ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 荘厳な鐘の音が、深く低く響く中、俺は、白亜の回廊を大聖堂の方に歩いて行った。
 まるで天界に届くかのように高い天井から降り注いだ光が、ステンドグラスを通じて七色の紋様となって床を飾っている。

 その光の中を歩いて行くと、前方に金と白を基調とした祭服を纏った高位神官が立っていた。彼は俺に気付くと顔を輝かせて歩み寄ってきた。

「『聖光の戦士』の卓郎様でございますか?」

「はい。私が卓郎です」

「教会の求めに応じていただき感謝いたします。こんなに早くおいでいただき、本当にありがたい。聖女様を助けていただきたいのです」
 神官は俺の手を取って見つめてきた。

「俺のできることなら、力を尽くしますよ。詳細を教えてください」

 神官はうなずき、静かに俺の手を放すと、深い礼をひとつ捧げた。
 その所作には、ただの形式を超えた、切実な願いがにじんでいた。

「では、奥の《神託の間》へ。聖女様が、すでにお待ちです」

 案内されるまま、俺は回廊を抜けて大理石の階段を上る。
 その先にある大扉が、しんと静まり返った空気の中で、ゆっくりと開かれていった。

 そこは、まるで時間が止まったかのような空間だった。

 高くそびえる柱の間に、魔法文字が浮かぶ水鏡が並んでいる。中央には、透き通るような白い衣を纏った少女――いや、少女のように見える若き聖女・由里(20歳)が立っていた。

 編み込まれた淡いプラチナブロンドに、青白く輝く光輪が差し込んでいる。
 その姿は、神々しいというよりも――あまりに儚く、壊れそうに見えた。

「卓郎さん……来てくださったのですね」

 由里の声は、澄んでいながらも、どこか震えていた。

「久しぶりですね、聖女様。……何が起きてるんですか? 手紙には詳しく書かれてなかった」

 俺が歩み寄ると、彼女の傍に立っていた二人の影が俺をじっと見つめていた。

 一人は、背筋を伸ばした青年――ストレートの黒髪を後ろで軽く束ね、気品ある顔立ちの青年、勇者・仁が、静かに一礼する。

「再び共に戦えることを嬉しく思う。……正直、君が来てくれて、本当に心強い」

 そして、もう一人。
 銀色の鎧を纏った騎士が、厳しい表情のまま一歩前に出た。

「覚えているかな? 聖騎士団長・勇人だ。今回の件は、我々の手に余る。――封印が、綻び始めた」

「……やっぱり、そういうことですか」

 俺は、由里の背後にある水鏡の一つを見つめる。
 そこには、脈動する黒い靄が映っていた。幾重にも術式が張られ、封印されているはずの“なにか”が、まるで内側から軋むように波打っていた。

「たぶん、ベリアルという悪魔と契約を結んで闇に落ちた者たちですね……」

 口にした瞬間、仁も勇人も無言で頷いた。

「再封印の準備は進めております。しかし、我々だけでは戦力不足で……」と仁が言う。

「それを完成させるには……俺の『光魔法』が必要ってわけか」

 俺がそう言うと、聖女・由里は小さくうなずき、まっすぐ俺の目を見た。

「卓郎さん。お願いです。もう一度、あなたの力を、世界のために使ってほしいのです」

 彼女の声は、震えてはいたが、確かに覚悟を秘めていた。

 俺は深く息を吸い込んだ。

 平穏な日々は終わった。
 また、闇の只中へと踏み込む時が来たのだ。

「……わかっりました。俺でいいなら、力を貸します。そのつもりで来たんだしね」

 俺の言葉に、由里は胸に手を当て、小さく、しかし確かに安堵の息を漏らした。

「……ありがとうございます」

 水鏡に映っていた黒い靄がぐらりと波打ち、低く呻くような音が空気を震わせた。

 仁が即座に前に出る。
「封印が完全に破られるまで、時間はそう残されていないはずだ」

 由里が表情を曇らせる。
「〈記録結晶〉によれば、これは“第二の封印柱”……すなわち、『悲哭の淵』と呼ばれた災厄の残滓。古の神官たちが命を賭して封じたものです。けれど、その封印は今、破綻の兆しを見せています」

「その封印はどこにあるのか分かっているのですか? 分かっているなら急いでそこに向かいましょう」

 俺の言葉に、由里が一瞬だけ視線を泳がせる。その隣で、仁が魔導書を開いた。古びた装丁が軋み、淡い魔力の光がページから滲み出す。
「それをずっと調べているんだ」

 彼は静かに言い、水鏡の前に立って手をかざす。解析の術式が広がり、水面に淡い模様が浮かび上がった。地図だ。揺らめく魔力の網が、範囲を絞るように南方へと収束していく。

「……ここより南の方だとは分るんだが、おそらく現地では異常事態が起こっているはず。だがまだそういう情報は上がってきていない。……水鏡が感知したのが早かったのだと思いたいね」

 封印が崩れるほどの異常が起きているなら、どこかにその兆しが現れていてもおかしくない。けれど、まだ表面には出ていない。それが逆に不気味だった。

「俺は、一度行ったところなら、瞬間移動の魔法で移動できます。南の海辺の街『姫の宮都市』に行った子とがあるので、そこに飛んで周辺の街のギルドの情報を確認してきましょうか?」

 そう提案すると、仁が頷いた。頼れる仲間の一人として、真剣な眼差しでこちらを見る。

「それは助かる。地域の教会より冒険者ギルドのほうが、そういう異常をつかむのは早いはずだ」

「卓郎さん、お願いします。封印が破られる前に何とかしないと手に負えなくなるかもしれません」
 由里は胸元で手を組み、まるで祈るような仕草で俺を見つめていた。
 俺は一つ息を吐き、頷いた。

「それでは早速調べてきましょう。何か見つけたらすぐにここに戻ってきます。情報をもって帰ってきますからその時は対応をお願いします」

 勇人が、鋭い視線を向けながら言葉を重ねる。
「魔法で毎日往復することが可能なら、情報共有のためにそうしてくれると安心なのだがな」

「それは可能ですよ。ただ、毎日報告のために時間をとるとなると、そのぶん調べる時間が減りますから……」

 現地の情報を得るためには、足を動かさなければならない。数刻で回れる範囲ではないのだ。

「広範囲な捜索が必要になるかもしれないし、見つけ次第戻ってきてもらうので良いんじゃないか」

 仁が落ち着いた口調で言い、魔導書を閉じた。彼の判断には冷静な配慮があった。

「分かりました。数日おきには戻ってきます」

 俺はそう返し、ポータルシフトで『姫の宮都市』に飛んだ。
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