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第2章:新生活
4.アンセラ
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姉の代わりにオークラント家を守るために頑張るのだと心に決めた。
だが、自分にできる事など何もなかったのだ。
誰かに頼って、そうして始めて頑張る場を作れるのである。つまりは一人で頑張ると張り切ったところで、何もできはしない。
(ごめんなさいお姉様)
今まで習った事を繰り返す毎日の中で、文字を美しく書く事はできるようになった。だが、言葉はまだあまり知らない。本を開いて探していけば、姉に手紙を書けるのかもしれないが。どうしてもできなかった。
真剣な顔でアンセラの手をとり訴えた姉の願いを叶えられない事が悲しい。
文字が書けないという以上に、姉に手紙を書く事ができなくなったのが不甲斐ない。
自分以外誰もいないオークラント家で、ベッドで後悔ばかりするしかない自分が情けない。
(何もできない)
お金に困っているなら働けば良い。
今までの生活は、困難が目の前にあっても、それを解決するための道も同時に見えていた。
だが、今はどうすれば良いのか、何も解らない。
着ることにも、食べることにも、住むことにも、不足はない。自由にできるお金はないが、その事で困ったりもしていない。ただ、学べずにいるだけだ。だが、その解決法は父に頼む以外になく。頼んだ上で放置されている今、アンセラにはできる事がない。
(お姉様…)
義母は、オリーズから療養よりは観光で有名な歓楽地ヴェリンズへ移るという二ヶ月前の連絡を最後に音信不通。
父は、酔っていなかったのに怒鳴られた日を最後に会話をしていない。
何処へ行ってしまったのか、四日前からシィレンの姿も見えなくなってしまっていた。
(ごめんなさい)
目を覚まして、一日、何も新しくできる事が無いと確認しては眠りに就く。
そんな毎日が、アンセラを追い詰めていた。
働く事なく生きていける何不自由ない生活のはずなのに、何一つアンセラの思い通りになる事などない。
それでも彼女は頑張った。次第に部屋にこもって本を読む事で一日を潰すようになってはいったが、教えられた通り絶えず微笑を浮かべ、毎日平静を装って生活し続けたのだ。
そうして自分でも気付かない内に、心は磨り減っていく。削れていく痛みを感じないようになのか、徐々に体の感覚も鈍くなった。ふとした瞬間に昨日と今日の事が曖昧になり、何かをしていてもずっと既視感がある。なんの変化も、向上もなく、ただ、同じ事を繰り返している感覚だけが募った。
秋は、もう終わろうとしている。
母を失った冬の足音が近付く事にも、もう何も感じない。
「はじめまして」
雪のような白い肌で姉のように美しい銀の髪をした、優しく微笑むその女性が現れるまで、アンセラはぽつんと暗闇に立ち尽くす迷子になったようだった。
だが、自分にできる事など何もなかったのだ。
誰かに頼って、そうして始めて頑張る場を作れるのである。つまりは一人で頑張ると張り切ったところで、何もできはしない。
(ごめんなさいお姉様)
今まで習った事を繰り返す毎日の中で、文字を美しく書く事はできるようになった。だが、言葉はまだあまり知らない。本を開いて探していけば、姉に手紙を書けるのかもしれないが。どうしてもできなかった。
真剣な顔でアンセラの手をとり訴えた姉の願いを叶えられない事が悲しい。
文字が書けないという以上に、姉に手紙を書く事ができなくなったのが不甲斐ない。
自分以外誰もいないオークラント家で、ベッドで後悔ばかりするしかない自分が情けない。
(何もできない)
お金に困っているなら働けば良い。
今までの生活は、困難が目の前にあっても、それを解決するための道も同時に見えていた。
だが、今はどうすれば良いのか、何も解らない。
着ることにも、食べることにも、住むことにも、不足はない。自由にできるお金はないが、その事で困ったりもしていない。ただ、学べずにいるだけだ。だが、その解決法は父に頼む以外になく。頼んだ上で放置されている今、アンセラにはできる事がない。
(お姉様…)
義母は、オリーズから療養よりは観光で有名な歓楽地ヴェリンズへ移るという二ヶ月前の連絡を最後に音信不通。
父は、酔っていなかったのに怒鳴られた日を最後に会話をしていない。
何処へ行ってしまったのか、四日前からシィレンの姿も見えなくなってしまっていた。
(ごめんなさい)
目を覚まして、一日、何も新しくできる事が無いと確認しては眠りに就く。
そんな毎日が、アンセラを追い詰めていた。
働く事なく生きていける何不自由ない生活のはずなのに、何一つアンセラの思い通りになる事などない。
それでも彼女は頑張った。次第に部屋にこもって本を読む事で一日を潰すようになってはいったが、教えられた通り絶えず微笑を浮かべ、毎日平静を装って生活し続けたのだ。
そうして自分でも気付かない内に、心は磨り減っていく。削れていく痛みを感じないようになのか、徐々に体の感覚も鈍くなった。ふとした瞬間に昨日と今日の事が曖昧になり、何かをしていてもずっと既視感がある。なんの変化も、向上もなく、ただ、同じ事を繰り返している感覚だけが募った。
秋は、もう終わろうとしている。
母を失った冬の足音が近付く事にも、もう何も感じない。
「はじめまして」
雪のような白い肌で姉のように美しい銀の髪をした、優しく微笑むその女性が現れるまで、アンセラはぽつんと暗闇に立ち尽くす迷子になったようだった。
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