ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

文字の大きさ
208 / 265

204

しおりを挟む

 視界が淡い光に包まれ、空間がわずかに歪む。
 転移魔法による跳躍が終わり、俺は《姫の宮都市》の転移門前に立っていた。

 白い石造りの建物が連なる海辺の街。潮の香りと、南国特有の湿った風が肌をなでる。都市の活気は以前と変わらず、商人の声や波の音が遠くから混ざって聞こえていた。

「さて、ここから調べ始めよう」

 人々の表情に緊張や怯えといった特段変わったところがないところを見ると、この街自体に直接的な脅威は及んでいなさそうだ。周辺の村などの異変を調べるには、冒険者ギルドに出されている依頼を確かめるのが手っ取り早いだろう。

 俺は《姫の宮都市》にある東西南北中央の5つの冒険者ギルドを確かめることにした。一番近くの姫の宮冒険者ギルド北支部に向かう。

 白亜の街並みを抜け、賑わいの絶えない市場通りを南北に横切っていくと、北支部ギルドの建物が見えてきた。

 ギルド北支部は、《姫の宮都市》の中でも比較的新しい造りだ。石造りの正面に、冒険者ギルドの紋章が掲げられている。扉を押して中に入ると、酒と汗と革の混ざった冒険者特有のにおいが鼻をついた。

「冒険者登録ですか? 依頼なら掲示板の方をご覧ください」

 カウンターの奥から、まだ若いが手慣れた様子の受付嬢が声をかけてくる。 
 俺は身分証を提示しつつ、探索の目的を簡潔に伝えた。

「――というわけで、近隣で起きている異常や不穏な動きについて、何か報告や依頼が出ていないか確認したくて」

「Sランク冒険者様! 教会の依頼ですか。なるほど……少しお待ちください。昨日と今日の分の依頼記録を確認します」

 彼女が帳簿をめくり始めたそのとき――

「ちょっとぉ! ふざけんなよ、これ絶対にギルドの調査不足じゃねーか!」

 扉が乱暴に開かれ、泥と血にまみれた三人組の若手冒険者が騒ぎながら入ってきた。装備は軽装だが、無駄に目立つ装飾が多い。見るからに見栄っ張りで実力の伴わないタイプだ。

「アクタ村の依頼だよ、あれ! 急に獣が狂ったみたいに襲ってきてよ! おい! どうなってんだギルドは!」

「お客様、落ち着いてください! 依頼内容は村長から直接の――」

「直接だろうが何だろうが、死ぬとこだったんだぞ!? 危険度の再調査しろよ、クソが!」

 受付嬢が戸惑い、周囲の冒険者たちも面倒ごとは御免といった顔で目をそらす中――俺は、彼らの言葉の中に小さな違和感を覚えた。

「アクタ村……?」

 俺はカウンターに歩み寄り、受付嬢に声を落として訊ねた。

「アクタ村って、この都市からどれくらいの距離ですか?」

「北へ一日、内陸のほうです。……確かに最近、依頼が急に増えていて……ですが内容はどれも“軽い”ものばかりで、危険とは記されていませんでした」

 それなのに、若手とはいえ冒険者たちがこれほど動揺して戻ってきている――つまり、依頼には書かれていない“何か”が現地で起きている可能性が高い。

「おい、そこのにーちゃん。……やけに綺麗な防具してるじゃねえか。冒険者か? そんな顔して、俺たちのこと疑ってんだろ? だったら、代わりに行ってみろよ。俺たちみたいにひでぇ目に遭うぞ」

 一人がこちらに絡んできた。目が血走り、まだ興奮が冷めていない様子だ。だが、その言葉に俺は淡々と返す。

「……そのつもりだ。だが、そうなる前にもう少し何が起きたかを話してもらえると助かる」

 俺はこの男の肩に手を置き手に金貨を一枚握らせる。

「はあ? ……チッ、面倒なやつだな。おっ……金貨……。いいよ、教えてやるよ。あそこ、なんか変だったんだよ。山の獣の目が全部光ってて、まるで見張ってるみたいだった」

 ギルドの空気が一気に変わった。冒険者たちがざわつき、受付嬢の手が止まる。

 獣の異常行動――。

(……アクタ村の近くに、何かある)

「ありがとう、重要な情報だった。あとは俺が確認してこよう。ついでにアクタ村の依頼とやらもかたずけてくるよ」

「ありがとうございます。では手続きをいたします。Sランク冒険者の卓郎様ですね」

「えっ……えっ? Sランク!」

 驚愕する若手冒険者たちに、俺はサムズアップで応えて軽く微笑んだ。先ほどまで荒れていた彼らも、すっかり黙り込んでしまった。

 受付嬢が小さく息を吐く。

「手続きすみました。アクタ村にあらわれる狼型魔獣の群れ討伐依頼です。……お気をつけて」

「分かりました。すぐに向かいます」

 俺はギルドを後にし、アクタ村へと足を向けた。

 ***

 アクタ村は、小高い丘に囲まれた内陸の集落だった。木造の家々が並び、農地が広がるのどかな村だが、今はその空気がやや張りつめていた。家々の扉や窓が固く閉ざされ、子どもたちの姿も見当たらない。村の外れには、簡易な防壁のようなものが作られており、住民が慌てて応急の柵を修理している様子が見える。

 俺が村の中心部に差しかかると、数人の村人がこちらに気づき、やがて年配の男が駆け寄ってきた。

「おお……! もしや、姫の宮ギルドから来てくださった冒険者様か!」

「その通りです。卓郎といいます。あなたが村長ですか?」

「はい、わたしがこの村の村長、ローレンスでございます。遠いところを……いや、本当にありがたい。あなたのような方が来てくださるとは……!」

 村長の顔には安堵の色がにじんでいたが、それと同時に、数日間の緊張と疲労が積もっているのも明らかだった。

「詳しい状況を教えてください。ギルドに報告されていた依頼内容と、実際に起きたことに差があるようなので」

「ええ、確かに……最初は家畜が襲われる程度だったのです。けれど数日前から、群れの動きが異様になりましてな。夜通し吠え、明らかに数も増えておりました。村人が襲われたのは昨日が初めてです」

「狼型の魔獣、とのことでしたね?」

「ええ。どうやら『灰牙(はいが)』と呼ばれる魔獣の群れです。もともとこの地域にも少数生息していましたが、あそこまで凶暴で統率の取れた動きは……」

「分かりました。では、彼らの出没地点を教えてもらえますか」

「はい。村の北、二つの尾根の谷間です。夜になると、必ずそこから吠え声が聞こえるのです」

 村人たちに見送られながら、俺は指定された谷間へと向かった。

 





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...