ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

文字の大きさ
177 / 265

176

しおりを挟む

「……まるで、音楽だ」
 明が呟く。

 オルディアの動きは、戦闘というより演奏に近い。斬撃のタイミング、受け流し、反撃、そのすべてが完璧な殺人の旋律を描いている。

 そして次の瞬間――

「強制共鳴:ディソナンス・リプライズ」

 オルディアの胸部の核が赤く光り、空間全体が爆ぜるように揺れる。
 音が、全身に突き刺さった。鼓膜じゃない。脳だ。思考がノイズに支配される。

「うっ……! 動けない……!」
 仲間たちが硬直する。次に来るのは、止まった世界で放たれる正確すぎる殺意。

「……〈完全見切り〉、使う……今しかない!!」

 脳内のノイズがスッと消えた。
 オルディアの剣が音を裂きながら迫る――だが、俺にはそれが完全に視えていた。

「――ハアアアアアアッ!!」

 回避。回避。受け流し。カウンター。

 斬撃が火花を散らす。まるで自分がその楽譜に介入する共演者になったかのような錯覚。

 回避、カウンター、斬撃、また斬撃。その一撃ごとが、完璧にリズムの中に組み込まれていく。

 そして――

「これで、どうだああああああッ!! 〈セラフレイム〉!!」

 閃光。

 オルディアが砕け、動きが止まる。
 楽器が弦を失ったように、その身体は静かに崩れていった。

 息を切らせながら、俺は振り返った。
 仲間たちが、俺を見ていた。驚いた顔と、ほんの少しの――誇らしさを宿して。

「ナイス、卓郎……完全に合わせてたな」

 明のその一言に、俺は小さく笑った。


 オルディアの残骸が音もなく崩れ落ち、空間が静寂に包まれた。

 その中心に、ゆらりと影が現れる。

 白銀の球体に近い無機質なボディ。顔のない仮面。腕は指がなく、先端が光る粒子にほどけていた。
 その存在は、まるで情報の塊だった。

 ――【第二記録体】〈解析使徒フェノメナ〉。

「ようこそ、境界未明区へ」
 無機質な声が、意識に直接流れ込んでくる。言葉じゃない。思考の侵食。

「貴様……どこから話しかけて……」
 明が剣を構えるが、フェノメナは一歩も動かない。ただ、空間に浮かぶ幾何学図形を構築していく。

「我は過去すべての文明から構成された認識の総体。問いましょう。あなた方の存在の形式とは?」

 ――これは、戦闘じゃない。対話を装った解析だ。

 フェノメナは戦うことで相手の情報を取り込み、それをもとに戦術を自動構築してくる。
 相手の存在意義そのものを削る、最悪の敵。

「来るぞ!」
 俺の叫びと同時に、空間が折れた。

 地平線が消える。床も天井も左右もなく、視界が情報の網で満たされる。

「空間が裏返るような感覚。視界がノイズに満たされ、卓郎たちは瞬時に散らされた。

「精神干渉……!」

 俺の瞳が鋭くなる。だが、動じない。

「――〈完全見切り〉〈ブリンクステップ〉!」

 スキルを即座に発動。この干渉空間を無効化できるのは、たぶん俺だけ。

 空間が白く割れ、干渉系の解析空間から俺だけ抜け出す。フェノメナの視線が、卓郎にのみ集中した。

「観測不能。解析対象、例外措置。単独戦闘モードに移行」

 浮かび上がる演算式が空間を変化させる。現実そのものが歪み、戦場が複数の座標に分割される。

 卓郎は剣を抜くと、静かに構えた。

「全部――見える」

 〈フェノメナ〉の空間魔法――
 重力の反転、距離の拡張、絶対位置の崩壊。
 だが、卓郎の目はすでに未来を捉えていた。

「〈完全見切り〉!」
 フェノメナの演算ビームを、卓郎は半歩でかわす。空間ごと刈るレーザーを、斜め上のスライドですり抜ける。

「〈鋼壁斬〉――!」

 踏み込み。時空が圧縮される直前に一閃。
 刃がフェノメナの防壁を破り、鋼の装甲を食い破る。

「防御演算失敗。再構築フェイズ開始」

 装甲が再生を始める――が、卓郎は一歩も引かない。

「無駄だよ、その処理速度じゃ俺には追いつけない!」
 瞬時に〈ヒール〉で自己回復し、連撃へと繋げる。

 フェノメナが最大出力の空間制御を放つ。

「演算コード:絶対封鎖。空間を畳む――」

「なら、その前に終わらせる!」

 地を蹴る。
「〈影走りかげばしり(一瞬で敵の背後に回り込んで斬撃を与える。回避と攻撃を兼ねたスピード技)〉!!」

「目視不可能」
「座標跳躍」
 フェノメナの演算が追いつかない。

 空間が追いつく前に、背後に回り込み、連撃を叩き込む。
 動きが止まらない。まるで一人で戦場全体を制圧しているようだった。

 俺の動きが、過去に覚えたスキルを次々とつなぎ合わせ、絶え間ない連鎖となる。

 〈完全見切り〉で視界を確保し、〈鋼壁斬〉で装甲を裂き、
 〈ブリンクステップ〉瞬間移動で体勢を保ち、剣戟はまるで神速の詠唱のように、次々と流れる。

 ――そして最後に。

「終われえええええッ!!」

 個人スキルの極限融合。

 〈鋼壁斬〉! 〈セラフレイム〉! 〈ブリンクステップ〉〈斬光断〉! 〈断空輪〉! 〈ブリンクステップ〉! 〈鋼壁斬〉! 〈終天の一閃〉!

 卓郎の剣が六連撃を放ち、そのすべてが空間を超えて命中する。

 フェノメナの装甲が砕け、演算中枢が断裂し――無機の瞳が微かに震えた。

「……想定外の能力進化。損傷……」

 その声を最後に、〈解析使徒フェノメナ〉の機体が崩れ、光の塵となって消え去る。

 静寂の中、卓郎は剣を肩に担いで振り返る。

 空間が実体化し、俺の後方に仲間たちが戻ってくる。
 ミリア、明、純子、有紗、沙耶。全員が精神干渉から抜け出していた。

「次で最後か……」

 空を裂くような咆哮が轟く。

 俺たちは息を切らしながら、次の気配に目を向けた。

 ――黒い翼。焼け爛れた空間。咆哮。

 第三記録体、〈大火翼獣ラグノス〉。

 その姿はまるで、文明を滅ぼす意思そのものだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...