ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 暁の光が王都の屋根を照らし始めたころ、調査団の第一陣は城壁南門に集合していた。
 騎士、神官、記録係、魔術師、運搬用の魔獣を従えた荷馬車――総勢およそ三十名。
 その中に、俺と美里愛がふくまれている。

「……緊張してる?」
 隣で声をかけると、美里愛は小さく首を振った。

「少し。でも、今は……怖いより、使命を果たしたい気持ちのほうが強いです」
 朝焼けの中、彼女の黒髪が光を受けて柔らかく揺れる。

 そして、後ろから軽い足音が響く。
 振り返るまでもなく、誰かが口にする。

「来たな……」

 朝の光に照らされて、城壁門の前に現れたのは、五人の精鋭たち。
 白銀と青を基調とした軽装鎧に、女神アリアの紋章をあしらったマント。
 先頭に立つのは、黒髪を後ろで軽く束ねた青年――勇者・仁だ。

「やあ、久しぶりだね。卓郎くん」
 仁は変わらぬ落ち着いた声で挨拶を寄越す。
 俺も美里愛も、自然と背筋が伸びていた。

「仁さん……勇者パーティがこのミッションに参加するって知りませんでした。また一緒に戦えるなんて、光栄です」

「俺たちもだよ。君が第一陣に入ると聞いて、安心したくらいだ」
 仁の後ろに並ぶ、勇者パーティの面々――
 魔導士リディアは、蒼環の書を抱えたまま無言で軽く会釈し、
 バルドは「元気そうで何よりだ」と豪快に笑い、
 神官セリアは穏やかに微笑み、そして斥候のキルシュはニヤリと口角を上げる。

 あの戦い――〈呪詛の谷〉での死線をくぐり抜けた者同士。
 言葉を交わすより先に、互いの中にある信頼と記憶が、空気をなごませる。

「今回は王国の要請じゃないんだ。俺たちは冒険者として、調査依頼を受けた。……まあ、《聖印庁》の依頼だったってのは事実だけどね」
 仁の言葉に、周囲の騎士たちが少しざわついた。

 だが、それを正面から受け止めるように、俺はうなずく。
「それは、金のための仕事ってことですか?」

「そうじゃない。僕らは〈封印守護者〉の称号を授かってるわけだからね」

「僕も、〈聖光の戦士〉として全力を尽くします」

「ふふ、頼もしいですね」
 セリアが微笑み、美里愛も軽く頷いた。
「――もう、逃げるわけにはいきませんから」

「よし。じゃあ合流は済んだな」
 バルドが大斧を肩に担ぎながら、荷車のひとつを指差す。

「準備も完了だ。さっさと出発しようぜ。目的地は……美里愛さんの故郷、〈封印の地・ミオレス〉だろ?」
 バルドの言葉に、その場の空気が一瞬だけ張りつめた。

「えっ、ミオレス……って、故郷?」
 キルシュが眉をひそめて、美里愛の顔をのぞき込む。
「マジかよ。聞いてなかったぞ、そんな重要情報」

「……あまり、話してなかったので」
 美里愛は目を伏せ、小さくつぶやいた。

「すまない、美里愛さん。今回の行き先は、《聖印庁》の記録に基づいて選ばれた。君の出身地であることは……僕たちも、つい最近知ったばかりなんだ」
 仁が静かに口を開く。

「ううん、仁さん。謝らないで。……私も、知らなかったの。あの場所が封印地だったなんて」
 美里愛は顔を上げ、まっすぐ前を見る。
「でも、行かなくちゃって思ったの。だから、ここにいるんです」

「へえ……カッコいいじゃん」
 キルシュが口笛を吹いて肩をすくめる。
「ま、俺は行けと言われりゃ行くだけだけどね」

「舐めてると足元すくわれるよ、キルシュ」
 リディアが低い声で釘を刺す。目は本から離さないまま。
「封印って言葉がついてる時点で、何かしらの理由があるはずよ。油断しないこと」

「へいへい、魔女様の言うことは聞きますよっと」
 キルシュは肩をすぼめたが、どこか楽しそうだ。

「……封印の地って、やっぱり魔物がいるんですか?」
 俺が尋ねると、仁は一拍置いて答えた。

「正確には、魔物がいるとは限らない。分かっているのは、何かを封じている場所だというだけさ。聖印庁の記録には、瘴気反応が断続的に観測されている、とあった」

「つまり、何かがいる……?」

「そう。封印が緩んでいる可能性があるから、何かがいるんだろうね。危険だから僕たちに指名依頼が回ってきたんだろう」

「……全く面倒な仕事だな」
 バルドがため息まじりに言う。
「だが、ま、悪くない。どうせ退屈してたしな」

「よし、なら改めて確認だ」
 仁が皆を見回す。声に緊張感が宿る。

「目的地は〈封印の地・ミオレス〉。調査内容は、封印状態の確認と、瘴気源の特定。各班、持ち場を確認しつつ行動を――」

「ちょっと待った」
 セリアが手を挙げて、ふわりと笑った。
「その前に……朝の祈り、まだですよね?」

「……あ」
 美里愛がはっとする。

 そして、自然と輪ができた。
 セリアが小さく祝詞を唱え、全員が静かに目を閉じる。

 光の女神アリアよ――我らの旅路を見守りたまえ。
 迷いし魂に、導きの灯を。
 たとえ道の果てに闇が待とうとも、我らは――

「進みます」
 美里愛が、誰より先に言った。

 それに呼応するように、俺たちは顔を上げた。

「よし、それじゃあ――出発だ」
 仁の号令とともに、三十人の調査団が、重い城門をくぐって動き出す。

 朝の光が、その背中を照らしていた。

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