ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 翌朝、朝靄が晴れはじめる頃、俺は宿屋《潮風亭》を出て中央通りへと歩き出した。南国特有の湿気が空気に残っているが、まだ気温は穏やかだ。通りには商人たちが屋台を組み立てており、朝の市場が活気を帯びはじめていた。

 《姫の宮都市》冒険者ギルド中央支部は、市の行政機関の近くにある堂々たる石造りの建物だ。北支部に比べ規模が大きく、内部には受付カウンターのほか、書庫や相談室も併設されている。訪れる冒険者の層も幅広く、見た目からして腕の立ちそうなベテランの姿も目立った。

 俺が入り口をくぐると、ギルド内部の空気がピリッと張り詰めているのがすぐに分かった。

 何かあったな、と直感する。

 カウンターでは数人の冒険者たちが、いつも以上に苛立った表情で言い争っていた。話に耳を傾けると、どうやら依頼の「取り合い」が起きているらしい。

「……だからそれは俺たちのほうが先に申請してたって言ってんだろ! 記録を見ろよ!」

「は? お前らこそ勝手に横取りしようとしたんだろうが!」

 カウンターの奥では、受付嬢が必死に対応していたが、埒があかない様子だった。

 俺は一歩前に出て、受付の女性に声をかけた。

「失礼、教会の依頼で南部の調査で来た者です。何か……揉めてるようですが?」

 彼女は俺の顔を見ると、助け舟が来たと思ったのか、ほっとしたように小さく頷いた。

「……ご来訪ありがとうございます。実は、昨日から近郊村の緊急依頼が立て続けに出ていて、冒険者たちがその内容をめぐって争っていまして」

「緊急依頼? 何か異変でも起きているんですか?」

「いえ、直接的な被害はありません。ただ……依頼主の村人たちが、妙に焦っているといいますか。村の神木が枯れかけているとか、井戸の水が濁ってきたとか……」

 それを聞いた俺は眉をひそめた。直接的な脅威ではないが、どれも自然環境の変化と関わりがありそうな内容だ。

 封印の緩みが、土地そのものにじわりと影響を与えている――そう考えるには、まだ時期尚早か?

 受付嬢が帳簿を開き、地図を指し示す。

「特に依頼が集中しているのは、《セナ村》《ローヴ村》《グリマ村》の三箇所です。いずれもこの都市から半日ほどの距離にあります」

「その村の依頼内容、詳しく確認できますか?」

「はい。ただ……先ほどの騒動のように、見た目は緊急性が低いわりに報酬が高めに設定されているので、腕利きの冒険者たちがこぞって狙っているんです」

 なるほど。それで揉めているのか。依頼の旨味だけを見れば、確かに取り合いになるだろう。

 だが、俺にとっては金ではなく「封印の影響」が見え隠れしているかどうかが重要だ。

「その三つ、教会依頼の南部調査として、順に巡ってみます。報酬はいらないしギルドの正式な依頼として受ける必要はありません。異常があるようなら報告はしますよ。冒険者たちには別途、その依頼を受けさせてください」

「ありがとうございます。では、《セナ村》《ローヴ村》《グリマ村》の地図をお受け取りください」《セナ村》

 俺は地図を受け取り、中央支部を後三つの村の位置関係をチェックした。

「あなたは昨日の……」

 急に後ろから声をかけられ、振り返ると昨日であったリーナがいた。

「あなたも冒険者だったんですね。服装からそうだろうとは思っていましたが」

「また会うなんて、奇遇ですね。リーナさんはこのギルドに所属しているのですか?」

「はい。まだお名前を伺っていませんでしたね」

「卓郎と言います。俺はもともと北の『福佐山都市』の所属ですが、今は教会の指示で動いています」

「すごい! 教会直属? もしや聖騎士様?」

「いえいえ、そんな凄いものではありませんよ。指名依頼のようなものです」

「教会からの指名依頼なんて凄いですね! 尊敬しちゃうな」
 リーナの目にハイライトが輝いている。

「リーナさんは今日は?」

「私はこれです」

 差し出された依頼書は《セナ村》からの緊急依頼だった。

「今日は、割のいい依頼を取れてラッキーです」
 満面の笑顔。

 ……確かCランクの依頼だったはずだから、リーナはDランク以上の冒険者ってことか。

「リーナさんのパーティメンバーは?」

「ちょっと分けあって、今は一人なんです」
 リーナの目のハイライトが消える。聞いてはいけないことを聞いてしまったようだ。ちょっと気まずい。

「そ、それじゃあ、《セナ村》まで一緒に行きませんか? 俺は《セナ村》《ローヴ村》《グリマ村》の三か所の様子を確認に行こうと思ってたところなので」

「《セナ村》の緊急依頼って、教会にもいってるんですか?」

「いえ、教会の依頼は、南部全体の異常調査なんで、このギルドではこの3つの村を見てこようかと思っています。昨日は北支部で《アクタ村》を調べてきたんですよ」

「へ―! そうなんですか。じゃあちょうどいいので一緒に行きましょう。卓郎さんと一緒なら、なんだか安心ですね」

 リーナの目にハイライトが復活する。喜んでもらえたようでほっとする。

「《セナ村》の地図をいただいたんですけど、リーナさんは《セナ村》には、いった事はありますか?」

「通ったことはありますので案内できますよ」
 リーナは心強い連れができて良かったと喜んでいる。

 ――まずは《セナ村》。何も起きていないならそれでいいのだけれど、でも、もし……地中深くに何かが蠢いているのだとしたらそいつを退治しなくてはならない。
 あるいは、封印が緩んできた影響ならすぐに教会に連絡に戻ろう。

 俺はギルドの階段を降りながら、厄介なケースでなければいいなと深く息を吐いた。




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