ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

文字の大きさ
209 / 265

205

しおりを挟む
 
 陽が沈みかけた頃、谷間に到着した俺は気配を殺しながら待機した。

 やがて、木々の間を縫って、音もなく灰色の影が現れる。数は――八体。確かに、狼型魔獣《灰牙》。特別な変異種や魔力の異常は感知されない。魔素の濃度も平常。これは……自然発生の群れだ。

 ……当てが外れたな。まあすぐに見つかるはずもないか。

 俺はいつの間にか八体の狼型魔獣《灰牙》に囲まれていたが別に慌てるようなことではなかった。近づく《灰牙》を何事もないように斬り殺す。

 最後に残った個体が飛びかかってきたが、遅い。子の群れの魔獣は全て倒したので討伐証明の部位を寄ってから百点カードの『買い取り』にうつる。

 俺は魔獣たちを確認したが、異常な兆候は見られなかった。どれも自然界の魔獣。繁殖期と餌不足が重なった結果、村を襲ったのだろう。

 その後、近くの群れを2つ潰し、村の安全を確保する。合計で26匹の《灰牙》を狩ったことになる。

 その足でアクタ村へ戻ると、村人たちが迎えてくれた。

「討伐は完了しました。異常な個体ではありませんでしたが、狼型魔獣の数は多かったですね」

「やっぱりたくさんいましたか! ……本当にありがとうございました、卓郎様!」

 村長が頭を下げ、周囲の村人たちから拍手が湧き起こった。

「三つの群れを退治してきたので、もうこの村は暫く《灰牙》に襲われることはないと思います」
 俺は討伐証明部位の右耳を見せるとその数の多さに村人たちからどよめきが起こった。

「あんなにいたのか!」
「あれだけ狩ったらもういないだろう」
「もう安心だぞ!」
「冒険者様、強ーい」
「冒険者様結婚してー」

 外野から様々な声が聞こえたがそれはスルーして村長に別れを告げる。

「それでは俺はこれで失礼します」

「これから《姫の宮都市》まで帰るのでは日が暮れてしまいます。一晩ここにお泊りください」

「大丈夫です。明るいうちにつけますので」
 瞬間移動で《姫の宮都市》でも、《北野村》でも、一瞬で帰れるのだが、そのことには触れず、村長の誘いは断って村を後にした。

 村から少し離れたところで、俺は再び空を仰ぎ、転移魔法で《姫の宮都市》へと戻った。ギルドで依頼完了の報告を終え10万ゴルドの報酬をうけとると外はもう日が落ちそうになっている。なお、《灰牙》26匹の『買い取り』額は280万ゴルドでカードにプールされていた。

 まずは宿を押さえよう。南部の調査には何日かかるか分からない。ここを拠点に、各ギルドにあたる必要がある。

 以前も使った宿屋《潮風亭》へ向かう。

 宿に荷を下ろしたあと、俺は手早く地図を広げ、南部の主要都市とギルドの位置を確認する。

「《姫の宮都市》の次は西の《トアナ都市》と東の《海谷都市》か。あとは《トアナ都市》のさらに西、山地の《セレト都市》……」

 街道は整備されているが、距離はある。今までに訪れれいない地点が多いため、移動にかかる時間も含めて調査計画を練る必要がある。

 明日は中央支部から回ってみるか……と考えていたら、腹がグウと鳴った。

 俺は情報収集も兼ねて、繁華街に出て晩飯を食うことにした。

 夜の《姫の宮都市》は、昼間とはまた違った顔を見せていた。通りには提灯の明かりが揺れ、どこからか焼き魚や香辛料の匂いが漂ってくる。港町ならではの賑わいだ。音楽と笑い声、酒場の扉が開くたびに溢れる熱気。活気に満ちた夜の市場は、どこか懐かしささえ感じさせた。

 目星をつけていた屋台へ向かい、焼き魚と貝のスープ、それに酒を注文する。料理はすぐに出てきた。港町だけあって、魚の鮮度も焼き加減も見事なものだった。

 うまい――そう思っていた矢先、隣の席で怒鳴り声が上がった。

「ふざけないでよ! 私がいなかったら、今ごろあんたは商会に潰されてたでしょ!」

「うるせぇな……勝手に助けたくせに、恩に着せんな!」

 若い男女が口論していた。女は冒険者風で、軽装の鎧に剣の柄がのぞいている。男は旅商人のような格好。酔っているのか、顔が赤く、言葉に勢いがある。

「借金を肩代わりして、商会に頭下げたのは私よ? あんた、泣きながら頼んできたじゃない……」

「もう終わったことだろ。いちいち蒸し返すな!」

「……わかった。もういい。あなたの問題には口を出さない。あんたがどうなろうと、もう知らない」

 女は唇を噛み、目を伏せたまま席を立とうとした。その拍子に足元の木箱につまずき、体がぐらりと傾く。

 ――思わず立ち上がり、彼女の腕を支える。

「大丈夫か?」

「……あ、すみません。すぐ行きますから……」

 足首が少し腫れているようだ。転びかけたときにひねったのかもしれない。

 それを見ても、男は眉ひとつ動かさず、酒をあおる。

「勝手に怒って、勝手に転んで……知らねえよ」

 胸の奥が冷えたような感覚がした。

 ――腹減り虫は収まっていたが、別の虫が騒ぎ出した。

「おい、お前。少し黙って聞いてりゃ……いい加減にしろ」

「は? なんだあんた、関係ないだろ」

「関係ないさ! でも、一つだけいわせてもらうぜ。――助けてもらったことを『勝手に』って言えるやつは、まともな人間じゃないぞ!」

 男が顔をしかめる。口を開きかけたが、周囲の視線が向いているのに気づき、舌打ちして店を出ていった。

 女はしばらく呆然としていたが、やがて俺に頭を下げた。

「……助けてくれてありがとう。」

「いや、ごめん。勝手に自分の感情でさわぎを大きくしちゃったな」

「私は、リーナ。元はここの貧民区育ちで、細々と冒険者やってる。あんな男に関わったのは……ちょっと、間違いだったかも」

「人を見る目はなかったかもな。でも優しいのは悪くない」

 彼女は少し笑って、でもその目はどこか疲れていた。

 この夜をきっかけに、俺とリーナは何度か顔を合わせることになる。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...