ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 食後の甘いプリンでひと息ついたあと、俺たちは王都の『魔術師ギルド』へと向かった。

 『魔術師ギルド』は王宮の南側、整然と並ぶ行政機関のひとつで、白亜の塔のような建物だった。魔力を帯びた浮遊灯が敷地の空を漂い、門前には魔法の防壁が展開されている。

「うわあ……ここもまた別格ですね……」

 リーナが建物を見上げ、目をまるくする。

「あれが防壁か。自動式かつ常時展開型……なかなかのものだな」

「……入るだけで緊張してきました。大丈夫ですかね、私……」

「大丈夫だ。適性を診てもらうだけだ。合否じゃない。落ち着いていけ」

「は、はいっ!」

 受付で見習い魔術師風の若い男性に案内され、俺たちは《適性観測室》へと通された。

「はじめまして。適性検査を担当する魔術師のエルシアです。リーナさんですね? こちらへどうぞ」

 エルシアは蒼銀のローブに身を包んだ女性で、切れ長の目が印象的だった。言葉は柔らかいが、視線は鋭くリーナを見定めている。

「リーナさんは、まだ魔法を一度も使ったことがないとのことですね?」

「はいっ。でも……魔法に憧れていて……自分に使える力があるのか、確かめたくて」

「いい心がけです。こちらの『観測結晶』に手を触れて、精神を集中させてください。体に何か感じることがあれば、そのまま教えてくださいね」

 リーナは小さく息を吸い、結晶の上に両手をそっと置いた。部屋に静寂が満ち、結晶の内部がじわりと輝き始める。

「……あ、あったかい……体の奥の方が……なんか、ふわって、なって……」

「ふむ……反応あり。魔力経路は微開通ですが、魔素感応性は高い。素質としては上々です」

 エルシアが結晶を覗き込みながら、頷く。

「リーナさん、魔術師としての訓練を受ければ、十分実戦魔法を習得できるでしょう。特に属性適性……ふむ、風と水、それに微量ですが光属性にも反応が出ていますね」

「ほんとですかっ!? わ、わたし、魔法使えるようになれますか!?」

「可能です。ただし――才能よりも、努力が魔術師には求められます。素質があっても、鍛錬を怠れば開花せずに、ただの夢で終わります」

 エルシアはまっすぐにリーナを見て言った。その真摯な言葉に、リーナも緊張しながらも真剣に頷く。

「努力……します。絶対に、がんばります!」

「では、入門コースから始めるための基礎課程への仮登録を行いましょうか? 本登録には指導者推薦か、初歩魔法の実演が必要ですが、会員の卓郎さんの推薦があれば……」

「俺が推薦人になる」

「ありがとうございます。魔法使いでSランク冒険者の推薦であれば、仮登録は即日許可されます。リーナさん、これから厳しい道になるかもしれません。でも、あなたならきっと乗り越えられる。がんばってくださいね」

「はいっ!」

 観測結晶から手を離したリーナの顔には、確かな自信と希望が浮かんでいた。

「ありがとう、卓郎さん……! 私、ほんとに一歩、踏み出せた気がします!」

「ああ。最初の一歩を越えたな。ここからだ」

 俺は彼女の肩を軽く叩いて微笑んだ。

「では早速ですが、この魔術師用のローブと杖、ベルトとネックレスを身につけてください。これは、あなたのMPと魔法効果と知力のステータスを上げる魔道具です。これを身につけることによって魔法を出しやすくなりますので訓練の時はお貸ししますので、必ずこれを装備して訓練します」

「はい」

「身につけたらこちらにいらしてください」

「はい」

 エルシアに付いて行くと、魔術師ギルドの裏手には、訓練生用の魔法実習場があった。

 広めの石畳の庭に円形の魔法陣が刻まれ、そこかしこに木製の標的や魔力測定用の水晶球が並べられている。ギルドに入門したばかりの訓練生たちは皆、ここで魔力制御の初歩から叩き込まれるのだ。

「サリーナさん。この方は、今、入門してきたリーナさんです。あちらは、付き添いのSランク冒険者・卓郎さんです。こちらが適性検査の結果になります。後はよろしくお願いします」

「はい。分かりました」

 エルシアは資料を手渡すと、俺たちに会釈して去っていった。

「初めまして。リーナさん、卓郎さん。わたしは、中級魔術師のサリーナです。今日はリーナさんの指導をさせていただきます。よろしくお願いします」

「こちらこそ、お願いします」
 
「リーナさん、今日は魔力の流し方だけでいいですよ。焦らず、まず魔力を感じることからはじめましょう」

 指導にあたる中級魔術師のサリーナ教官は、厳しくも熱心な教官で、リーナにも丁寧に基本を教えてくれた。

「はい……魔力……感じる……胸の奥……流す……」

 リーナは深呼吸して目を閉じ、両手を前に出して集中する。しかし――

「……うぅ……ダメです、また指先に流れてきません……」

「慌てないで。魔力は生きているものよ。無理やり動かそうとすれば、反発されるわ。まずはお願いするの。自分の中の力に、静かに語りかけるつもりで」

「はい……」

 その日も、《ウィンド》は出なかった。

 翌日も、またその次の日も同じだった。リーナは毎朝訓練場に通い、教官の指導のもとで魔力制御の練習を繰り返した。

 時には汗だくになって座り込み、額を押さえてうずくまる日もあった。

 その姿を、俺は毎日少し離れた場所から黙って見守っていた。

 ある日、訓練後にベンチでぐったりしているリーナの隣に座った。

「今日は、少し反応があったな。指先が微かに光ってた」

「……はい。でもまだ、風を飛ばせませんでした。やっぱり、私……才能ないのかな」

「最初から魔法が使える奴なんていないさ。俺だって、魔力制御を覚えるのに何週間もかかった。……それに、俺が教官なら、今日のリーナに進歩ありって言うぞ」

「本当、ですか……?」

 俺が、魔力制御を覚えるのに何週間もかかったというのは大嘘である。『百点カード』にスキルポイントで一瞬で身につけたにだ。その後、魔力制御を磨くのにかなりの訓練を積んだのは事実だ。だがそれは言わずもがなである。

「ああ。魔力の流れが滑らかになってきてる。もう一歩だ。焦るな」

「……ありがとうございます。……もうちょっと、がんばってみます」

 そして五日目。

 いつものように構え、目を閉じて集中するリーナ。額には薄く汗が滲んでいる。

「……風よ……わたしの声に……応えて……」

 ふわ、と手のひらに微かな魔力の渦が現れた。今までとは違う、確かな手応え。

「《ウィンド》!」

 フッ!。

 小さな風の塊が標的へ飛び、かすかに木の板を揺らした。

「……出た……?」

「出た……!」

 教官がにっこりと頷いた。リーナの瞳が一気に潤み、口元が震える。

「やった……やった、やったあっ!! 出ましたっ、魔法っ……!」

「よくがんばったわね、リーナ。これであなたも魔術師見習いの仲間入りよ」

「やったぁ……!」

 リーナは振り向き、俺に飛びついてきた。

「卓郎さん、見ました!? ほんとに出たんですっ!」

「……ああ。見たよ。よくやったな、リーナ」

 抱きついたまま、リーナはしばらく離れようとしなかった。

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