわらかくなる。

 しばらくして鍋が運ばれてくると、湯気の中で具材がぐつぐつと音を立て始めた。

「……さて、じゃあ」
 明が静かに箸を手に取りながら、いつもの決まり文句を言う。

「今日も生き延びたことに、乾杯」
 五人の箸が、軽く湯気の上でぶつかり合った。

「「「乾杯!」」」

「うわっ、これ美味しすぎない!? ちょっと明! お肉取りすぎー!」
 沙耶が叫ぶように言って、鍋の中をのぞきこむ。

「戦った者に、肉の恩恵は当然の権利」
 明は真顔で言いながら、器に肉を山盛りよそっている。

「いやいや、全員戦ったし!? ていうか私が最初に矢で牽制したし!? これ“沙耶分”あるから! 返して!」
「“沙耶分”ってなんだよ……」
 卓郎が苦笑すると、有紗と純子も吹き出す。

「ほら、沙耶。こっちにも肉あるから」
 有紗がそっと自分の器から数切れわけて渡す。
「ありがと有紗~……やっぱりお姉ちゃんは最高だよぉ」
 沙耶は有紗の肩にもたれかかりながら感謝の涙(演技)を流す。

「はあ……落ち着いて食べてよ、もう」
 純子が呆れたように言いながらも、鍋に白菜とキノコを追加している。
「あとで食材追加するなら、今のうちに言ってね。わたし、肉は最後に取っておきたい派だから」

「なるほど、俺とは反対だな」
 明が真剣にうなずく。
「……いつも、けんかするわけだな」
 卓郎がツッコミを入れる。

 笑い声が絶えないテーブルの上に、湯気がふわりと立ちこめる。空気は穏やかで、心地いい疲労感が漂っていた。

 ふと、話題が切れたところで、卓郎が箸を置いて言う。

「それで……次の仕事のことなんだけど」
 全員がちらりと卓郎を見る。

「教会とギルドに今回の封印の件は任せて、俺たちはダンジョン攻略に挑戦したいんだ」

「ダンジョンかー?」
 有紗が確認するように言う。

「……じゃあ、ダンジョンの情報礼子さんに聞いとくか?」
 明が提案する。
「それまでに装備とポーションの補充しとく。あと、鍛冶師のグレンに剣の点検出すわ。王都まで転移魔法で連れてってくれ。卓郎」

「わかった」

「私たちは矢と薬剤ね」
 純子がうなずくと、有紗と沙耶も声をそろえる。

「矢と薬剤は卓郎に『お取り寄せ』してもらえばいいわよね」

「はいはい、承りますよ」
 卓郎が苦笑して答えたあと、ぐつぐつ煮えた鍋から具材をすくい上げた。

「とりあえず、今日は……いっぱい食べて、ゆっくり休もう」

「賛成ー!」
 明が両手をあげて、またも肉を奪いに手を伸ばす。

「……私の温めてた肉取ったら許さないからね」
 純子が本気の目で言うと、明は「わーごめんなさーいっ」と笑いながら逃げだした。


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