205 / 265
201
しおりを挟む森に分け入った俺は、『魔力感知』と『気配察知』の魔法を発動する。『魔力感知』は周囲の魔力を感知して魔獣の所在を認識する魔法であり、『気配察知』より広範囲で魔力を持つ生き物の所在を認識できる。『気配察知』は『魔力感知』より狭い範囲だが、動くものを感じ取る魔法である。
数百メートル先にそれらしい魔力の影を発見、それ以外にも認識範囲には複数の魔力の影は感じているが近くから潰していけば、間違いない。おそらく、縄張りというものがあるだろうから、その影を狩っておけば十分だろう。
「あっちか……」
俺は魔力の影を目指して森の中を進み始めた。
「あそこにいるな。アースバインド」
アースバインドは、地面から泥の手を伸ばして敵の足を拘束する魔法だ。魔力の影が泥の手に捕まっているはずだ。
近づいてみると体調2メートルほどの猪型魔獣が拘束されていた。
「ロックランス!」
地面から尖った岩の槍が突き上がり、喉元から貫く。一撃で猪型魔獣は、絶命した。
「百点カード!」
現れたカードの『商業ギルド』の枠をタップして続けて『買い取り』の枠をタップし猪型魔獣を現れた次元収納口を持っていき収納する。
画面の所持金表示に20万ゴルドが追加され587万5200ゴルドに変わった。
「また命を奪っちゃったな。これも弱肉強食ってことで成仏してもらうしかないか……」
俺は、魔獣が元居たところに手を合わせて冥福を祈った。しばらく祈ったのち、踵を返して畑を目指す。畑に戻ったら水魔法でキャベツに雨をかけてやろう。
畑に戻ると誰か俺の畑を眺めている男がいる。黒っぽい外套に、つばの広い帽子。農業に関係ありそうには全く見えない。俺は警戒しつつ近づいて話しかける。
「何か、ごようですか?」
男は顔を上げ、落ち着いた口調で言った。
「こちらに〈聖光の戦士〉の称号を持つ卓郎さんという方はいらっしゃりませんか?」
思わず一瞬だけ間を置いてしまう。俺の、あまり知られたくない肩書きだった。
「卓郎は僕です。その称号もあってます」
男はうなずき、懐から封書を取り出した。白地に金の封蝋――教会の正式文書だ。
「教会からこのお手紙を預かっております。どうか教会にご協力お願いします」
その言葉を聞いて、俺の脳裏に嫌な予感が走った。これは厄介な要件の呼び出しだろうなと。
俺は手紙を受け取りその場で目を通す。
文面を目で追うたび、過去の記憶がちらついてくる。神殿、封印、血の匂い。
あの戦いから、もう何年経ったっけか。
「あなたは教会の関係者ですか。お返事はあなたに預けてよろしいので?」
「承ることは、やぶさかではございません」
「では招集に応じますとお伝えください。集合日時に遅れないようにお伺いします」
「はい。そうお伝えしておきます」
男はそういうと会釈をして帰っていった。
「さて、まず畑に水を撒こうかな。その後しばらくの間、畑は諭吉さんに頼んでみよう」
手紙にはこう書かれていた。
――“神聖フェルミナ王国の聖都・教会本部の大神殿へ、七日以内にお越しください。封印に関わる戦力として、あなたに大きな期待を寄せています。”――
「聖女様や、勇者様たちの補強戦力として期待されてるのかなあ? 引退した冒険者の俺をここまで呼びに来るなんて、かなりやばい状況かもしれないな。急いで行ってやった方が良さそうかな」
畑に水をまきながら、卓郎は独り言ちた。
水をまき終わると諭吉さんのところを再び訪れる。
「諭吉さーん。ちょっとお願いがあるんですが?」
軒先から声をかけると、中からゆっくりと老農夫が顔を出した。
麦わら帽子を外しながら、俺の姿に目を細める。
「ああ、卓郎くんかい。魔獣はてごわいかね?」
「いえ、魔獣は狩ったんですけど、……ちょっと、教会から呼び出しがかかりまして」
「教会? そりゃまた、そりゃ穏やかじゃないね」
俺は苦笑いで返し、事情を簡単に話した。
「昔、封印の手伝いしたことがあって、またということらしんですが、しばらくここを離れることになりそうなんで畑の世話をお願いしたく……」
「どのくらいかかるんだい?」
「さー、まったく見当がつかないんです。たぶん1か月はかからないと思いますが、命がなくなったら帰ってこれませんし。その時は、畑は諭吉さんの者にしてください」
そう言うと、諭吉さんは手にした帽子を軽く握りしめ、しばらく何も言わなかった。
やがて、ゆっくりと口を開く。
「けっこう危ないんだね。封印ってのは」
「……まあ、冒険者の仕事は、だいたい危ないですよ」
言ってから、自分の言葉がどこか虚しく響いた。
「そうだろうけど、そこは安全マージンってのをとるとか、自分の実力に会った仕事を選ぶとか……あるだろ、戦争じゃあるまいし、死にに行くわけじゃないんだから」
「そうなんですけど……」
俺は視線を畑に戻した。
この静かな場所を離れ、向かうのは、瘴気漂う“封印”の現場。
それは、かつての戦いの続きのようなものだ。
そして、たぶん――俺が戻れる保証は、どこにもない。
俺は、ある意味戦争のようなものかもしれないなと暗くなった。
0
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる