ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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サイドストーリー  ロメオ・ヴァイン《フォーカス》と出会う

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 ああ、これだから現場はやめられない!

 ギルド裏手の乗り場で待つ胸の高鳴りは、もはや研究発表前夜のそれに等しい。
 私の名はロメオ・ヴァイン。歴史研究家、遺跡学者、そして生粋の観察マニア。
 今日ついに、噂の若手パーティ《フォーカス》に同行できる日が来たのだ!

 彼らの戦闘記録を読み込む限り、判断力、連携、構成、いずれも初級者の域を越えている。
 特にリーダー格の少年――卓郎くん。彼はいい……戦術眼と自己犠牲の香りがする。いい。非常にいい。

「おおっ! 君たちが話題のパーティ『フォーカス』の皆さんだね! やあやあ、ロメオ・ヴァインと申します!」

 自分でもテンションが高すぎるとは思ったが、仕方がない。私の学問は“現場で燃える”タイプなのだ。
 とりあえず全員と握手。……明くん、思ったより筋力がある。鍛えてるな。これも記録。

「よろしくお願いします! 歴史研究家として二十年、遺跡調査は百箇所を超えました! 今回のベル=カランは、特に興味深い構造を――」

「長くなりそうだから、移動しながらでいい?」と純子という少女に遮られる。

「おお、失敬失敬! さっそく乗りましょう! さあさあ、こちらにどうぞ!」

 馬車に乗り込むや否や、私はいつもの準備に取りかかる。
 筆記具よし、紙束よし、携帯急須と茶器よし。ジャスミンブレンドを湯にくぐらせ、整える。

「ちょっと、移動中にお茶ってどういうこと?」とまた純子という少女にが眉をひそめられるも、

「冒険者にこそ、心の癒しが必要だと思いましてね! どうぞ、これは特別なジャスミンブレンドです!」と彼女の意見をスルーする。

 これは戦場でこそ必要な癒しだ。かつての英雄たちだって茶を嗜んだという記録がある。
 彼らは訝しんでいたが、
「いただきますっ!」と沙耶くんはノリノリで湯飲みを受け取ってくれた。……沙耶くん、素直ないい子だ。

 純子くんは「こんなの飲んでる場合じゃないでしょ」とそっぽを向いたが、結局こっそり飲んでいるじゃないか。この子はツンデレか? 出れたらさぞかわいいことだろうね。

 さて、出発から十五分。風が変わった。何か来る。

 ……やはり!

 前方に現れたハウルビーストの影。その牙、筋肉の張り。標準的な個体だが、動きはやや俊敏。

「うわっ、いきなりかよ!」明くんが腰を浮かせ、

「皆、戦闘準備!」と純子くんの指令に有紗くんが即座に弓を構えた。素早い。

 そして、馬車が止まると、間髪入れずに飛び出すメンバーたち。

 戦闘開始だ!

「すばらしい! 自然発生的なエンカウントだ! 記録記録……!」

 皆が馬車から飛び出す中、私は馬車の上で記録態勢に入る。
 すばらしい! これぞ生の連携戦術! 生きた資料! これは文字では味わえない現象の数々!

「ちょっ、ロメオ! 隠れててってば!」純子くんが怒鳴るも、私は手を振り笑ってごまかす。

「心配無用! こう見えて、すばやく物陰に隠れるスキルは一級品です!」

「じゃあ最初から隠れてて!」と言いながら沙耶くんがハウルビーストに突っ込む。

 軽い混乱の中、フォーカスのメンバー達は魔物に立ち向かっている――うーん、エクセレント!

「三体確認。ハウルビースト、突撃してくるわよ!」

 有紗くんの声と同時に、狼型の魔物たちが唸りをあげて駆けてくる。

「先に仕掛ける!」

 明くんが飛び出し、ミスリルソードを振るうと、刀身が赤く燃え上がった。
 ワーオ! 凄いね明くん。

「フレイムバスター!」

 前衛のハウルビーストに一閃。火花が走り、魔物が悲鳴をあげて後退する。

「沙耶、右のやつ!」

「まっかせてっ!」

 弓を構えた沙耶くんが、ぴょんと馬車の屋根に飛び乗り、矢を番え、ぴしゅんと放つと、見事に魔物の脚を射抜いた。

 卓郎くんも剣を構えて前に出る。迫ってきた一体に対し――

「遅いな、余裕だね!」とのたまった。流石、私が目を付けた卓郎くん。

 魔物の爪が迫るが、卓郎くんは一瞬で後ろへと下がって、そのまま、渾身の一撃で、ハウルビーストの首筋に剣を振り下ろした。即死だ。ほんとに余裕だわ。

「もう一体は任せて!」

 有紗くんと純子くんが左右から挟み込み、連携した二本の矢が魔物の喉元に突き刺さる。全てのハウルビーストが、瞬く間に地に伏した。

 勝利。

「いやあ~、皆さんすばらしい連携でした!}

 わずか数分で終結する実戦。それに興奮しない者がいるだろうか? いや、いない(反語)。

「ちょっと! このあたりに血飛沫の角度が……あっ、サンプル取っていいですか!?」

 これは必要な行為だ。将来、魔物解剖学に革命をもたらす可能性がある。
 ついでに、この毛並みは保存しておこう。魔物進化史の検証に使える。

 ……しかし、彼らの視線が少々冷たい。なぜだ。
 学者として正しい行動をしているのに。

 その後の道中も私の冒険は続く。

 古木の樹皮に刻まれた文様。あれは間違いなく先住民の象形記号!
 見逃す手はない! 記録、記録!

 ……川で滑ってしまったのは、まあ、うっかりというやつだが。

 (乾かす技術に関しても、私は一章分の記録を持っている。燻す角度が重要なのだ)

 純子くんの怒声は仕方ない。だがこの情熱、誰かに伝えねばならぬのだ。

 そして、ついに辿り着いた――ベル=カラン遺跡。

 地中へと続く苔むした階段。あの風の感触。魔力の残滓。これぞ未開封の歴史宝箱!

「ついに来ましたね……ベル=カラン。伝説によれば、ここには『語る石版』が眠っているはずです!」

 そう、これはもうただの調査じゃない。歴史に手を触れる瞬間なのだ。

 私の胸は高鳴る。目の前の少年たちは、私の手の届かぬ場所へ向かう新時代の担い手だ。

 そして私はそれを、文字として、記録として、後の時代に残す役目を持つ者。

 だから、私は書き続けよう。
 いつか、語り継がれるだろうこのパーティ《フォーカス》の物語を。

 ――あの時、彼らと出会えた奇跡とともに。
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