十魔王

nionea

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荒野の王

2.

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 頭がぼうっとする中で、明らかに下半身に血が集まっている事に気付き、孝太は困った。
(こんな状態で誰かを呼ぶわけにもいかない。まずい。つーか全然萎える気配がない。もうこれ抜くしかないんじゃねぇかな)
 そろそろと手を伸ばして自分の竿を扱き始める。
「はぁはぁ…はぁ」
 一度やり始めれば、どんどん周囲が気にならなくなっていった。というか、いつものように扱いているのに全然イケない事に意識が集中していったとも言える。
(なんで、めちゃくちゃ気持ち良いのに、全然出ない、くそっ)
 彼は、もう完全に抜く事しか考えられずにいる。死ぬまでオナニーを続ける猿の話を思い出しながらも、ひたすら扱く事しかできないのは、性器そのもの以外に自分の性感帯を知らないからだ。
「っでだよ…」
 オカズを前にマスをかいているいつもより、よほど気持ちが良い。正直、今にもイキそうだ。そう思っているのに、何かが足りていない。前傾姿勢になりながらひたすら上下動を繰り返すが、ぎりぎりに盛り上がっているだけで、終わりがない。
「うあっ!」
 突然自分よりも高い体温の手に握られて、ビクっと体が震えたが、すぐにのしかかるような重さに動きを沿わせてしまう。膝を付いた前傾姿勢から、手も付いた四つん這いの姿勢になり、背中に服を着た人の存在を感じながら、手の動きに声を上げた。
「あっ、やっばい、それいいっ。気持ちぃ」
 竿を扱かれるだけではなく、袋を揉むように撫でられたかと思うと、ぐりぐりと会陰のあたりを刺激された。
 単純に扱く事しか自慰のレパートリーが無い彼にとっては、初めて感じる前立腺への刺激だ。今度こそイク、と思いぎゅっと目を閉じると、かつてない開放感を伴う射精が果たされる。
(あれ…? 今、イった…のに)
 いつもなら訪れる賢者タイムが訪れない。それどころか、彼のペニスはまだ柔く勃ち上がり続けていた。
(なんでだ…でも、もう)
 背後の人物に上体を起こさせられたが、彼はぐったりとその胸に背を預ける。今までの少ない性経験を圧倒的に凌駕した射精感。イキたいのにイケずにいた精神的疲労。ずっと続いている逆上せたような状況。全てが一気に彼の体から力を奪っていた。自分の置かれた状況の安全性も全く解っていないのに、彼は瞼を閉じてなすがまま、されるがままだ。
 彼は、抵抗というか反応はしていないが、自分の身に起きている事はだいたい把握できている。今は抱き上げられて、再び湯船の方に連れられ、寝ながら入るのだろうなと考えていた底の浅い場所に仰向けに寝かせられたところだ。つま先と、一段高い場所に乗せられた頭以外は、先程よりも温度の低いぬるま湯に包まれる。
 すっと頬が撫でられたかと思うと唇に指が触れる。力のあまり入っていない指になぞられ、擽ったさからぎゅっと唇を窄めた。だが、指が口をこじ開けるように中に入ってくる。
「ふぅ」
 口蓋をなぞられ、うっすらと目を開いた。そのぼんやりとした視界に赤い睫毛に縁どられた煌くような金色の目が映る。
(誰だ?)
 答えよりも先に、指の引き抜かれた口に温もりを感じ、舌が侵入してきて始めてキスをされているのだと認識した。
(待て、待て待て、ファーストキスですけどぉ!)
 慌てて逃れようとするが、後頭部をしっかりと手で固定されている。
「ちょっ、待てぃ」
 彼は、何とか相手の肩を押し退けるようにして身を離す事に成功した。
「あんただ…」
 目の前の綺麗な顔を見て、彼は呆然と誰何の言葉を飲み込んだ。鳥の羽のような鮮やかな赤い髪に、滑らかな褐色の肌、はっきり見えても宝石のようなという印象は変わらない金色の目。
(すっごい美人だぁ! なんだこれヤバイ、マジか! …え、ヤバイ)
 あまりの衝撃に彼の語彙力は崩壊しかかったが、すぐにそれに気付いた。目の前のとんでもない美人には、先の少女とは比較にならないほどはっきりとした大きさの、彼と同じものが付いている。
(うん俺より全然立派だねぇタチもソリも大きさまでまぁご立派で………)
「じゃねぇよ!」
 そうと認識してみれば、彫りの深い顔立ちは確かに男性的なものを感じさせた。つまり、目の前の美人は美青年だった。
「おま、俺の初チューをどうしてくれんの? なんなの? 言っとくけど介抱だとか人工呼吸だとか信じねぇからなぁ!」
 感情に任せて目の前の青年の肩をガクガクと前後に揺さぶってみる。残念ながらびくともせず、彼が一人前後に揺れる結果となった。
(男じゃん。もう。どう見ても男じゃん。何これ、俺痴漢にあったって事? いや、意味が分から…あや、よく考えたら脱衣所でオナってたのは俺じゃん! 俺の方がとんだ露出狂だった! やっちまったぁ…)
 自分の行動に思い至り、彼はぴたりと動きを止める。
「えっと…あの…そのですね、公共の場で良くない事をしていたのは俺なんですが、あれはその体調不良というかそのよんどころない事情があって、ですね…けっして人目のある場所でいたすのが趣味とか、そういう性癖を持っているわけではなくてんっ」
 勢いを失ってもごもごし始めていた彼の声は、再び美青年の形の良い唇に塞がれた。
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